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「1億総デザイン社会」の未来・前編 ーモデルなき時代に、働き方をハックする

※本記事は、2017年9月に書かれた↓の記事のリライトになります


こんにちは、ランサーズ の曽根(@hsonetty)です。今回は、キャリア編(全5回)も中盤にさしかかり、ずばり「働き方」をテーマに書きます。

といってもテーマが広すぎるので、ぼくの書きたいことに限定する形で、おもいっきり未来志向で自由に書いちゃいます。(今回は、テーマ的にボリュームが多くなってしまうので、前編・後編にわけて書きます)


1. 「1億総デザイン社会」がついにやってくる


少し前の話になりますが、2017年5月、ぼくがとてもワクワクしたニュースが2件続きました。クラウドファンディングのKickstarter(2009年創業)とコワーキングスペースのWeWork(2010年創業)の日本ローンチに関するニュースです。

なぜ、このニュースに、ワクワクしたのか。


「1億総デザイン社会」がついにやってくる!! そう感じたからです。


ぼくがそもそもこの「1億総デザイン社会」というコンセプトに関する妄想を始めたのは2010年の末ころ、Kickstarterのサービスを知ってからです。

その当時ぼくが思った(というか着想していた)のは、「もしかして企業っていう概念はこれからなくなっていくかも?」ということでした。

企業の経営に必要なリソース。ヒト、モノ、カネを中心に。

▼ヒト? クラウドソーシングでヒトを調達する。社員を雇わなくても組織ができるということ?
▼モノ? クラウドコンピューティングや3Dプリンタでモノを形にする。設備がなくても製造できるということ?
▼カネ? クラウドファンディングでお金を調達する。金融機関に頼らなくても資金が集まるということ?

そんな感じです。

データサイエンティスト協会の理事も務められているYahoo CSO・慶応SFC教授の安宅和人さんの言葉を借りるならば、「ヒト・モノ・カネ」の時代から「ヒト・データ・キカイ」の時代へ、ということなのかもしれません。


でも、ぼくはこう思ったんです。


1億総消費社会、1億総表現社会、そして次は1億総デザイン社会なのだ!!!

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今ぼくがランサーズにいる理由も、究極的には「個のエンパワーメント」によってこの「1億総デザイン社会」をつくっていきたい、という思いがあります。

それで、「1億総デザイン社会」って何なの?と聞きたくなりますよね。「1億総デザイン社会」を僕なりに少し分解すると、それは↓みたいなことかな、と思っています。

▼個人が自分の生き方や働き方を自ら主体的にデザインできる社会(価値観の多様化→可能性)
▼「デザイン」することが思考や行動のプロトコルになっていく社会(価値源泉の変化→必然性)


今回は、この来る「1億総デザイン社会」における「働き方」についての考えを、ぼくなりに書きたいと思います。


2. モデルなき時代。不安な個人、ゆらぐ価値観


経産省の「不安な個人、立ちすくむ国家」という資料(通称:次官・若手ペーパー)が少し前に話題になりました。


称賛も批判もひきこもごも、という感じだったとは思いますが、「サラリーマンと専業主婦で定年後は年金暮らし」という「昭和の人生すごろく」のコンプリート率がすでに大幅に下がっている、というのはまぎれもない事実だと思います。「あがり」や「正解」のない時代。

社会はどんどん変わる。個人はますます不安になる。でも国はなかなか変わらない。じゃあどうすればよい?

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もちろん、日本という国家の構造的な問題(=課題先進国・日本)という側面もあるのでしょう。ただ、個人の価値観の「ゆらぎ」という点については、リンダ・グラットンの『ライフ・シフト』を読んでいても感じたのですが、世界的な潮流なのだと思います。

グラットンの(前作の『ワーク・シフト』もあわせて)『ライフ・シフト』の要点を勝手に短くまとめると、以下のようになるかと思います。

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いまの40歳の約半分が95歳まで、いまの30歳の約半分が99歳まで生きる時代。当たり前だけど、きづいていなかった事実。数値でじっと見て、あらためて感じる不安。

たとえばワーク・シフトのなかで個人的に印象深いのは「大量消費から情熱を傾けられる経験へ」の第三のシフト。ぼくもこの記事を書く中で、働き方の専門家であり、産業医の大室正志さんの話を思い出しました。

大室さんの持論によると、自分の行く道を自らデザインし選択しなければならない中で、流動的なキャリアを歩む人には2タイプいるとのこと。

▼(優等生的にとりあえず)「可能性を限定しない」道を選びがちな人
▼(多動力的な考え方で)「ハマって飽きる」を繰り返しがちな人

この2タイプは、「キャリアを固定しない」という意味で似ているようで、実はまったく違うのだ、と。前者と後者では、連続的なスペシャリストに見えても、過ごす時間の濃密さ=「ハマった」経験のが違うために、一定期間を経た後の内的なパッション・情熱の実り方に大きな差がでる。

これは、ぼくがコンサル出身だからこそ、身に染みてよくわかります。(コンサルが良くないと言っているわけではないですが)可能性を限定しないことによって主体的な選択をしていかないと、結果的に自分の潜在的なポテンシャルを引き出せなくなってしまう。

怖いけれど、自分の働き方を「決めてもらう」のではなく「決める」時代。

決める際に「可能性を限定しない」のではなく「ハマる経験を得にいく」。

主体性をもって自分の経験をデザインする中で、見えてくるものがあるのだと思います。


3. 不安をこえて、自らの働き方を「ハック」する


「自らの働き方をデザインする」という話になると必ず出てくるのは、自由であることにつきまとう不安とリスク。

リンダ・グラットンの指摘するような↓の新しいステージを例に考えるとわかりやすいと思います。

▼エクスプローラー:選択肢を狭めずに幅広い針路を検討(=自分探し)
▼インディペンデント・プロデューサー:自由と柔軟性を重んじて小さなビジネスを起こす(=ミニ起業)
▼ポートフォリオ・ワーカー:さまざまな仕事や活動に同時並行で携わる(=複業・副業)


それぞれ、概念としてはよくわかる。でも、「何から始めていいかわからないよ」「なかなか勇気がなくてできない」「そもそも社内で認められてないし」という声もある。

以前登壇させていただいた「40歳サバイバル~人生100年時代の新しいキャリアとは~」というイベントで似たような議論をしたときに面白かったのは、『「副業」ひとつとっても、みんな真剣に考えすぎなんじゃないの?』という話。

副業で「お金を稼ぐ」というと大それたことに聞こえるけど、異業種交流会に参加するとか、少し前に流行った朝活をとりいれてみるとか、お金を稼がなくてもよいのであれば、社外活動という広い意味での副業の敷居は急にグッと低くなるし、それによるリスクも低くなる。

なにしろ、色々な調査を見ていると、7-8割の個人は副業してみたくて、でも副業を許可している企業は2割くらいしかなくて、実際に副業している個人は1割もいない状況。

もちろんお金を稼げるにこしたことはないけど、一方で、一歩踏み出すために、日本人らしいリスクのとり方ってあると思うんです。

そういう意味でいうと、たとえば無償のボランティアや、いわゆる「プロボノ」の活動領域で、面白い取り組みはいろいろと増えてきているように思います。

個人的に近しいところでいうと、たとえば、小沼大地さんが代表を務めるNPO法人クロスフィールズの「留職」とか、廣優樹さんが代表を務めるNPO法人「二枚目の名刺」の活動など。

いずれも、「何かしら社会貢献したい」「社会改題を解決したい」という社会人の自己実現の欲求に見事にこたえるすばらしい取り組みです。


でも一方で、「せっかく副業するなら稼ぎもほしい」という声があるのも事実。

手前味噌ながらランサーズの話をすると、ランサーズで成功する人も、最初はちょっとした副業、特にタスクやコンペと呼ばれる簡単な仕事から始めてみる人が多い。

で、副業をうまく続けるコツのひとつは、「個人と会社のおいしい共生関係」をつくること。

↓の記事で紹介しているYahooデザイナーの岡直哉さんは、副業で結婚資金を稼ぐという素敵なシンデレラ副業ストーリーの持ち主なのですが、副業で自分のスキルを試し、副業で得た知見を本業に還元している、とても良い事例です。


もっというと、これは起業のあり方でもあてはまること。

ぼくのマッキンゼー時代の同期で柴田陽さんという方がいるのですが、彼はすでに5社創業して3社のエグジットを経験している連続起業家(=シリアルアントレプレナー)です。彼が特徴的なのは、これまで多くの場合において、副業のような形でリスクヘッジをしながら起業をしてきたということ。

たとえば、2013年に楽天に売却したSpotlight社(O2Oの「スマポ」というサービスを運営)は、彼がフィールドマネジメントという会社に在籍しながら立ち上げた会社です。

曰く、「命綱をつけずに山登りする人はいない」よね、と。起業するからといって、会社を辞めてあたらしい会社にすべてを費やすのではなく、ある程度のリスクヘッジをしておくべきだ、と。


ここまで、自分探しや社会貢献のためのプロボノ(cf. エクスプローラー)、個人も会社もおいしい副業(cf. ポートフォリオ・ワーカー)、命綱をつけた形での起業(cf. インディペンデント・プロデューサー)、と紹介してきました。

共通していえることは、一歩先に進める自由にともなって生じる不安やリスクに対して、不安に対してはハードルを下げる、リスクに対してはきちんとヘッジする、ということ。当たり前に聞こえるけれど、そういうことだと思います。

でも、それ以上にもっと大事なのは、本業で手を抜かないこと。本業で成功できない人は副業で成功しない可能性が高い。新しいことやってみたい、ただリスクはとりたくない、いやでも楽もしたい、というのはわがまま。

しっかり本業で成果を出しながら、自分なりのやり方で適度なリスクをとることをおススメします。


今回のポイント


というわけで今回のまとめです。

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最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。

次回はこの「働き方」に関して、今日の続編を書きます。ここまで読んでくださった方で、まだフォローいただいていない方は、良ければぜひフォローしてください!


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