佐々木美佳

映画監督/文筆家。映画『タゴール・ソングス』監督 ここは書きたいこと置いておくところ。

佐々木美佳

映画監督/文筆家。映画『タゴール・ソングス』監督 ここは書きたいこと置いておくところ。

マガジン

  • インド映画留学日記

    映画学校の日々のドタバタや、コルカタでの生活の様子や、学びの忘備録として不定期に更新します。表に向かって書けないことも多いので(学業的に)、その時は有料記事とさせていただきます。筆者のコーヒー代だと思って読んでください!

  • 大陸引越し日記

    日本からインドまで大陸引っ越しするあいだの日々を綴ります。

  • 写真日記

  • 言葉だけ

  • ギタンジャリGitanjali翻訳

    私が持ち合わせている言葉で、 タゴールのギタンジャリを翻訳するプロジェクトです。2020年3月末からはじめました。映画『タゴール・ソングス』のための、そして平穏な世界のための、言葉です。

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コルカタ!初の越夏記録…

4月に突入してからというもの、毎日、いや寝る前には毎分天気予報をチェックしていた。4月の記憶が全て「暑い」に集約しているといっても嘘ではない。我が寮の部屋にはエアコン(ACとインドでは表現する)が無い。4月の1週目までは、ACのついている教室で日中しっかりと体を冷気に浸し、夕方のスクリーニングで冷え冷えになり、就寝前はアイス枕で頭を冷やすことにより眠ることができていたのだ。最高気温が38度の頃までは部屋にACがなくて生きていけるかもしれないと思った。しかしそれは単なる思い込み

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    • コルカタの熱波

      4月の記憶を時系列で並べることができずにいる。それまでは自分の生活に確かな手触りがあったのだが、4月のコルカタの熱波は嵐のように私を飲み込んでいった。毎日暑さを感じることしかできず、頭の中が腐っていくようだった。人生に虚しさを覚え、なぜ自分がここで生きているのか分からなくなった。もちろん映画のためにコルカタに来たのは百も承知だが。自分のことを楽観的な性格だと思っていたけれど、暑さに理性が乗っ取られてしまった。憂鬱の最中をさまよっているとき、私は文字通り周りの人たちに助けを求め

      • 映画学校での勉強について

         「『ドライブ・マイ・カー』観たんだけどさ、日本人はみんな嘘つき(cheater)なのか?登場人物の行動が時々理解できなくて困った」 カメラマン志望の男友達が冗談半分で私に質問してきた。村上春樹の世界観に慣れ親しんでいる私にとっては「婚姻関係や恋愛関係にある2人がどちらかを裏切る」という状況設定に関してなんの違和感もなかったから、24歳のインド人男性の素朴な質問に新鮮な驚きを覚えた。ちなみに彼はめちゃくちゃ性格がよくて、悪いことを一切しないタイプの素直な人だ。  今週は日

        • 到着〜留学生としての手続き防備録

          無事コルカタ到着して学校生活スタート。しかし書類多いですね。RPGゲーム…いや〜、学校開始と同時に書類集めゲーム進まなくてよかった。これはまじの防備録で、自分が先輩のになったときに留学生サポートするメモ…。同じ苦労をした留学生の先輩がサポートしてくれているからいいけど、わけわからんすぎる。そんでオフィスは土日閉まるし、平気で職員さんが出張するから思うように進まないのよねえ〜。 登場人物 ICCR インド政府の留学生奨学金を管轄する政府組織 FRRO  外国人登録するとこ。こ

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        記事

          佐藤yuupopicさんの初売り

          2022.9.31(金)  荷物をどれだけ処分すればいいのかを考えるため、横浜の家に戻る。服セクションと、本セクションを整理しようと思ったが、どちらも1日でこなせるはずがなかった。大量の服が出てきて途方に暮れた。買った時の思い出は色々思い浮かぶのだが、なぜこんなに増殖してしまったのか正直全然思い出せない。無意識に買い溜めていたのだ。全部インドに持っていけるわけないし、冬服なんてこのあと3年着るのか? という疑問が湧き、真冬のコートはお気に入りの数着を残して処分しようと決意した

          佐藤yuupopicさんの初売り

          石ころの記憶

          2022.9.29(Thu)  李禹煥の展示を見に国立新美術館へ行った。生理で腹が痛かったが、痛み止めを飲んで行った。映画館にはそそくさと一人で行くことができるが、美術展となるとなぜか腰が重くなる。誘われたタイミングで行かなければ展示が終わってしまうのだ。  李禹煥が配置からほとんどをプロデュースしたらしい回顧展、制作でお世話になった三溪園を歩き回っているような気持ちになった。砂利の音を感じながら、配置された石や音が聞こえてきそうな絵筆の連なり、余白の空間を見るのはとても癒さ

          石ころの記憶

          合格通知が来た

          2022.9.28(Wed) 制作のために借りていたアパートを解約する連絡を不動産にした。本当のダメもとで出したインド政府の奨学金が通過したのだ。「今年は応募する練習くらいにしておこう」と考えていたから、まさか合格するとは思っていなかった。合格通知が来たからには入学しなければならない。来年受かるとは限らないからだ。映画学校の3年コース、書類不備で落とされると思っていたのに。  アパートは横浜にある。三輪舎と本を作っている最中、街が気に入って引っ越してアパートを借りることにした

          合格通知が来た

          ライ麦でつかまえて

          ぼくはきみに生きていて欲しいと思うから、血の通った文章を書くよ。だからゲラの返しが遅いのは許して欲しいよ。遅ければ遅いほど、楽しみが増えるじゃないか。きみの仕事に泥をぬるようなことはしないから。きみはゆっくりぼくの原稿をまてば長生きできるのさ。ぼくの中に眠る美しさを信じてくれたお返しに、美しい言葉を彫るよ。  「で、僕はあぶない崖のふちに立ってるんだ。僕のやる仕事はね、誰でも崖から転がり落ちそうになったら、その子をつかまえることなんだ−−つまり、子供達は走ってるときにどこを

          ライ麦でつかまえて

          公園

          春が花の香を運ぶ すべてをさらい 心をあらう 春の嵐が踊ろうとささやく 鳥たちのさえずりと口付け ウイスキーのもうよ 公園で  タンブラーに忍ばせて あんまり高くない蜂蜜味のやつ 狂った花たちのフレーバーつきで チョコレートも食べようよ 帰れなくなっても 10キロなら 歩いてうちへ戻ろう どうせあったかいんだ 鳥たちのさえずりと口付け

          音の記憶を書き換えろ

          音の記憶を書き換えろ 身体の記憶を書き換えろ 叩け 祓え 身を浸せ 亡霊は追いつけなくなる 逃げろ 全力で逃げろ 捨てろ その靴を捨てろ 泣け 叫べ 鍵を折れ 亡霊は息をひそめる 傷跡にキスをできるのは それを見つけた人間だけ 殴り合う渦中の二人には それを撫で合う資格はない 逃げろ 音の記憶を書き換えろ 叩け 祓え 身を浸せ 己に重さをもって刻まれる  意志あるリズムに身を浸せ

          音の記憶を書き換えろ

          雄島から

          あけましておめでとうございます。コロナ禍ではじめての、実家篭りな年末年始でした。久々に会った姪っ子がわたしともうお馬さんごっこをしてくれない。姪の成長から時の流れを感じます。「好きなものはなに?」と天使に尋ねてみると、youtubeとのこと。youtubeを始めたら構ってくれそう。2022年は細々とyoutubeをアップしようと下心芽生える三ヶ日でした。 佐々木家のささやかな出来事はさておき、新年早々何事にも変え難い素晴らしい読書体験をしました。友人である松原ゆうさんが自力

          芸術と共に生きることー高濱浩子さん@神戸・元町映画館

          2020年12月5日、澄み渡る晴れの日の土曜に、神戸・元町映画館さんで『タゴール・ソングス』の上映がスタートしました。この日はとくべつに、元町映画館さんのお計らいで上映後、神戸在住の画家・高濱浩子さんとのトークを催してくださいました。 タゴールが創った学園シャンティニケトンで絵を学ぶために1年滞在した高濱さん。「YOUは何しにインドへ」というおたがいの質問コーナーは、インドに関わる人同士の定番の挨拶文句で、初対面の私たちにとってこの日のトークの大きなトピックでもありました。

          芸術と共に生きることー高濱浩子さん@神戸・元町映画館

          虚実が入り混じった日記(2020/9-)

          2020/09/06 仕事をやめてぼんやりしている時、後腐れのないバイトがしたくてマンションの展示販売の受付をしたことがある。黒いパンプスを履いて、綺麗なみなりを少し意識して、1階で突っ立ってお客様を展示部屋にご案内する仕事だ。難しいことは何もない、笑顔で入り口から部屋に案内し、お茶の種類を選んでもらい、お渡しするだけのアルバイト。お客さんが来ない時はティッシュにいれるチラシを折る。本当にそれだけ、苦痛といえば暇な時間を潰すことだ。それだけでちょっとしたお小遣いがもらえた。

          虚実が入り混じった日記(2020/9-)

          美しい花の蕾よ/krishnakoli ami tarei (1910)

          朝、この動画を見てとても悲しい気持ちになった。そうとしか言えない出来事が連日続いている。物心つく前から自分の持って生まれたものを無意識に否定させられたのちに起こるあらゆる悲劇を思う。感情が強く動くと、眠っていた記憶が引っ張りだされる。ずっと気になっていたけれど翻訳できていなかったタゴールのとある歌を思い出した。 美しい花の蕾よ 村人はあなたをただの黒い女と言い放つ しかし私は荒野で見たのだ  黒い肌に光る鹿のような瞳を 豊かな黒の髪をヴェールで覆うことなく 毅然としてこちら

          美しい花の蕾よ/krishnakoli ami tarei (1910)

          2020/4/20 gitanjali12

          私の旅の時は永く、 その遠く長い道のりに、 私は初めて足を踏み入れた はじまりの光の 馬車に乗って 数々の星を巡り 軌道のような 轍の跡を描いていった あちら側やこちら側の 森や山に 自分自身に近づくということは 最も遠いこと 単純な音色のためには 一番めんどうなしつけが必要だ 最後に 他人の戸口を叩き 旅人は自分の住処へと辿りつく 外の世界に憧れさまよった後に、 心の神に出会うのだ 「これこそがあなただ!」と 私は 声を上げる どれ程 私の瞳が漂いつづけ どれだけの道

          2020/4/20 gitanjali12

          2020/4/16 Stray Birds 77

              全ての子供は生まれてくる、神は人類を未だ見捨てていないという言付けを携えて。 EVERY CHILD comes with the message that God is not yet discouraged of man. (ギタンジャリではなく、『迷い鳥 Stray Birds』より。)

          2020/4/16 Stray Birds 77