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芸術と共に生きることー高濱浩子さん@神戸・元町映画館

2020年12月5日、澄み渡る晴れの日の土曜に、神戸・元町映画館さんで『タゴール・ソングス』の上映がスタートしました。この日はとくべつに、元町映画館さんのお計らいで上映後、神戸在住の画家・高濱浩子さんとのトークを催してくださいました。

タゴールが創った学園シャンティニケトンで絵を学ぶために1年滞在した高濱さん。「YOUは何しにインドへ」というおたがいの質問コーナーは、インドに関わる人同士の定番の挨拶文句で、初対面の私たちにとってこの日のトークの大きなトピックでもありました。ぶっつけ本番のトークでお話伺う中で、高濱さんとインド、そしてことタゴールとの出会いは、何か導かれるようなものを感じたのでした。

タゴール・ソングス』という映画はタゴールのシンガーソングライターの側面を伝える映画であると言えます。しかしタゴールには歌の作り手の他にも数え切れないほどの側面があり、多彩な人物です。そのうちの一つが「画家」という側面です。

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(タゴールの自画像)

神戸の元町商店街で生まれ育った画家の高濱さんは、地元神戸で1995年、阪神淡路大震災を経験します。「あと5センチ屋根が迫ってきていたら、死んでいたかもしれない」と語る高濱さんの言葉から、自分の確かな記憶にはない震災当時の状況を想像しました。街中が悲嘆にくれるなか、いてもたってもいられない想いから、アーティスト仲間とともに商店街でライブペインティングなどの活動を再開させます。

震災の傷痕が癒えない街中でのライブペインティング中、絵を見た一人のおじちゃんが、高濱さんの絵の前で立ち止まります。

「姉ちゃん、わし、絵なんかぜんぜんわからんけど、なんか、姉ちゃんの絵、家に持って帰りたいんや」

高濱さんはその絵をおじちゃんに喜んで譲るとともに、「アートは非常時には不必要なもの、と言われがちだけれどそうではない。根源的に人はアートを必要としている」とおじちゃんの言葉から実感します。そして震災から時を経て、高濱さんは偶然タゴールの画集に出会い、「命いっぱい芸術を生きている」タゴールに導かれるようにしてインド・シャンティニケトンの地に足を踏みいれることになったのだそうです。

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(タゴールの詩作から生まれた絵)

今年一年はコロナのことがあり、多くの人たちが「立ち止まること」を強いられた年でもありました。しかし立ち止まれたからこそ出会えた人たちがいて、出会えた風景があります。そういうタイミングで皆さんが偶然出会った映画の一つに『タゴール・ソングス』があり、心の中にタゴール・ソングが宿ってくれたようならば、今年は立ち止まれてよかったなあと思います。

「アステ・アステ」(ベンガル語でゆっくりゆっくりの意)というベンガル語が、今は遠くにあるベンガルの土地から聞こえてきそうな1日でした。元町映画館さん、大変な時期にお集まりいただきましたお客さま、皆さんとタゴールを通じて出会えたこと、とても嬉しく思います。

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映画の旅はアステ・アステ、まだまだ続きそうです。

映画『タゴール・ソングス』全国で公開中!
兵庫・元町映画館 12/5(土)~18(金)
埼玉・深谷シネマ 12/6(日)~12(土)
ながおか映画祭(オンライン配信) 12/10(木)〜12/14(月)
長野・長野松竹相生座ロキシー 12/12(土)~25(金)
福岡・KBCシネマ 12/15(火)
公式HP


筆者は現在インドの映画学校で留学中のため、記事の購読者が増えれば増えるほど、インドで美味しいコーヒーが飲める仕組みになっております。ドタバタな私の日常が皆様の生活のスパイスになりますように!