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なまけもの

仕事に行って日銭を稼ぎ、休みの日には仕事で溜まったストレスを解放する。

そんな人生の繰り返しに一体なんの意味があるのだろうと考えていた。

会社の一つの歯車として、私はこの世に生を受けたのだろうか。

昔から個性が強かった私は、人の輪に入るのにとても苦労した。

小学生の頃にはそのストレスで2年間腸炎になり、腹痛と吐き気が私の記憶のすべてだった。

私は何のために生まれたのだろう。

神がいるなら教えてほしい。

この無意味な人生の繰り返しに飽きてしまった。
一体いつになれば本当の生きがいとやらを感じるのだろう。

私はなるべく人に合わせて生きてきた。

そうして知らず知らずの間に私を見失っていた。

個性という色彩は、多くの色を混ぜ合わせると真っ黒になる。

多様性を尊重しすぎた私の個性は、真っ黒になってしまった。

人に合わせることは大切だ。

しかし自分を見失ってはならない。

このバランスを取ろうと思いついた時に
スピリチュアルの教えに出会った。

「あなたはそのままでいい」
「自分らしく生きればいい」

優しい言葉が私の心を癒した。

私は努めていた会社を辞めて
自分らしさを取り戻していくように独立した。

長年こびりついてしまっていた心のサビを落とした。

私は自分らしく生きることに至上の価値を置いた。

そうして私はあらゆるものを手に入れた。

人生は時間だ。

そしてこの世は資本主義だ。

私は自由自在に生きるために
自分の時給を上げようと試みた。

その結果、2年ほどで時給は30万円を超えた。

私はほとんど何もしなくてもお金が入ってくるようになり、毎日「ヨギボー」と呼ばれる、人をダメにするソファの上でナメクジのような生活を送っていた。

そういえば私の小さな頃の夢は「なまけもの」になることだった。

一日の大半、木の上にぶらさかって何もしないあのやる気のない顔を見て、私は言いようもない不思議な憧れを抱いていたのだ。

現代人は忙しすぎる。
本当の豊かさを見失っている。

そうして私はさらに時給を上げることに励んでいた。

当時私は26歳くらいだったが、もうすでに欲しいものも、やりたいことも、行きたい場所もすべてをやり尽くし、もう何も無くなっていた。

自分らしく生きて念願の「なまけもの」になった私を待っていたのは、どうしようもない虚無であった。

すべてが虚しい。

私は虚無から逃れる術を知らなかった。

私は何のために生まれたのだろう。

またこの問いが語りかけてきた。

私は毎日風呂で全身を頭の頂まで沈めて、すべての意識を静止してこの問いから逃れようとした。

つまり、死んで復活するということをやっていた。

私はこの方法で、意味を見出せない毎日を何とかやり過ごしていた。それでももうすぐ死のうと思っていた。人は本当の虚無には耐えることができない。

ある日そんな私にも転機が訪れた。

どうしようもない私を哀れんだ神が
私に愛する妻を与えてくださった。

私は延命し、妻のために生きようと思った。

それから結婚御報告の儀で伊勢の神宮に参拝した。

日本人なら一度は参拝しておきたい場所だろう。

私はそこで衝撃的な体験をした。

案内人の方に教えてもらったある参拝の奥義を聞き、それを実践した時にそれは突然起こった。

言葉にすることもできないほどの光が、私の魂に注がれ、私の真っ黒になっていた心が真っ白な光に変わった。

私は神の愛を知った。

私は自分らしく生きることで
一番大切なものを見失っていた。

神を見失っていたのだ。

それゆえ何を手に入れても虚しかった。

かの有名なパスカルは

「人の心の中には、神が作った空洞がある。その空洞は創造者である神以外のものよっては埋めることができない。」

と語った。

私はこれを体験した。

神という存在は今も生きておられる。

そしてこんなどうしようもない私を

今までずっと見守り、絶対に見捨てず、愛してくれていた。

私は神の道を歩みたいと思った。

自分らしく生きる自分道をやめて
神に自分を合わせていく生き方が始まったのだ。

私はそれ以来、虚しさを感じたことは一度もない。

これは神がなさったことだ。

神は本当に素晴らしい。
私は一生分の生きるエネルギーを神から頂いた。

しかし

嬉し涙を浮かべた目で世の中を見渡せば

今もなお、心に空洞が空いたままの人が沢山いる。

多くの人が光を求めて
暗闇の迷宮を彷徨っている。

ハッキリと言おう。

その空洞を埋めるのは神の愛だ。

あなたは神に愛されている。

なぜなら神は愛だからだ。

あなたは一人じゃない。

神がともに居てくださる。

人があなたを見捨てても
神があなたを見捨てない。

人生をあきらめないでほしい。

私が通ってきた道が
一人でも多くの渇いた魂を
潤すことができたなら

それ以上素晴らしいことはない。

真っ黒になってしまった心が
真っ白の光に変わるように。

私は今日も
そしてこれからも
神に祈っています。

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