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雨と心の距離について

雨を弾く傘の音には余裕があり、そのひとつひとつをはっきりと聞こえる。

傘の中心を探しながら濡れないように歩道を歩く。
向こうから歩いてくる対向車には直前まで気づかない。
傘で隠れた視覚と雨音で塞がれた聴覚。

ふっ、

傘と傘がぶつかる。
雨で重くなった傘と傘がぶつかり、2本の傘が離れる。
なんでも謝る日本人が
『すいません』の一言もなしにすれ違う。

少しの盲目と少しの沈黙の間に近づき、
知らぬままに触れてしまう距離は、人と人との心の距離に似ている。

雨の中交わす人並みかき分けてぶつかる傘に愛想もない


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