蒼日記

パリの近くに住んでいる歌う学生の戯言が中心。

蒼日記

パリの近くに住んでいる歌う学生の戯言が中心。

マガジン

  • 歌う身体を知ってみよう

最近の記事

  • 固定された記事

呼吸の為の筋肉① ~横隔膜~

前置きはこちらから 呼吸筋群とは さて、歌で使う筋肉はざっくり言うと三種類ある。呼吸をするためのものと、声帯で声を作るもの、その声を調節する為のものだ。 まずは呼吸をするための筋肉を纏めていく。 呼吸…………吸って吐くと字の如く身体は吸うときと吐くときでそれぞれ違った動きをする。それは肺に効率的に空気を入れ、吐き出すという動作であるが、歌うという行為ではよく逆の行動をして空気を留める必要があったりするので注意をしたい。 また歌という行為では声門下圧(la pressi

    • レシピのないお菓子

      Ⅰ レモンドロップ お水にお砂糖を溶かして ぐつぐつ ぐつぐつ かき混ぜながら文句も ぶつぶつ ぶつぶつ 煮立ってきたら 金属バットに どろどろと 液体を流し込むの レモン汁をじゅわっと加えて ぱっと光が散るみたいに 香りは飛び散るの ドロップ レモンドロップ 涙の形は まあるくきれい ドロップ レモンドロップ 雫の中に 閉じ込めたのは なぁんて 作れもしないものを 眺め透かしながら ひょいと口に入れるのです ドロップ レモンドロップ 涙の味は 酸っぱくて甘い ド

      • 自由と代償

         パリから帰ってきて、俺は多分、自由になった…………のだと思う。 普通逆だろうとか言われそうだけど、服装とか含めて色々と生まれ変わった並みに、自由になった気がしていた。  パリにいる間、紳士服を眺めるのは嫌だった。  お金がなくて、本当に欲しいものは手に入らないと分かっていたから。それに身体に似合わないものを着ても格好が悪くて、正直ずっとお洒落なんてしたくなかった。  それが、帰ってきたらどうだ。祖父の形見のスーツやら、礼服やらが並んでいて、恐る恐る袖を通したら、まるで自分の

        • もみの木

           石畳の街は、いつになく余所余所しい顔をしていた。  今年の秋から冬を語るなら、きっとそんな言葉がいいだろう。気温が下がるにつれて、猛威をふるう疫病に confinement(監禁) と言われる外出を禁じた政策を取った、その開始直前にはこの国や地域が抱えてた問題の一つが膨らんでテロという形で人を殺した。  毎日、人が死ぬ事。それが数値として目に見える寒さと、過激な殺人や暴力、思想そんなものに晒される日常に、重く暗い冬がやってくる。今年はノエルという楽しみもそこまでないだろ

        • 固定された記事

        呼吸の為の筋肉① ~横隔膜~

        マガジン

        • 歌う身体を知ってみよう
          7本

        記事

          擦れ違った認識

          「処女貰ってあげるよ。って誘われたの」 彼女から言われたそれは衝撃的な一言だった。 「男の身体は知らないからちょっとだけ、興味持っちゃった」 やっぱり気持ち悪いし、断ったんだけど、なんか、ごめんね。と告白されたとき、俺が彼女にとって『男』だと思われていなかった事に凄くショックを受けた。  そしてその相手が共通の知り合いだと察した瞬間に激しい怒りと失望と孤独感を抱いた。  そいつも俺を『男』とは見てくれないんだと。  確かに冷静に考えれば考えるほど身体が女性なんだからそう言わ

          擦れ違った認識

          普通に縛られて

           俺の身体は女性のそれだ。女性のふりをしつつ頑張って生きて、そして歌うことを仕事にしたいなと勉強している。  ほんとは男の身体になるように手を加えて変えてしまえたら楽だろうなと思いつつ、ピアスを開けることすら、親に何か申し訳ない気がして出来ないし、そもそも歌う事とホルモン剤の関係はどうなんだろうと思うし、気にしなければ気にしないということも出来なくない。  化粧をしたくないとか、スカートは嫌だとか思いつつも誤魔化して、「普通」の女の子になりたいという気持ちもあって女子校にも通

          普通に縛られて

          呼吸の為の筋肉⑤ ~肋骨の筋肉 その二~

          前回の記事で胸郭、肋骨周りの内側の筋肉と見てきたので、 今回は外側の筋肉を見ていこう。 小胸筋(Le petit pectoral)鎖骨(la clavicule)に付いてるかと思いきや肩甲骨(L'omoplate)の前に飛び出た鉤みたいな場所(鳥口突起 l'apophyse coracoïdeという)から第三から第五肋骨の脇に付いている。 Anatomic pour la voix (Blandine Germain) p120 より引用 ポンプハンドルモーションの

          呼吸の為の筋肉⑤ ~肋骨の筋肉 その二~

          呼吸の為の筋肉④ ~肋骨の筋肉~

          さて、胸郭の構造を見たところで、 その動きを支える筋肉を見ていこうと思うが、種類が多いので2回に分けて、内側から徐々に外側へ、上方へと見ていけたらと思う。 肋間筋(Les intercostaux)肋骨の各上下の縁に張り付いた骨格筋(l'osteo-musculaire)で二層に分かれている。 https://funatoya.com/funatoka/anatomy/spalteholz/J431.html より引用 内肋間筋(Les intercostaux in

          呼吸の為の筋肉④ ~肋骨の筋肉~

          呼吸の為の筋肉 番外編 ~胸郭~

          さて、これまでに横隔膜、腹筋、骨盤底筋と呼吸を支える筋肉を見てきたが………… 今回は胸郭を観察していこうと思う。 本当は筋肉だけ扱うつもりだったのだが、この骨格の動きを説明しないと分かりにくいなと書き上げたので、これは番外編だ。 胸郭(la cage thoracique) https://funatoya.com/funatoka/anatomy/spalteholz/J146.html より引用 胸椎(La colonne dorsale)と胸骨(Le ster

          呼吸の為の筋肉 番外編 ~胸郭~

          呼吸の為の筋肉③ ~骨盤底筋~

          さて、横隔膜、腹筋と胴体を徐々に下がってきたので、今回はその下にある骨盤と、その筋肉を見ていこうと思う。 前回の腹筋の記事は、こちらから そもそも、何故、骨盤が大切だと言われるのか。それは、胴体を支える部分で、色んな胴体の筋肉の圧力を受けているからだ。 まずはその骨格から観察していこう。 骨盤(Le bassin)フランス語だと、たらいとか、桶を意味する単語がこの部位に当てられているが、日本語よりその物の形を想像しやすいと思う。 大きく見ると 寛骨(部) 仙骨 尾骨

          呼吸の為の筋肉③ ~骨盤底筋~

          呼吸の為の筋肉② ~腹筋群~

          前回はこちらから 腹筋群(Les abdominaux) 前回まで呼吸の要になる筋肉、横隔膜を見ていったのだが、今回はその下にある腹部を支えている、 腹横筋 腹斜筋 腹直筋 をそれぞれ見ていこうと思う。 実はこの三つ努力呼吸(歌うときの呼吸)では呼息に関する運動をしている。どれも声門に届く肺からの気流を調整し、声門下圧に変化を与えている筋肉だ。 腹横筋 (Le transverse de l'abdomen )この筋肉は肋骨や骨盤、腰椎の腱膜から始まり、腹部の中心を

          呼吸の為の筋肉② ~腹筋群~

          歌う身体を知ってみよう ~序~

          序というか、前置き この記事について軽く紹介すると、パリの私立音楽院に通ってるしがない歌い手が、ある日、楽譜屋や楽器屋の立ち並ぶ通りで学術書専門店に入り、ヴォーカルテクニックのコーナーでとある本に出会ったのが始まりだ。 「Anatomie pour la voix (声のための解剖学)」と題された Blandine Germain 氏の著作はパラパラ捲っただけで、語学下手な、ただ身体と歌という事に興味のある学生が何も考えずに購入する程の良著で、「声のための骨格」、「声のため

          歌う身体を知ってみよう ~序~