呼吸の為の筋肉② ~腹筋群~

前回はこちらから

腹筋群(Les abdominaux)

前回まで呼吸の要になる筋肉、横隔膜を見ていったのだが、今回はその下にある腹部を支えている、

腹横筋
腹斜筋
腹直筋 

をそれぞれ見ていこうと思う。
実はこの三つ努力呼吸(歌うときの呼吸)では呼息に関する運動をしている。どれも声門に届く肺からの気流を調整し、声門下圧に変化を与えている筋肉だ。


腹横筋 (Le transverse de l'abdomen )

この筋肉は肋骨や骨盤、腰椎の腱膜から始まり、腹部の中心を通る腱膜の白い部分…………白線にくっついて停まっている(解剖学的には始まりを起始、終わりを停止という)。
腹部の横側にある筋肉では一番深いところにあり、皮膚の上からでは腹斜筋に阻まれ触れる事は出来ない。

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Anatomic pour la voix (Blandine Germain) p101より引用

見ての通り横向きの筋で構成された、この筋肉はコルセットみたいにやんわりお腹を引っ込める働きをしてくれる。
また、横隔膜の影響を受けたり、その動きに反発する事が出来る筋肉だ。

腹斜筋 (Les obliques des l'abdomen)

骨盤の大きい骨腸骨と肋骨に付着して広がっている腹部の横側の斜めの筋肉…………それが腹斜筋だ。
主にウエストを作り、捻る運動を担う筋肉だが、内側にあるものと、外側にあるものの二種類に分かれ、それぞれ


内腹斜筋(Le petit oblique)
腸骨と白線から、肋骨の内側に付く。下から上に行く斜めの筋。主に腰を丸めるのに使う。

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Anatomic pour la voix (Blandine Germain) p102より引用


外腹斜筋(Le grand oblique)
肋骨の外側から、腸骨と白線に付く。上から下に行く斜めの筋。主にお腹をへこませる(丸める)のに使う。

画像3

Anatomic pour la voix (Blandine Germain) p101より引用

という役割がある。また腰を捻る時に動くのもこの筋肉。因みに腹部の側面は奥から

腹横筋→内腹斜筋→外腹斜筋

の順番で構成されていて、腹横筋の動きを手助けしたり、それに反発したりしている。
また肋骨下部を引っ張り広げる役割もある。
触った時に一番感じられるのは外腹斜筋だ。


腹直筋 (Le grand droit de l'abdomen)

腹筋と言えばこれ。皆大好きシックスパックと言えばこの筋肉の事。骨盤の前面…………恥骨から肋骨、胸骨の剣状突起に付いている。
思ったより胸の方まで伸びててなかなか長い筋肉だと思う。

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Anatomic pour la voix (Blandine Germain) p104より引用

またこの筋肉は側面に付く筋肉の腱で構成された白線を覆い隠すように存在している。
主な働きはお腹を引っ込める事。
骨盤底筋と横隔膜や胸骨を繋ぐ役割をしていて、胸骨下部を引っ張り下げる事で肋骨を広げる役割もある。
個人的にはなんとなく吐くときにここで抵抗すると息の節約が出来る気がする。ただ力がかかりすぎて喉頭が下がりすぎたり、抜けすぎて喉頭が浮いたり、周辺筋肉へ影響も結構大きいので気を付けて使わないといけない。



この三種類の筋肉が横隔膜や、この下の骨盤庭筋群と連動し、息を吐く時はコルセットの様に腹部を締め、吸うときはそれを緩めて支えるている。

良く声楽をやっている人間は腹筋を鍛えるなと言われるのではないだろうか。
所謂腹筋などの筋トレで使うような動きは、硬く大きな動きで吐く息を調節するという目的で使うには向いていない。
あくまでも様々な筋肉が力み過ぎることなく、柔らかく連動して行く方が効率的だ。

また反り腰やへっぴり腰の状態では腹筋(特に側面のもの)に余計な負荷をかけたり、動かしにくくしているので治してゆくべきであろう。

腹筋の動きを感じよう

腹横筋
四つん這いになってへそを見ながら背中を丸める。へそを背骨に近づけるよう意識する。この時一番しんどい奴がこの筋肉。


内腹斜筋
体を捻った時に捻った側の内側で縮む筋肉。右に捻るなら右側、左に捻るなら左側で感じられる。
左右同時に伸びると背中が丸くなる。


外腹斜筋
体を捻った時に捻った側と逆側で伸びてる筋肉。
右に捻るなら左側、左に捻るなら右側で感じられる。
左右同時に縮むとお腹がへこむ動きになる。


腹直筋
V字バランスやら、筋トレで言う腹筋で一番感じられる。

次回、骨盤底筋群について



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