呼吸の為の筋肉③ ~骨盤底筋~

さて、横隔膜、腹筋と胴体を徐々に下がってきたので、今回はその下にある骨盤と、その筋肉を見ていこうと思う。

前回の腹筋の記事は、こちらから

そもそも、何故、骨盤が大切だと言われるのか。それは、胴体を支える部分で、色んな胴体の筋肉の圧力を受けているからだ。

まずはその骨格から観察していこう。

骨盤(Le bassin)

フランス語だと、たらいとか、桶を意味する単語がこの部位に当てられているが、日本語よりその物の形を想像しやすいと思う。
大きく見ると

寛骨(部)
仙骨
尾骨

の三つに分かれている。

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骨盤
1. 仙骨 2. 腸骨 3. 坐骨 4. 恥骨 5. 恥骨結合 6. 寛骨臼 7. 閉鎖孔 8. 尾骨 赤線は骨盤縁https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AA%A8%E7%9B%A4 より引用

寛骨(Les os coxaux)
腸骨(腰に手を当てた時に触る骨 les os iliaques)、座骨(座った時手を左右から差し込むと腸骨の斜め下に感じる骨 les ischions)と恥骨(股関節の中心の骨 le pubis)が17歳頃に一体化したもの。この骨の接続部がそれぞれ股関節(L'articulation de la hanche)を形成している。

仙骨(Le sacrum)
腰椎に繋がっている板みたいな骨。椎骨が癒着して構成されている。背骨の両脇をなぞって降りてきた時現れる硬い所。

尾骨(Le coccyx)
尾てい骨とも。お尻の割れ目の直前に人によっては尖ってる骨がある。これも椎骨が癒着したもの。

因みに、骨盤内部の空洞を骨盤腔といい、上部、つまり腸骨に囲まれた場所を大骨盤腔(Le grand bassin)、その他の骨で囲まれた下部を小骨盤腔(Le petit bassin)と区別している。大骨盤腔までは腹腔に収まる内臓(腹腔内臓器、小腸とか)が入っていて、小骨盤腔に骨盤臓器(膀胱、子宮、直腸)が収まっている。

骨盤庭筋群(Le plancher pelvien)

骨盤の底、小骨盤腔に張り巡らされた三層の筋肉の総称で、主に骨盤臓器を支え、排泄コントロールをしている筋肉だ。また腹筋で作られた下向きの圧力(腹圧)を受けている場所でもある。

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https://funatoya.com/funatoka/anatomy/spalteholz/J808.html より引用

胴体の底とも言える骨盤庭筋と呼吸にどんな関係があるのか図を見ながら理解して行こう。

吐くとき(呼気)
横隔膜が上がるのでそれに釣られて腹直筋も上に引っ張られ腹部がへこむ。側部も内側へと引っ張られ入っていく。この時、骨盤庭筋は排泄を我慢する時のように締まって持ち上がる。歌うときお尻の穴を絞めろと言われたりするのはこの機能の為。

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springs-pilates.com/biomechanics/カラダの仕組みシリーズ%E3%80%80vol-8-いよいよ!呼吸と骨/ より引用

吸うとき(吸気)
横隔膜が下がり、それを受けて腹直筋が下に押し出される。また側部も外側へ膨らむように押し出される。この時、骨盤庭筋は緩んで下がった状態となる。ここで更に吸うと骨盤底筋が緊張し、息む時の状態になる。


別に意識しなくても骨盤庭筋の動きはある程度行われているが、上の連動が姿勢の悪さなどで上手く出来なくなると、臓器脱や失禁を起こしやすくなったりと色々と大変なので、意識的に使うようにした方が良い。

良い姿勢って何だろう

骨盤の話をするとき切って離せないのが姿勢の話だ。骨盤の位置によって横隔膜とこの骨盤庭筋の位置が垂直から離れてしまうと、腹圧のコントロールが難しくなってしまう。

骨盤前傾状態
反り腰。腰のカーブが内側に入りすぎる状態。いい姿勢と思ってやりがち。

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Anatomic pour la voix (Blandine Germain) p45より引用

骨盤後傾状態
猫背。腰のカーブが外側に出てる状態。

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Anatomic pour la voix (Blandine Germain) p45より引用

骨盤の正常な位置の見つけ方

・壁に背を付けて片足を上げ、体に対して膝までが90度、膝下が平行になるように立つ。
・椅子に深く腰掛け、恥骨が両側ともきちんと接するようにする。底から平行の位置に腸骨、肩と逆三角形を描くつもりで乗せていく。

もし、反り腰の状態が普通の人にとってはややだらしないと感じるし、背中が丸まっているような姿勢かもしれないし、猫背の人にとっては背中に少し重さが乗っていると感じるかもしれない。
自分一人で直すのは難しいので壁に背を付けて歌ったり色々と工夫して良い感覚を身に付けたい。


歌と骨盤底筋

骨盤庭筋の鍛え方は色んな所でありとあらゆる方法が紹介されているので敢えて此処では触れないが、歌う事と骨盤底筋に対して少し纏めておく。

既に述べた呼吸時の動きに加えて、音形や音色、フレーズの流れなどで緩めたり、息んだり我慢したりして腹筋や横隔膜を支えていくのだが、

高音に登っていく時
骨盤底筋を徐々に緩めるもしくは息む状態を作り出すと安定しやすい。

低音に降りていく時
骨盤底筋を徐々に絞めていく、我慢してる状態を作ると安定しやすい。

みたいな傾向が個人的には感じられる。


丹田で支えろとは良く考えられた言葉で腹筋で支えを作るより、骨盤底筋を意識しやすいが、なんならもっと下の排泄器官とリンクして考えた方がより使いやすい。と、今更ながら気が付いたのだった。

次回、胸腔とその筋肉について(のはずが胸郭の話で終わってしまいました)


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