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双星たかはるの詩歌などテキストを集めたマガジンです。2020年以前の作品は、テキストブログかカクヨムをご覧ください。
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2021年5月の記事一覧

詩『Mother』

詩『Mother』

母と呼ぶにはあまりに脆く
親と呼ぶにも不安定がすぎた
いつ気づいたのかは思い出せない
互いに歳を重ねたからだとは思う

地球上のあらゆる生けるものについてを
ちっぽけなわたしが知る術はないが
母についてなら自ずと感じるものがある
推量より断定に近いなにかが

母は母であるまえに人間であるという
長く生きてきた人間であるのだという
ただの肖像や偶像ではないのだという
その人生に気づかされることが増え

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詩『くじらの夢』

詩『くじらの夢』

月を食うくじらの雲を追いかけて
食べこぼされた星を縫います

くじらは月を食べ終えますと
サザンクロスに帰ると言って
菫青石をくれました

青紫がいい香り
空は今日の呼吸をし始めます

くじらの夢が叶います
金色をした夜明けです

20210509
Twitterタグ『月を食うくじらの雲を追いかけてに続く言葉を書いてみませんか』

詩『美しい殺意』

詩『美しい殺意』

美しいものは純粋に
真っ直ぐ切先を向けてくる
躊躇わず胸を刺してくる
それはもはや殺意の様相

花弁に潜む螺旋の歴史を
あまたの書物に遡るとき
水面に揺れる満ち月は来て
無限に輝く白金の窓

空を流線形に切り抜く社
先人の祈りを組みあげて
山はいのちの根城となって
どこまでも足許に横臥する

心の隙間に入り込み
遠慮もなしに踏み荒らしてゆく
記憶の概念を根刮ぎ奪い
季節でさえも歪ませてゆく

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詩『無限』

詩『無限』

無限とはなんなのだろう
フラクタルのような繰り返しを言うのか
時間のように流れ続けるものを言うのか

ただ時間は表裏一体である
数字という定形の概念の繰り返し
現象という不定形の今の重なり

無限大という言葉
無限という言葉

一見どちらもおなじだが
前者には規模を表す枷がつく一方
後者はあくまで自由なふうだ

しかし言葉で言うのであれば
無限も形容され枠で括られている
限りが無いという決まりが律

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