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さよなら、お頭

時代劇好きな人なら、その落ち着いた世界観が好き、勧善懲悪とは言い切れない人情味あふれるが物語好き、という人が多いだろう「鬼平犯科帳」。
その主役、火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を長く演じた歌舞伎俳優の中村吉右衛門さんが亡くなった。

3月に倒れたというニュースから続報がなかったので、その後はどうされているのか、なんとなく気になっていた。

残念です。   

吉右衛門さんの鬼平放送開始は1989年。当時小学生だった私は実はほとんど観た記憶がない。
まだほぼ毎日、どこかの局で時代劇を放送していたと思う。
TBSのナショナル劇場なら「水戸黄門」「大岡越前」「江戸を斬る」、テレビ朝日は木曜日に「三匹が斬る」「遠山の金さん」土曜日に「暴れん坊将軍」など。
わかりやすく勧善懲悪で、かつホームドラマの要素もあり、わかりやすく見やすいものが多かったと思う。

そんな中で吉右衛門さん主演の「鬼平犯科帳」は一味も二味も違う雰囲気だった。
本格的というか、本当にこういう世界が存在するような気にさせ、また映像が美しくて世界観が他の時代劇とは別モノと感じた。暗めの映像が多かった。

だから子どもの頃は、比較的明るい画面でわかりやすく勧善懲悪でアットホームなものが見やすく、鬼平好きにはならなかったと思う。


それが真面目に鬼平を観るようになりはまったのは、激務&パワハラでうつになったあたりだろうか。

ちょうど2010年頃、鬼平の台詞をつぶやくTwitterを作った記憶がある(登録時に使ったメアドがわからなくなり更新もできてない…)。それくらいはまっていた。

なんというかこの世の中の不条理だったりいいところだったり、そういう清濁併せ呑むみたいな鬼平の世界が好きだった。
ドラマから入ったが、原作も漫画もそれぞれ好きだった。

そして池波正太郎さんは、中村吉右衛門さんの実父・先代の松本白鸚さんを鬼平のモデルとして原作を書かれたそうだし、吉右衛門さんが池波さんに請われて一度は断ったものの、4代目になったのは原作の鬼平の年齢の45歳になったからなど背景にあるストーリーは、吉右衛門さんが鬼平になるべくしてなった感がある。

ビシッと締める、悪党を黙らせる顔も、くしゃっとにやっとしながら一献傾ける顔も、粋で素敵だった。

書きながら悲しくなってくる…。

幸いというのか、毎週録画している再放送があるのでいつでも鬼平の世界に浸ることはできる。

もう少ししたら、たくさんある中から選んでじっくり観てみたい。

お頭としても、吉右衛門さんとしても、先に逝かれた彦十の猫八さんとか粂八の蟹江さんとか、五郎蔵の綿引さんとかと「待たせたな、なんて」と笑っていらっしゃるだろうか。

とても素敵なお頭の姿をありがとうございました!

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