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20240808「見えない物語」

その山の向こうまで
降りて行き
視界が広がる
急流から暫し緩む
空が広いから
それだけで気分が晴れて
何もなかったように
息をする
越えられなかったわたしを置いて
違う所へ向かっている
それが何なのかは
微細に揺れて
振動の共振で
触れる感触を
皮膚に伝える
変化の震えで
息を飲む

普段通りのことだが
逐次進み
何もなかったような
気づけない物までも
既に気付いているのだろう
わたしには上がってこないけれど
どこかではちゃんと受け取っているから
それらから探し
ふとした瞬間に見ることになるのだろう
もうわかっているかもしれない
それが随分先のことだとしても
未だ持っているのは
いつかの気持ち
取りこぼしたそれらをそのまま置いて
抽出する一滴を
小瓶に詰めて
わたしのどこかで保存しておこう

どれもが叫び
その存在を示し
各々がその意味を付与している
気づけないままに暮らし
頬張る食物を平らげ
別の場所へと促され
網目の収束と解放へと
渡っている
殆どの見えていない物語を更新し
初めての場面に遭遇している
違うわたしたちは
どの記号を読み解き
或いは誤読して
次の続きを奏でるのだろう
共鳴の連鎖と届かない願い
それこそが理由だとして
次の日々を送っている

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