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20240623「路地の温度」

見てごらん
盲いた歌姫が先に行き
後からゆっくり
車に乗って
御者の前の方は
見えないくらいに
のっそり
耳を塞いで
微かに聞こえる
それは自分の蝸牛からの奥底
よくもまあこんな狭い所をって
おばあが口をこぼす
昔はそうだったと
賑わいの商店街のことを
話してくれる
そんなもん知らんと子らは言う

でんでんからから
しとしとぴっちゃん
笛吹き男は更にぴいひゃらら
吹けどもならぬ
潜りの土竜
伏流を辿って
駅前まで着いて行く
道中はすっかり陽が落ちて
雪洞の明かりで賑わしい
押すな押すなと言われても
それ見たいのだから
どうにも満員御礼でして
路地の冷たさだったり
情温の湿りだったり
おじいは先頭で音頭を取る
運行山車はよろけてるのに

子らが続いて
しゃんしゃんしゃん
鐘の音響かせ
わいわいがやがや
すれ違ったのは
いつかの誰か
一瞬目を合わせ
手が触れる
そんなに押すなって言うくらい
賑わってるのだから
いざこざ喧嘩も華が咲く
いい加減にしときって
おっかあが怒って
誰かがしゅんとする
もうすぐ終点
哀れ小さな花火が打ち上がる

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