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地続きなグローバリズムを

「グローバルな活躍」という謳い文句に、どうも疑いの目がある。
主に就活関連でよく遭遇するこの言葉は、とても魅力的に思えるよね。

「日本国内にとどまらず、世界を股にかけて活躍できる人材に憧れる!」と形骸化した価値観は、たしかにカッコイイ。モテモテ。いい匂いしそう。

自分も旅行が好きなので、世界のあちこちで何か役に立つということに興味はあるし、いつかできたらそれはとても刺激的だろうなと思うよ。

でもこの感覚は、ライバル会社同士しのぎを削って競争し、成功をおさめ、経験を積み、成長を志して公言する、あの、いわゆる、「グローバルな活躍」ではないんだよね。そんな鼻息が荒くないというか。獣みたいにさ。

☆☆☆

現代になって、昔とは比べ物にならない多くの情報を手にできて、最寄りのコンビニまで1kmもあるど田舎に住む人間でさえ、海の向こう側の文化や思想や事件やほっこりニュースのすべてを知ることができる。

これらにはフェイクや主観が混じっていてあくまで疑似的ではあるけど、そういう色んなものがこの町の外側にあるんだということを知れることは、単純にすごいことだよね。
文字通り、世界が広がる。

自分もいろんなものに興味がある人間なので、もっともっとと様々な情報や意見を自ら調べるし、情報を仕入れるだけじゃなくて、直接それらのど真ん中に身を置いてみたいなと思うことは多々ある。

ただこの時注意したいのは、膨大の情報に容易にアクセスできるからと言って、自身が膨大な情報を処理できるキャパが拡大したわけではないということ。
この、"おれは遍くすべてのものを語ることができる"という刷り込み、誤解、自惚れから生まれる無敵感はまじでまがい物!

そしてこれに見事騙されて世界を統べようという欲求に駆られる人こそ口にする一つの例が、あの「グローバルな活躍」

俗に言われているグローバルに活躍する人材みたいなのって、なんかたまたま世界のあるポイントで仕事をしているだけなのに、さも日本を全クリして次のステップへ手を広げる超有能筆頭成長株感を演出しているのが鼻につく。

この感覚、ポケモンの金銀クリスタル版で、殿堂入りしたらすぐにカントー地方に行けるようになるのに似ている。ポケモン図鑑をしっかり完成させてから次の地方へ行け!!

こいつらはたいてい、海の向こうのクライアントとの電話に夢中で足の悪いおばあちゃんに席も譲らないし、世界平和の大切さをのたまいながら遅延する電車に舌打ちをし、SDGsのプレゼンをした帰り道に路上でタバコをふかしてポイ捨てをする。

偏見に満ち満ちたこれらの例はさすがに冗談多めだけど、大きなものを語る人はどうしても、すぐそばの小さな問題を見過ごしがちになってしまう。見過ごすどころか、大きな問題を引き起こす小さなきっかけにすら加担している。

グローバル云々も同じで、自分が遣える気配りの飴ちゃんがあったとして、それを隣の人にあげる代わりに、海の向こうの顔も見えない人に投げわたしているだけにすぎなくて。
隣の人にあげるべき飴ちゃんを、顔もよく知らない人にあげてもそんな実感ないよねぇって思っちゃうんだよね。

本当のグローバリズムはさ、かつての武将が日本制覇をした時みたいに、地図を塗りつぶしていくように、連続的に地続き的にクリアしていくもので。出発点で成し遂げたことも、パフォーマンスを落とさずキープし続けながら次の開拓地へチャレンジするってのが筋だと思うんだよね。

そういう意味でちゃんとグローバルな活躍をしている人は、本当に一握りだと思うし、私のキャパ的には到底できそうにもないことだから、手放しに、すごいなぁと思うんですよ。

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