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詩集「縷縷」

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2021年11月の記事一覧

詩 「ふたり」

詩 「ふたり」

停電にあった冬の夜。
久しぶりにやかんでお湯を沸かして、
溜め込んだ貰い物のキャンドルに火を灯して、
あったかいお茶を飲んだ。
よしない話は尽きないけれど、
テーブルの下は冷え込んで、
ああ、こたつが欲しいなあ、
と二人は身を寄せ合った。
いつもより顔を近づけて、
やかんのピーピー呼ぶ音が、
もう何度目か、鳴っていた。
やかん、捨てなくて良かったね。
キャンドルの火が綺麗だね。
いつもよりお互いの

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詩 おいかけっこ

詩 おいかけっこ

おいかけっこ

本当に哀しいのは、
心は凍えているのに季節は春になることです。
本当に寂しいのは、
心が晴れないままお外の雨が上がることです。
本当に苦しいのは、
眠れないまま朝を迎えることです。

明日も生きたいと悔しがって死ぬのは幸せなことです。
もう死にたいと思いながら生きるのは不幸せなことです。

かけがえのない友を亡くした日の空はとても青かったです。
その次の朝も昨日と変わらず蝉が鳴きま

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