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#46『カラスは言った』(著:渡辺優)を読んだ感想

渡辺優さんの『カラスは言った』

第4回(2022年下半期)「ほんタメ文学賞」あかりん部門大賞受賞作です。本作についてお話されている動画を見たことがきっかけで読みました。
読了後は表紙のカラスが愛おしくなり、僕はこの本が好きになりました。

このような方にオススメの本です

  • ニュースなどで情報を見るのが疲れる

  • 周りの意見に流されやすい

  • 旅行の魅力に今一つピンと来ない

あらすじ

つまらないいつもの風景の中、突然カラスが言った。
「ヨコヤマさん。第一森林線が突破されました。すぐに帰還してください」
その一言から、《部外者》の僕の旅がはじまる――。

中央公論新社より

感想

  • 世の中の情報や人との接し方を考えさせられた

  • どこか流されて生きている主人公に共感

  • 読了後は旅行に行きたくなる?


主人公は、ある出来事がきっかけで「ニュースアレルギー」になってしまい、普段ニュースは見ないようにしていて世間の動きに疎いです。そこに喋るカラスがやってきます。カラスは何やら世間を騒がす問題についての情報を知っている様子。そこから、部外者であったはずの主人公が、その問題に向かっての旅をすることになります。


世の中の情報や人との接し方を考えさせられました。

ニュースなどで世の中の出来事を見る時は、部外者の立場として見る方、または当事者の立場として見る方がいるかと思います。本作を通じて、部外者か当事者かによって、世の中の情報や目の前にいる人たちとの接し方も変わると思いました。ニュースの見方は、気付かないうちに身近なものの見方に繋がっている可能性がある。自分はどのように見て、接しているのかを考えさせられました。

ただ、決して簡単なことではないと思います。部外者として一方的な口出しをするのも違うけど、当事者意識を持ち過ぎても疲れる。そのさじ加減は、自分で考えて判断することが大切だと思いました。それが自らの意志を持つこと、なのかな。

本作では、対立している2つの意見が出てきます。両者の意見はどちらも正しく間違っているわけではありません。読んだうえで、自分はどう思うか問われている気がしました。


「ニュースアレルギー」になってから、はっきりとした意志を持たず、どこか流されて生きていた主人公。僕も同じような感じなので、共感できる部分が多かったです。一瞬とぼけて誤魔化そうとする所は僕にもあるんですよね。
そんな主人公が、カラスとの出会いを通じて次第に変わっていきます。終盤の行動とカラスとのやり取りに、僕は感動していました。


僕はつい最近旅行に行ったのですが、そこで感じたことと本作の主人公が感じたことがリンクしているような気がしました。途中で主人公が「違う日本に迷い込んだみたい」と言っていますが、僕も同じようなことを考えていました。旅行の良さを改めて感じ、また旅行に行きたくなりました。

印象的なフレーズ

僕の中で旅とは、なにもかもを捨てなければ始められないものという印象があった。でも今の僕はきちんと有休を取ってなにひとつ捨てずに旅に出ている。旅というものについて、僕は壮大に考えすぎていたのかもしれない。生活の流れを断ち切らなくても自然に人生に組み込めるものなのだ、旅って。

『カラスは言った』

「半分可能性があるならね、ちゃんと探さないと。けっきょくはどんな情報もそうですから。本当かどうかは自分で確かめるしかない」

『カラスは言った』

「ひとの死が、ラーメンやパンケーキやイルミネーションよりも撮り残す価値がないように振る舞う人間のほうが、ボクからしたらどうかしている」

『カラスは言った』

きっと美味しさだけがごちそうの条件なのではなく、今対峙しているこのテーブル、カウンターの一角のすべての力が合わさってこそのこのごちそうなのだ。

『カラスは言った』

「誰かのことを信じるってことは、その誰かが自由に考えたり感じたり行動する能力があるってことを否定している。他人を信用しないっていうのは、他人の人格を認めることだ。信じないっていうのは、ひとに対する礼儀だと思うな」

『カラスは言った』

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