秋の声
線香花火の残像が
時に淡く
時に濃く
瞼の後ろで
繰り返される
冷たい風の月夜なのに
夏の名残が
私から去らない
---★---
聞こえてくるのは
耳鳴りなのか
虫の音なのか
耳を澄ませてみる
聞こえてくるのは
遠い声
胸の空洞を
通り抜けて
去って行く
声を聞くまで
空洞には
気づかずにいたのに
---★---
もういちど
耳を澄ませてみる
聞こえる気がして
呼ばれている気がして
もういちど
聞かせて
もういちど
聞きたい
だけど
もう
何も
聞こえない
胸に空洞を
抱えたまま
長い夜の中で
---★---
どこから?
どうして?
何を?
闇に浮かぶ疑問符
現と眠りの狭間で
闇に溶ける疑問符
呼んでいるのは
記憶の中の誰かのようで
これから出会う誰かのようで
知らない私自身のようで
---★---
長い夜が明ける
カーテンを
閉めたままでも
僅か2mmの隙間から
まっすぐに
胸に届く
胸に満ちる
秋の朝陽
---★---
梨
葡萄
無花果
朝が朝である内に
口に含む果実
つめたく
甘く
秋の果実で
夏の名残を
洗い流して
長袖の上着に袖を通して
お気に入りの靴を履いて
高い青空の下へ
金木犀の香りの中へ
この詩から、幾つかの歌が生まれました。nanaに投稿しています。
お目に掛かれて嬉しいです。またご縁がありますように。