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中学校国語科3年 フルICT 魯迅「故郷」

割引あり

このnoteについて

 このnoteは中学校国語科3年生の教科書に載っている、中国の作家「魯迅」による「故郷」の授業案を、1年次からしてきた授業内容を踏まえてゆるく紹介するやつです。中学校最後の長編物語なこの教材を、受験勉強モードに切り替わりつつあるこの時期の生徒に対して、どう展開していくのか。基本的にはこの単元の授業実践の紹介をしていきますが、一年次から持ち上がりで見てきたこの学年の授業の流れ(持っていき方)も間に入れていきたいと思います。というか最初はほぼそれです。

最初なので丁寧に書きました。次からはもうちょいざっくりいきます。結構長いので、目次見ながら飛ばして下さい。いや、全部見た方がわかりやすいです。途中の1・2年生の授業は、もしかしたら他のノートに移すかも。たぶん。書いてたら長くなってるので、時期に移します。

中学校のICT実践の記事、あんまりないんですよね。
小学校はよく見るけど・・・。

*画像は全て転載禁止です。


授業環境とこれまで(長くなります)

・ICT環境

生徒は一人一台iPad(第6世代)を使用(貸与)
授業アプリはロイロノートをベースとして使用
教員は校務用WindowsPCを使用
生徒教員全員にOffice365のアカウントが配布されています。
私はiPad無印+MacBookAir M1+ポケットWi-Fi+AnyCast(Wi-Fi投影)
教室には据え置きの短焦点スクリーンとプロジェクター



・1年の授業

 はじめに。
 ICTを活用した授業、協働的学習、個別最適な学び、主体的な学びなど、さまざまな教育ワードをあえて頻繁には出さずに、時系列になるべく沿って紹介していきます。

 1年生1回目の授業から資料はロイロノートで配布していました。小学校では十分に活用できていなかったため、操作説明をしながら進める状態。5月ごろにはほとんどの生徒は基本的な操作はできている状態になったように思います。
 デジタル教科書は採用していないので、教科予算で購入した教科書の端1cmを裁断機で切り、全ページをPDF化。それを授業ごとに配布しています。ファイルも購入せず、全てロイロノート(2年次からはOneDrive)に保存させました。そのおかげで、3年生でも、2年前の授業データを10秒で参照することができます。
 1学期中間テストまでは板書とロイロノートの二刀流で展開。左は黒板、右はスクリーンの形で、上手く資料の提示をしていました。今思えば、この段階では「ICTを用いた授業進行(〜のために使う)」だったように思います。「ノートを集めるため」「資料を配布・提示するため」に使うような、初級レベルの使い方が、ICT環境を活用する最初の方法としては有効だと感じています。


 1学期末の「竹取物語」から板書をやめ、チョークを置きました。
#かっこいい
#でも一部から非難されそう
#ちゃんと生徒はペンでも書いてます


 ここから、iPadを活用して「表現する」活動を授業に組み込んでいきました。各単元ごとにパフォーマンス課題を設定し、ルーブリックを元に相互評価・相互参照しながら授業を進めていきます。竹取物語の授業では「6人目の貴公子を作ろう」という創作活動をしました。当時はCanvaを知らず、PDFデータ中心で授業を進めていましたが、今ならもっと色々できるなと思います。この授業についてはまたまとめていきます。

 国語の教科書は単元と単元の間に「授業を経て得た力を活用して取り組む単元(正式な言い方があったと思う)」が設定されています。この小単元(話す・聴く・書くがメイン)は時数の関係で飛ばされがちです。めちゃくちゃ勿体無いんですよ、ほんまに。この小単元こそ「協働的な学習」をICTベースで取り組ませるのに最適なんやってマクドの女子高生が語ってました。

 例えば、光村「『言葉』をもつ鳥、シジュウカラ」では、文章の構成や根拠を強める方法を学び、次に「思考のレッスン『原因と結果』」という小単元が設定されています。ここでは原因と結果の関わりを考え、「根拠を示して説明しよう」という書く活動に繋がっていきます。活動の詳細はここでは割愛しますが、ロイロノートでアンケートを作成し、Pagesを使ってレポートとしてまとめさせました。ここで初めて純正アプリ(Keynote,Pages)の使用方法について学び、今後の表現課題に取り組むツールの選択肢を増やすことができます。

 また、1年生4月から2年生3月まで「朝日小学生・中高生新聞 デジタル版」を導入していました。

 小学生版は平日毎日更新、中高生版はまとめて月曜日に更新されます。この新聞で挙げられるトピックについて毎授業の最初五分で触れ、「知らないことを知る」という活動を習慣化させました。これは大前提として、私が「薄く広く知識を持つ」ことが好きでジャンル問わず情報を収集していたからこそできた活動だと思っています。私の知識が浅くとも、ふわっと話を終えておけばあとは気になった生徒は自分で調べます。

 2学期からは「『不便』の価値を見つめ直す」で新たな視点から商品やサービスを開発・提供している「スタートアップ企業」の存在を紹介し、「全員が違う内容のスライド資料を作る」活動に取り組みます。この頃から、「NewsPicks」の記事を生徒に紹介するようになりました。

 特に活用したのが、「伝書鳩TV」。世界の経済やスタートアップ企業を投資家やレポーターが紹介。コミカルな語り口と、基本的に海外スタートアップ企業を紹介するため英語での表現が多いのが特徴です。残念ながら現在は番組終了…突然終わってしまったのがショックで、去年生徒と一緒に惜しんでいました…アーカイブはまだ見れます!帰ってきて!!!!!

 1年生最後の長編物語「少年の日の思い出」ではロイロノートの「シンキングツール」をフル活用した授業を展開。

 授業の展開を「プロット図」で1コマ目に示し、見通しを立てて授業に臨む。物語読解に必要な要素を全て詰め込み、全ての手順をツールを用いて進めていきました。この授業についても、またまとめますが、「ICTを活用した物語読解」の好例となりました。

 こんな感じで「新しい知識を得ることは楽しい」「自分で考えて、自分で調べて、自分でまとめることは意味のあることだ」という意識を持たせ続けたのが1年生の授業でした。長くなった…


・2年の授業

 物語「アイスプラネット」はそこそこに…市内の国語研でも発表した「枕草子」の授業が5月から始まりました。この単元は、過去にしてきた授業のICTリメイクも含め、授業案を考えました。大切にしたことは「パフォーマンス課題の設定」「教科横断的な学びの実現」「言語表現を大切にする」の3つです。これも内容は割愛しますが(絶対まとめます)、簡単な流れだけ説明します。

 1〜3コマ目で基礎知識と内容の把握理解を反転授業形式で進めます。ここをスピーディに進められると、課題に取り組む時間が増えます。
 4・5コマ目で「冬はつとめて」の内容を受けて社会科内容まで拡大した学習をし、当時の生活環境や価値観を学びます。
 6〜8コマ目で定番「わたしの『をかし』」をICTリメイクした活動。
 PowerPointでまとめ、Teamsで提出させました。
 9コマ目から「清少納言、現世に降臨」として、清少納言の価値観や言葉づかいを大切にしつつ、現代版の表現にアレンジする表現活動をしました。自ら撮った写真を用いて作成することで、「表現」にこだわることができました。

生徒作品
テンプレートは自作しました。
この景色を見た清少納言がどう言葉を紡ぐのか。
「1日にさよならする」「街を光と影に分けて」
おしゃれな表現使いますね。

 この授業は生徒たちも本当に楽しんでくれました。やってよかった。

 「クマゼミ増加の原因を探る」で説得力ある文章構造を学び、同時にグラフやデータの有用性についても学習しました。それを踏まえて取り組んだ「モアイは語るー地球の未来ー」という単元。これも生徒がいまだに「楽しかった」と思い出話ができるほどの授業になりました。(これもまた別でまとめます)
 説明的文章の読解はこれまで方法含め伝えてきたので、事前課題として基本的なもの(構造や主題など)は取りくませておき、筆者の「有限な資源を効率よく使うべき」と言う主張を深めていく活動にほとんどの時間を割きました。
 「有限な資源とは」「今どんな問題が起こっているのか」「その解決方法は」「世界のスタートアップ企業は何をしているのか」を個人⇔グループ⇔クラス全体を行き来しながら考え、最終的には全員が違う取り組みについて発表し、相互評価をするという授業になりました。

タイトルでもうすごいのわかる
画面共有しながらプレゼン。
データがいかに説得力を高めるのか、授業で学んだことをいかせています。
発表環境を事前に伝えておくことで、資料の作り方が変わってきます。
文字の大きさ、アニメーションの有無など。

  この授業から、「自分で調べてまとめたことを共有すると、より考えが深まること」「まとめる(スライドを作る)上で意識すべきこと」「自分たちが受けている国語の授業は『国語』だけを考えているのではないこと」に生徒たちは気づき、振り返りに書いてくれました。

相互評価シートを持ってプレゼンを聞く。
基本は4〜5人班です。

  平家物語・論語と続いて、「君は最後の晩餐を知っているか」の授業では「『説得力』ある伝え方をマスターする」というめあてで進めました。

毎回Canvaで単元ポスターを作ってます。
近大附属小学校の先生の実践を参考にしています。
Canvaの編集リンクです。
Canva触ったことない人は、一度見てみてください。

 この授業では「ジグソー法」を取り入れ、個人で読み深めていく力と相互参照して学びを深めていく活動を多く取り入れました。

 レベルを均等に4つ程度(班の人数分)に分けることができる課題では特にこの方法が有効的で、この授業後多くの場面で取り入れるようになりました。ルールは「全員の意見を必ず聞く(見る)」「他者の良い部分を全て自分の資料に加えること」の二つを設定しています。
 エキスパート活動のあとは自分の班に戻り資料を共有するので、自分の資料をより良いものにすることが、その後のグループの学びにつながります。
実践して感じたメリットは、
①一人で課題に取り組むことが難しい生徒を置いていかない。
②回数を重ねるごとに、資料のクオリティが格段に上がる。
③「課題が解決できれば出力はなんでもいい」が学びを変えた。
の3つです。③についてはまたまとめます。

5000字超えてしまった。

 2年最後の「走れメロス」ではブックトレーラーを作りました。でもこの実践はまた今度まとめます。大体伝わったと思ってます。



・3年の授業

 そんなこんなで、ICT使いながら「相互参照」「共同編集」「相互評価」というクラウド型学習のいいとこを惜しみなく生徒に伝えてきました。

 ICTを活用した授業で大切にしていることは

「この授業で何を学んで欲しいからこの活動をするのか」を先に伝える

 ことです。ICT活用(新しい活動や他の教科と違う学び方をすること)が目的ではなく、この活動をすることでどんな学びがあるのか、それがあなたたちの力にどう作用するのか。なぜICTベースの授業を進めているのか。自分が学んでいることも全て話しています。
 「あなたたちとだからできるんだ。」というメッセージを伝えないと、生徒との信頼関係は生まれず、余計な指導が増えたり、意味のない行動をする生徒が増えるように思います。

 さて、3年生の授業はルロイ修道士の「握手」から始まり、論語と俳句を挟んでこの「故郷」に辿り着きました。もちろん全ての授業でICTてんこ盛りなのですが、ちょっと力尽きたので先に「故郷」のお話をまとめます。


 やっとこさ「故郷」の話ができます。すでに疲れてます。本題なのでここからは細かく紹介していきます。

授業構成

全8コマ想定(調整含め実際は9コマ使用)
〈この授業は夏休み明けの8月末から開始しました。〉

0コマ目:夏休みの間に「現代日本社会の問題についての意識調査」と題したアンケートを配布し、回答してもらっておく。(夏の課題の一つにした)
1コマ目:授業ポスター(授業のめあてやストーリーを載せており、毎単元発行)を配布。アンケート結果のグラフを確認し、各項目について班でディスカッション。
2コマ目:「現代日本の社会問題を知り、現状を把握する」現代日本社会の問題を座標軸を用いて班で分類していく。一人一つ問題をピックアップし、内容と日本での事例をまとめる。(課題)
3コマ目:まとめたレポートの共有。「音読を聞いてストーリーを理解する。」初読の感想(400字以上、課題)
4コマ目:「『故郷』を読み解くためには何をする?」読み解くのに必要な手順[主に人物像(人物設定)の把握、人物相関図、場面構成(ストーリー展開)]を班で考え、好きな方法でまとめていく。(課題)
5コマ目:課題を元にジグソー活動(多人数ver)ストーリーの把握をしたのち、「物語や作者の背景を知る」ために必要な手順を班で考え、好きな方法でまとめていく。(課題)
6コマ目:課題を元にジグソー活動(少人数ver)背景を把握したのち、物語中から抜き出した9つのエピソードを元に、主人公たちが暮らす国の状況や生活環境における問題点をそれぞれのエピソードから挙げ、現代日本との比較をする(課題)
7コマ目:課題を元に、現代日本と1920年代中国との相違点について班でディスカッションする。その後社会科で同時並行で学んでいる「平等権・自由権」について、この物語を通して感じたことを自身の意見としてまとめる(課題)
8コマ目:現代日本社会の問題を改めて考え、「日本がこの問題を解決するにはどうすればいいのか。具体的な方策を考えてみる。」という最終パフォーマンス課題に取り組む。(パワーポイント・Wordなど、課題)
9コマ目:各班での発表。相互評価のためのルーブリックを用いる。自宅で発表動画(音声吹き込みあり)を作成し、Teamsに提出する。

 といった内容です。

 細かく紹介します。




0コマ目:夏休みの間に「現代日本社会の問題についての意識調査」と題したアンケートを配布し、回答してもらっておく。(夏の課題の一つにした)

Formsでもなんでも、最近は自動でグラフ出るからいいよね

 このアンケートでは、他にもいくつかの質問をしていましたが、メインはこの項目です。

次回の授業内容に関わるアンケートを事前に取っておく。

は、僕が割と使う技です。意識づけができるのと同時に、どの活動がどの生徒に合っているのか、個別の回答を参考にして「個別最適な学び」に繋げることができます。適当に回答していることがあったりと、万能ではないので使い方は環境に応じてになると思います。アンケート取るのがしんどいとこもある気がします。

 「環境問題」に関心が集まっているのは、先に紹介した🗿の授業の影響です。教育の格差は…普段から給料の話してるからですかね。笑

1コマ目:授業ポスター(授業のめあてやストーリーを載せており、毎単元発行)を配布。アンケート結果のグラフを確認し、各項目について班でディスカッション。

 授業ポスターは、めあてや授業の流れを一目で認識できるのでおすすめです。よく「○○中スタンダード」みたいなものに「めあての提示」ってありますよね。当たり前を共有しよう!まずはここから!みたいなものはいいんですが、ずっと掲示してたり、毎年言ってたり。いいんですけどね。
 近大附属小学校のある教室では、これを掲示していました。複数教科分あったような気がします。Canvaなら可愛く作れます。

背景イラストは、CanvaのMojo AIで作成しました。
あれ楽しいですよね。

 授業全体の見通しを立てることは、パフォーマンス課題を盛り込んだ授業では必須です。もちろんどの授業でも大事ですが。最終的にどんな形で「パフォーマンス」を披露するのか伝えておくことで、授業に対する意識が格段に変わりました。

 さて、アンケート結果を参照しながらグループディスカッションをしていきます。指示は「各項目についてキーワードを2〜3つ挙げる」「次の授業は『現代日本の社会問題』について学ぶことを意識する」「振り返りを書くために、常に話し合った内容はメモをとっておく」の3つです。
 1つの項目につきディスカッション4分、全体共有4分で進めていきます。いくつかの班を指名し、ディスカッション内容を共有し、それに対して私がコメントをしていく形です。
 この授業のめあては「現代日本の社会問題について現状を把握する」としたので、振り返りもめあてに沿って書くことを伝えます。
 この単元の振り返りは文章表現の学習もかねて「400字以上」で設定しています。クラスによって挙がる話題は違うので、振り返りもクラスの色が出て面白いです。

違うクラスの生徒です。
面白い観点で書いてきてくれるので、授業で取り上げリアクションします。


2コマ目
:「現代日本の社会問題を知り、現状を把握する」現代日本社会の問題を座標軸を用いて班で分類していく。一人一つ問題をピックアップし、内容と日本での事例をまとめる。(課題) 

いくつかの実践を参考にして、ロイロノートで作成

 前回ディスカッションした内容も含め、少し多めに社会問題を挙げました。「故郷」を読みながら、「この問題は日本でもあるな。」など、相違点を意識できるよう、薄く広く現状を把握することを目的として授業を進めます。指示は「4人班で全てのカードを分類していく」「わからない問題については調べて共有する」だけです。途中で一度止め「緊急度が高い・影響範囲が広い、とはどのような状況なのか」と聞き、改めて分類しなおさせました。ここでのポイントは、

「問題を自分ごとにさせる」

ことです。

調べたらある程度の情報はあります。緊急度を調べることもできます。しかし、その軸の概念から考えさせることで、自分の周りではどうか、国としては、地元はどうか、などを含め再考することができました。

この授業での振り返り

 もちろん、全員がこのような気づきを持つことができているわけではないですが、「学びに向かう力」を養えているように思います。

令和五年度 小・中学校指導主事等連絡協議会資料(中学校国語部会資料)より

 この活動でほとんどの生徒が「現代日本の社会問題はこんなにもあるのか」と感じたようで、振り返りは「日本やばいのでは」というネガティブな感情が並んでいました。笑 ただ適当に誤魔化すのではなく、「次の時間で解説するね」と伝え、予算のことや政府と企業の取り組みについて軽く説明しました。
 この活動は1時間で終わるクラスは無く、共有は次の時間の最初に残しました。課題は「班で4つ選び、担当を決めてまとめてくる」という内容。指示は「問題内容と日本での事例を書く」「グラフなどの資料を添付する」の二点です。提出は次回の授業までとしました。

「次回授業がある日の朝8時50分までに提出する」

のスタイル(反転授業的な)を1年生から続けてきたことは本当に良かった。家庭課題の確認→共有→本時の活動→振り返りを一連の流れとして、授業内では共有の時間を多く取ることができました。


3コマ目:まとめたレポートの共有。「音読を聞いてストーリーを理解する。」初読の感想(400字以上、課題)

 課題としていたレポートを共有する。7コマ目以降でまた活用するので、ここではあまり深く考察はせずに共有のみにとどめておきます。

Pagesやロイロノートでまとめています。
どんなアプリを使ってもいい。
どんなグラフを引用してもいい。

 ここで「このまとめは見やすい。」「このグラフは何を示しているの?」といった感想が出ます。PadletやCanvaならコメントできるのになあと思います。まだできてません…

 そのあとはYoutubeの音読動画を用いて範読を聞かせます。1年から一貫して、範読中に漢字の聞き取り+わからない単語のチェック→初読の感想と意味調べをセットにしています。一年では意味調べシートも配布していました。


4コマ目:「『故郷』を読み解くためには何をする?」読み解くのに必要な手順[主に人物像(人物設定)の把握、人物相関図、場面構成(ストーリー展開)]を班で考え、好きな方法でまとめていく。(課題)

 初読の感想を共有したのち、物語読解に入ります。ここでも、目的を共有しておくことが大切。
 
 単元(活動)の最初にはめあてを提示する。

 当たり前のようで、疎かになっているような気もします。

 「故郷」の物語を読み解くことで、物語内で語られている(魯迅が伝えようとした)「社会問題」が見えてくることを、生徒に伝えた上で読解を進めていく必要があります。

 さて、生徒たちは手順を考えるにあたって、過去の授業内容を思い出します。そこで活用できるのが、1・2年次のノートです。

 過去の授業データは全てロイロノートに残っています。
 しかも、10秒で振り返ることができる。

 これがまさに「クラウド型授業」の強みです。いつでも過去の学びを振り返ることができる環境は、学びを積み重ねることが苦手な生徒にとっても有効な手立てとなります。
 「段落わけ」「登場人物の把握」「人物像」「人物相関図」「心情グラフ」「物語背景」「主題」などを挙げ、各班で必要な項目に取り組みます。分担して取り組むのですが、方法はさまざまです。シンキングツールを使う班もあれば、ひたすら教科書を見て話こむ生徒も。
 自分で取り組むことが難しい生徒も、過去のデータが残っているので、方法を振り返ることができます。ノートやメモをとっていなかったり、当時長欠生徒だった!みたいな場合でも、提出箱を共有しているので他の生徒の成果物を確認することができ、取り組みに対するハードルが下がります。それでも難しい場合は「〇〇分間の先生アドバイスタイム」を設け、数人にだけ対応します。

 途中で全体に対して声かけをしながら、最終的に「場面展開」「人物像」「人物相関図」「+α」の4つを分担して進めていくように伝え、家庭での課題とします。これも次の授業日の朝8字50分までの提出期限としています。

「全員同じ」にならない提出箱
素敵やん?ていつも思います。

5コマ目:課題を元にジグソー活動(多人数ver)ストーリーの把握をしたのち、「物語や作者の背景を知る」ために必要な手順を班で考え、好きな方法でまとめていく。(課題)

 提出した課題ごと(4つ)に別れてエキスパート活動に移ります。

 エキスパート法のメリットは上の方に書いています。(今のところ)
 ここでの目的は「考えを深めること」「班共有するクオリティに達していない生徒を引き上げること」の二つです。いくら各自の意識が高まっていても、できないものはできないし、やらない生徒はやりません。開いてる店は開いてるけど閉まってる店はしまってるんよ。(ちょっと違う)

 クオリティを高めた資料を手にして、班に戻り共有します。他のメンバーは知らない(考えていない)項目を伝えることになるので気合いが入ります。エキスパートの時間が有意義になればなるほど、「自分の言葉」で伝えることができます。ここまできても不十分な資料しか手にしていない生徒もいます。ですので、必ず良くなった資料も提出させ、班での共有説明が終われば全員に共有します。班内での共有が不十分だった項目を補完するためにも、数人の手本となる資料を紹介しておきます。

 大体この内容を他の先生に伝えると「ウチではできへんわあ」「それは落ち着いてるからやろ」と言われます。
 
 ええ、その通りです。

 各校の実情に応じた授業展開をすべきですし、どの学校でも使える授業案(全てをトレースするレベル)はありません。この状況を作り上げたのは自分ですし、この学校に配属され、この学年を担当することができた自分にしか再現できない授業です。もちろん全てを再現することはできなくとも、エッセンスを抽出して活かすことはできます。

 話を戻して。次は「物語や作者の背景を知る」活動です。ここも同じように班で考えさせますが、少し難しい。過去に「大人になれなかった弟たちへ」で物語背景を学ぶ取り組みはしましたが、もう少しレベルの高い活動になってしまいます。少しでも自分たちで進めることができるようにここで再度確認します。「『故郷』と現代日本の問題を紐付けて考える」というめあてを達成するためにはどのような情報が必要か。現代日本の社会問題と比較するためには、中国の社会問題(当時)を知る必要があります。

 ここに辿り着けば「その時代の衣食住」「社会体制」「魯迅の暮らしと思想」を知る必要性に気づいてくれました。(気づくのもすごい)

 一応お伝えしておきますが、結構ヒントは出してます。授業中に。

 どう考えるか、答えは言わないけどヒントは出し続ける。その時間は前を向かずに同じ資料を手にしたメンバーと顔を向かい合わせています。「ふーん」で終わらずに、「ということはこんなことを調べるべき?」が簡単に言い合える環境を常に作ルコとを意識しています。授業中に「はい!前向いて!」みたいな指示はあんまり出しません。
 この課題も、授業で終わらない分は家庭の課題です。
 課題多いなあ・・・そこは僕の課題ですね。しんどいと思う。

「くお」(かわいい)
生徒の振り返りが自分の授業へのフィードバックにもなる。
ありがたい限りです。

6コマ目:課題を元にジグソー活動(少人数ver)背景を把握したのち、物語中から抜き出した9つのエピソードを元に、主人公たちが暮らす国の状況や生活環境における問題点をそれぞれのエピソードから挙げ、現代日本との比較をする(課題)

 前時と同じようにエキスパート活動のあと班での共有。この流れはあまり苦に思わないようで、何時間目であろうがほとんどの生徒が意欲的に取り組んでくれます。なんでやろ。簡単なんか、自信につながるのか。またアンケートとって聞いてみます。

 さて、ここからは「故郷」で語られる社会問題に踏み込んでいきます。魯迅の生きてきた環境や想い、当時の中国での暮らしなどを学んだ上で、本文中から9つのエピソードを取り上げ、その部分について班で考察します。共有ノートに各班の考察カードを作成し、3日間で自分の意見や考察を書き込み、次の授業で再度共有し意見交流をします。

 この活動が少し失敗、というか上手くいかなかった!

9つのシーン

 考察と議論の2パターンで作成しましたが、伝え方が不十分で生徒の準備が足らず。これまで学んできたことの整理と、ここから見えてくる社会問題について話合わせるつもりが、再度同じようなまとめを作ってくる生徒が多数・・・。共有ノートにしたので他の人の意見を見ることができる課題設定。「できる生徒」が先に投稿して、以下同文的内容が続く・・・。
 共有の仕方は本当に毎度考えさせられます。実際の話をすると、共有するかしないか、名前を出して共有するか名無しにするかなど、考える時間はほぼないんですよね。瞬間的に「よし、共有しよう」となることも多く、その場での判断になります。

 どちらにせよ、ここから日本との比較に入るので「この物語で語られている(魯迅が伝えたい)問題はこれだ!」が言えたらOKくらいに目標を据えました。

この下はもう少ししたら書き上がります。
まとめる前に公開してみてリアクションを見たくなりました。笑
 

ここから先は

1,072字

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