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#33 人を褒めるときのコツ - 解決志向アプローチ -

ここでは、「解決志向アプローチ」の考え方について、一緒に学んでいきたいと思います。前回の記事では、人を褒めるとき、「自分には力がある」と相手が思えるような褒め方をすることが大切であるということを一緒にみてきました。

相手が「自分には力があるんだ」と思えるような褒め方をするためにはどうすればいいか? ここでは、具体的な「褒め方」のコツを2つ紹介していきたいと思います。


相手の「強み」を褒める

まず、「自分には力があるんだ」と思えるような褒め方として、相手の中にある「強み」を褒めるというやり方があります。人は「あるもの」にフォーカスすると「自分もできるんじゃないか」という自己効力感が高まってきます。また、ある学校内で行われた研究では、先生が生徒の「強み」を見つけて伝えていくことは、生徒の高い自発的なモチベーションに関連したという報告もあります。人をエンパワーするためには、その人の中にある「強み」を見出し、それを言及していくことが、とても有効なんです。

人は自分の「強み」について言及されるとエンパワーされる

具体的な行動について言及する

相手の「強み」を褒めていく際、ちょっとしたコツがあります。それは、相手の「具体的な行動」について言及し、最後に「〇〇する力」に変換することです。例えば、「君は明るいよね」など、抽象的な言葉で言われても、相手はいまいちピンとこなかったり、「明るい」や「優しい」など、ありふれた形容詞では特別感がなく、あまりインパクトがなかったりします。そのため、「明るいよね」などの抽象的な言葉を使うのではなく、「いつも笑顔で挨拶してくれるよね」など、まず、相手の「具体的な行動」について言及します。そして、その具体的な行動を「〇〇する力」という言葉でまとめると、その人ならではの「強み」の名前になり、特別感が出て、インパクトがでてきます。

例えば、「思いやりがあるよね」と褒めるのではなく、

「一人で困っている人に声をかけに行ってくれていたね」(← 具体的な行動)

「君には、そうやって一人の人のために行動できる力があるよね」(←「〇〇する力」に変換)

という形で褒めると、「思いやりがある」よりもパーソナライズされて、「自分にしか持っていないもの」という感じが出て、よりエンパワーされますよね。

因みに、この「〇〇する力がある」という形でまとめちゃうと、無限に「強み」の名前が作れます。一人の人間の中に「強み」はいくつもありますんで、ぜひ、お子さんや生徒さん、部下の方の行動を丁寧に観察して、さまざまな「強み」を見つけて、伝えてほしいなと思います。

プロセスを伺って感心する

次に紹介したいコツは、相手が行ったプロセスを伺って、間接的に褒めるというやり方です。先程の「強みを褒める」というやり方は、「君には〇〇する力があるね」と直接的に褒めていました。一方、このやり方は、相手がうまくいったことに対して、「どうやったの?」とプロセスを丁寧に伺っていき、「へ〜、そういうことをやってきたんだね」「私にはできないわ、それ」と感心することで、相手に「自分には力があるんだ」と思えるようにしていく間接的な褒め方です。

皆さんも想像してみてほしいんですが、何かを成し遂げたとき、「どうやったの?」と相手から好奇心をもって聞かれると、単純に嬉しいですよね。そして、「へ〜、そんなことやってきたんだ」「それ、自分で考えついたの?へ〜、よく考えついたね〜」と感心されると「自分にはそういうことができる力があるんだ」って、エンパワーされると思うんです。

この「プロセスを伺い、感心する」という間接的な褒め方は、特に思春期のお子さん自己批判が強い人など、直接的に褒めてもなかなか受け入れられない場合に、めちゃくちゃ力を発揮します。ぜひ、お子さんや生徒さん、部下の方が次回、うまくいったことがあれば、好奇心をもって、「どうやったの?」と丁寧に伺ってみてほしいなと思います。

さて、ここでは「自分には力があるんだ」と相手が思えるような褒め方のコツを2つ紹介させていただきました。この2つとも、相手のことを丁寧に観察したり、お話を丁寧に聴いたりしないとできないものです。そういった意味で、今回、「褒め方のコツ」を紹介するというお話でしたが、根本的なところで、相手に興味関心をもつことが実は最も大切なことかもしれないなと、これを書きながら思いました。ぜひ、そのことも大切にされてみてください。

次回の記事では、そもそもポジティブ心理学や解決志向アプローチはなぜ「褒めること」を大事にするのかということについて一緒にみていきたいと思います。(つづく)

【参考文献】
De Jong, P. and Berg, I. K. (2012). Interviewing for Solutions. 4nd Edition, Brooks Cole, Pacific Grove, CA, 152.

Govindji, R., & Linley, P. A. (2007). Strengths use, self-concordance and well-being: Implications for strengths coaching and coaching psychologists. International Coaching Psychology Review, 2(2), 143–153.

Quinlan, D., Vella-Brodrick, D.A., Gray, A. et al. (2019). Teachers matter: Student outcomes following a strengths intervention are mediated by teacher strengths spotting. Journal of Happiness Studies. 20, 2507–2523.

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