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#20「人間関係」の中に意味がある - ポジティブ心理学 -

この記事では「Good Life(よい人生)」とは何かについて、一緒に学んでいきたいと思います。前回の記事では、多くの人が「よい人生」とは幸せな人生、もしくは、意味のある人生のことであり、そのような人生を送りたいと回答したというお話でした。

ここでは、これら二つのよい人生を送るために必要な「人間関係」について、いくつか面白い研究を一緒にみていきたいと思います。

温かく親密な人間関係が人を幸せにする

まずは「幸せな人生」からいきましょう。幸せな人生について、1938年から米国ハーバード大学が85年以上にわたり続ける「成人発達研究」という研究があります。これは米国の約700人の人たちをずーっと追いかけて、人の幸せや健康に最も強く関連しているものは何かを調べ続けている研究なんですが、85年以上ってすごいですよね。最初は約700人から始まりましたが、その配偶者や産まれた子どもも含まれるようになり、今では約2,600人を追っかけているようです。この研究の対象者は、ボストンの貧困層の住人からハーバード大卒のお金持ちまで、さまざまな社会的・経済的地位の人たちを対象にしています。そのため、年収や学歴など、幸せに関連しそうな項目をちゃんと調べることができるわけなんですが、この研究で明らかになってきたことは、人の幸福感に最も関連していたのは、地位でもお金でもなく「人間関係」だったということです。そして、ポイントが「数」ではなく「質」ということで、その親密な人間関係において、どれだけ「守られている」という感覚があるかが一つのポイントとのことでした。やはり社会的生き物である僕たち人間は、人との深い繋がりの中で幸せを感じるようです。この研究に関して、現プロジェクトリーダーのロバート・ウォールディンガー先生がTEDトークや著書で詳しく語っていますんで、ご興味ある方はぜひご覧ください。

人は人間関係の中で意味を見出す

次に、「意味のある人生」についてみていきましょう。これは、2014年に発表された米国の大学生を対象にした研究になりますが、研究チームは学生たちに「自分の人生に意味を与えてくれるもの」の写真を約10枚撮って、なんでそれが意味があるのかを説明してよ、というアクティビティをやってもらい、それが人生の意味を深めてくれるものになるかどうかの実験をしました。結果、このアクティビティによって、人生の意味が深まったわけなんですが、学生たちが撮ってきた写真、どんな写真が多かったと思いますか?彼らの撮ってきた写真で最も多かったのは、家族や友人、恋人などの「人間関係」に関する写真でした。(実に89.5%が「人間関係」の写真で、その次が「趣味」、「自然」と続きました)このアクティビティ、僕もフィリピン大学の学生たちにやるんですけど、同じように人間関係に関する写真を撮ってくる子たちがほとんどです。人間ってやっぱり、人間関係の中で意味を見出すものなんですね。厄介なことも多いですが、それでも僕たちは人間関係の中で意味を感じながら、よく生きていくことができるんでしょう。

因みに、「人間関係の中に意味がある」という言葉で個人的に思い出されるのが、日本にいるときに訪問支援で関わっていたひきこもりの青年たちです。彼らは長い時間、部屋の中で、一人ぼっちで過ごすことが多く、どうしても「こんな人生、意味なんてあるんだろうか?」と考えてしまい、一生懸命、その意味を探そうとするんですが、人との関わりがないがために、なかなか見つけることができずに苦しんでいました。そのような姿を見てきているからこそ、「人間関係の中に意味がある」って、本当に真理に近いような気がしてしまいます。

人生を価値あるものにするのは何か?

さて、ここまで、「よい人生(幸せな人生、そして意味のある人生)」を送るために大切な「人間関係」についてみてきました。実はこのことについて、ポジティブ心理学の草分け的存在である、故クリストファー・ピーターソン先生(ミシガン大学心理学部教授)は生前、ポジティブ心理学について質問されたときに、こんなことを言っていました。その質問とは「ポジティブ心理学とは何ですか?」つまり、「人生を価値あるものにするのは何ですか?」という質問なんですが、彼はその質問に対して「ポジティブ心理学は3つの言葉で集約することができる」と述べます。それがこちらの言葉です。

Other people matter. Period. - Dr. Christoper Peterson
他者が重要である、以上。 - クリストファー・ピーターソン

人生を価値あるものにするのは、まさしく「他者の存在である」と彼は述べていたんです。(こちらが実際のインタビューです)

温かい親密な人間関係を築いていくことは人を幸せにし、人生に意味を与えてくれるものになります。「誰といるときに、”守られている” と感じるのか?」「一人ひとりがどんな意味を自分の人生に与えてくれているのか?」などなど、ぜひ、一度立ち止まって、自分の周りにいる人たちとの関係性を振り返ってみてください。きっと、そこに「よい人生」を歩むためのヒントがあるんじゃないかなと思います。

さて、ここでは「人間関係」に着目しながら、2つの「よい人生」について、一緒に学んできました。次回の記事では、「多くの人がこの2つの人生を ”よい人生” って言っているけど、これ以外にもあるんじゃないの?」ということについて、お話していきたいと思います。最近、注目を集める第三の「よい人生」について、一緒に学んでいきましょう。(つづく)

【参考文献】
Park, N., Oates, S., & Schwarzer, R. (2013). Christopher Peterson: "Other people matter": 1950–2012. Applied Psychology: Health and Well-Being, 5(1), 1–4.

Steger, M. F., Shim, Y., Barenz, J., Shin J. Y. (2014). Through the windows of the soul: A pilot study using photography to enhance meaning in life. Journal of Contextual Behavioral Science, 3(1), 27-30.

Waldinger, R., & Schulz, M. (2023). The good life: Lessons from the world's longest scientific study of happiness. Simon & Schuster.

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