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コエノミ



─スジナシですか? ん?アドリブ?どういうこと?─


─また攻めたことしますねぇ。─


  そう言う二人の役者がいる。『スジナシ』。それは、落語家の笑福亭鶴瓶がゲストを迎えて即興ドラマを繰り広げる番組である。その番組に出たいと思う業界人は少なくはない。


しかし。とある地方のとある放送局には、そんな豪華なセットや、ましてや知名度のある役者は呼べるはずもない。…という事で。




「よろしくお願いいたします。」

「お願いいたします。」

「…うわ、本当にご挨拶だけなんだ。」

「やべぇ。待って。今になって喉 乾いてきた。」



“ 即興ラジオドラマ ” 収録まで

5秒前…4、3、2、1… (キュー)。



○黒電話が鳴る


※この即興ラジオドラマは、即興なので登場する団体や企業名などはすべて、その場の思い付きによるフィクションです。


○まだ黒電話が鳴っている。

○アクター・やっと出る

「うるさい!」

○すぐに切ってしまう。

○受け手のアクター・さぁ どう出る、チッとしながらも

「こっちがうるせえよ。毎朝毎朝、リンリン、リンリン。」

○この一言で、効果音は目覚まし時計と判明。

「うぐ。」

「知らねぇぞ。」

「うぐ。」

「起こしたからな。」

「うぐんー!」

「なんだ?」

「瞑想中…(多分、まぶたは閉じたまま)」

「は?」

「瞑想をするふりをして、もう少し寝る朝…」

「知らねぇかんな! …寝起き、殴られたボクサーか。 あ、イテっ、」

○多分、殴るか蹴るかをしたと思われる

○アクター・ようやく目覚めてきたと思われる

「 お母さんは?」

「もう帰ったよ。」

「どこに?」

「まだ寝ぼけてんのかよ。」

「おばさんの所かもしんないじゃん。」

「早く起きろ。」

「起きてんじゃん、」

「起き上がれ。」

「うるさいな、」

「蹴るな。」

「蹴ってない。ちょっと御御足(おみ足)が長いだけ、」

「自分でおみ足とか言うな。」

「細かいなぁ。あんた、そういうところ本当お父さんに似てきたね。」

「おい、マジでやめろ。 俺もそろそろ行くわ。」

「行くって、どこへ?」

「仕事に決まってんじゃん。」

「あんた、今 無職なのに?」

「・・・。聞いていたのかよ。昨夜の話。」

「だから眠い、」

○アクター・あくび。

「全く…」

「それはこっちの台詞だよ。」

「情けない。」

「なにが?」

「なにがって、」

「起きてしまったことは仕方ないじゃん。いろいろあるよ。どの道を歩いたって。いろいろある。」

「 …。」

「あんたさえ良かったら、ここで一緒に暮らしてもいいんだかんね。」

「そんなこと出来ねぇよ。」

「なんで?」

「だって。…恋人に悪いし。」

「あのねぇ。私のこの部屋をみて、どこに恋人がいると感じる?」

「全く感じない。」

「ならば、私に言わせるな。」

「でもさ。」

「あんたさえ良かったらって、言っているだけ。」

○アクター・勢い良く起き上がったと思われる

「ただ言っておくよ。変なこと考えるくらいなら、姉のすね、かじりな。」

「お姉ちゃん…。」

「おっ。久々に聞いた。お姉ちゃんって。」

「うるせえ。」

「もう一回、言ってみ。」

「うるせぇ。」

「照れるな。妹。」

「おい、弟だ。」

「どっちでもいいよぉ。お腹すいた、和子。」

「よしあきだ。どっから出てきたんだよ。」

「エッグベネディクトが食べたい。もしくは、ビーフストロガノフ。」

「朝から食の振り幅どうなってんだよ。貴婦人か。」

「貴婦人じゃないわ。」

「知ってるわ。蹴るな。だから、その足で。」

「ごめん、わざと。」

「腹立つわぁ。」

「なんか作れ、居候。」

「まだ住むなんて言ってねえ」

「素直じゃないんだから。」

○アクターを動きを付ける。

「 …あ。なんだ。あるじゃん。ご飯。」

「おふくろが。作っていった。」

「親だね。」

「朝 四時から。」

「なんでそんな早くから?」

「買い出しに駆り出された。」

「お正月? 籠城? なによ。この量…」

「冷蔵庫みてみろよ。もっとすげぇぞ。お姉ちゃんの為に。」

○冷蔵庫の扉を開ける音と、思われる音

「うわ…ぎっしり。」

「作り置きばっかり。」

「親だね。」

「親だ。」

「なにこれ。プロテイン入れるボトルにきゅうりの漬け物入ってんじゃん!」

「それ、俺 めっちゃ止めたんだぜ。」

「もっと強く止めてよ。匂いつくじゃん、さいあく。」

「プロテイン飲むくらいなら、浅漬け食べればいいのよだって。」

「なにその、がさつなマリー・アントワネットは!」

「知らねぇよ。ってか、朝から台所でドンガラガッシャンしてたのに、よく平気ですやすや寝ていられるよな。」

「後で、お母さんに電話しなくちゃ。」

「わざわざ電話してまで喧嘩することでもねぇだろ。」

「お礼の電話に決まっているでしょ、」

「は?」

「これ どっからどう見ても、私とあんた。二人分の朝昼晩の作り置きだよ。一週間はある。」

「考えすぎだろ。」

「なんで気付かないかなぁ。この鈍感は。」

「…うるせぇ。」

「とりあえずご飯食べるよ。それで私は、はたらく。あんたは、休む。」

「やすむ?」

「もう十分、朝 四時から働いたじゃん。買い出しで。」

「それは…」

「ご飯食べて、寝て。休む。さぁ。ご飯食べるよ。」




はい。オッケーです。


「ぐあー」

「緊張したー。」

○アクター二人、現場の音響スタッフ。互いに笑い合う。

「っていうか、朝 四時からの買い出しってなんだよー。」


●一旦・CM



「  改めまして急に始まりました。コエノミ。この番組は、低予算のため、最低限必要な音響スタッフ。そしてその他雑用を務める構成スタッフ。そして毎回変わる二名の役者により、お送りする音声発信メディア。即興ラジオドラマです。(尚、こちらは放送後、スタッフにより文字起こしをしたものです。) …って、これも私達(ゲストアクター)が読むんですね。」


「すごいな、」

「スタッフ、全然声出さないじゃん。」

「コエノミなのに。」

「本当、それ。」

「とりあえず、収録した音声聴くこと出来るらしいですよ。」

「聞いてみます?」

「私達はね、本当にご挨拶だけして。すぐに録音ブースに入ったわけですから。」

「とんでもない現場ですね。」

「とりあえず聴きましょう。」


(音声)

“ 即興ラジオドラマ ” 収録まで

5秒前…4、3、2、1… (キュー)

○黒電話が鳴る

「ストップ、

これなんか聞いてました?」

「いや、全然。急に黒電話が鳴りだして。どうしようかと思ったよ。」


(とりあえずつづきをどうぞ。)


○まだ黒電話が鳴っている。

○アクター・やっと出る

『うるさい!』


「待って、これは?」

「いやもう瞬発的に。最初、普通にもしもしって出ようかなと思ったのですが。」

「僕もそのつもりでいたよ。」

「ただこれ黒電話でしょ。時代背景考えたら昭和かなと思って。それでお芝居を引っ張るのは無理があるかなと思って。だからとりあえず、心の声を叫びました。」

「流石だね。いや、今振り返ったら確かに“現代の話”にしておいてくれて良かったよ。 あと、僕今振り返ったらだけど。『毎朝毎朝リンリンうるさい』っておかしいよね。」

「私もおかしな所、いっぱいありますよ。」


(つづきをどうぞ。※少し飛びます)


『俺もそろそろ行くわ。』

『行くって、どこへ?』

『仕事に決まってんじゃん。』

『あんた、今 無職なのに?』


「仕掛けるねぇ。」

「最初、恋人同士か夫婦かなぁと思ったんですけど。何となく。」


(※飛びます、つづきをどうぞ。)


○アクター・勢い良く起き上がったと思われる

『ただ言っておくよ。変なこと考えるくらいなら、姉のすね、かじりな。』


「めっちゃ、格好いいじゃん。」

「恥ずかしい…」



『どっちでもいいよぉ。お腹すいた、和子。』

『よしあきだ。どっから出てきたんだよ。』

『エッグベネディクトが食べたい。もしくは、ビーフストロガノフ。』

『朝から食の振り幅どうなってんだよ。貴婦人か。』


「この辺りから、何を言っても返してくださると安心しきって遊んでます。」

「楽しかったよ。」



『冷蔵庫みてみろよ。』

「ストップ、

わたし、これ今になってすごく反省です。」

「どうして?」

「普通、先に量に反応すると思うんですよねぇ。それなのに『ご飯あるじゃん』って。(有無に反応しちゃいました。)」

「細かいなぁ。でも分かるよ。気持ち、」


(つづきをどうぞ。)

『冷蔵庫みてみろよ。もっとすげぇぞ。お姉ちゃんの為に。』

○冷蔵庫の扉を開ける音と、思われる音


「これ、すごいよね。」

「驚きました。」

「急に冷蔵庫って言ったのに、音があるなんて。」

「あったとしてもこの瞬発力よ、」



『とりあえずご飯食べるよ。それで私は、はたらく。あんたは、休む。』

『やすむ?』

『もう十分、朝 四時から働いたじゃん。買い出しで。』

『それは…』

『ご飯食べて、寝て。休む。さぁ。ご飯食べるよ。』


はい。オッケーです。


『ぐあー』

『緊張したー。』


○録音を聴き終えて、笑う二人。

「落としどころがあって良かったー。」

「ちゃんと落とせたのかな。」

「分からない。」

「どうでした。やってみて。」

「めちゃくちゃ緊張したけど、きみがリードしてくれて良かった。楽しかった。」

「本当ですか、うれしい。私は、なんか、自分がこんな表情 (表現)をするんだって。意外でした。」

「僕も思った。普段大人しいお芝居をする子が、(こちらが)『蹴るな。』って言ったら、『ごめん、わざと。』とか面白すぎるでしょ。」

「すみません…」

「いや、あれでいいんだよ。むしろ、あれがいい。逆に僕、ファンになっちゃった。」

「本当ですか。ありがとうございます。」

「最後にこれ、どうしようか。タイトル。」

「それも自分たちで決めるんですか?」

「何にしよう、」

「姉と弟…」

「お姉ちゃんのおみ足。」

「やめましょう。」

「じゃあ何がいい?」

「きゅうり…あ、「お母さんの浅漬け」ってどうですか。」

「それいいかも。」




タイトル【お母さんの浅漬け】

声の出演… 弟・橋本正明、姉・ノグチかなえ

音響スタッフ・株式会社職人気質。

構成スタッフ・シノダおれんじ。








参考





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