今年読んだ「新作ミステリー」(読書回顧2023)
いつもながら、一年が経つのは早いです。
大好きなミステリー小説の年間ブックランキング発表の時期がやって来ました。
近年、新作ミステリーを読むことが増えた自分なんで、その総括として、各ブックランキングの影響を受ける前に、今年読んだ "新作ミステリー" の振り返りをしていこうと思います。
※ 各種ランキングに倣って、2022年10月~2023年9月の間にリリースされたものを新作としていますが、基本、私にとっての "今年の読書" に関する記事です。
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今年はいろいろあって読書時間が確保できなかった割に、11月末現在、読んだ新作は30冊あって、それなりに読んでます。
でも、今のところ年間読書数が50冊ぐらいなんで、新作ミステリーは読んでいても旧作が読めてないんです。
また、去年と同様、8~9月の新作ラッシュに追われ、まだまだ消化しきれてない新作本があるんですよね~
まあ、こういう追いかけられる感じは嫌いではないんですけどネ…(←変態か?!)
※ 以下の一覧では自分が読んだ順ではなくリリース順に並べています。
【国内編】
今年読んだ国内ミステリーの新作は次の14冊です。
今年の初読み作家さんは少ないんですが、「地図と拳」の助走として読んだ小川哲さんの「君のクイズ」に、この題材でここまで書けるのかと驚かせられました。
ただ、ちょっと型破りな本なんで、ここではミステリーとして、渡辺優さんの「私雨邸の殺人に関する各人の視点」が、思ったより面白かったので紹介します。
広告では、こんな感じだったのですが、読み始めてみると、クローズドサークルに密室殺人、ダイイングメッセージ、さりげなく読者への挑戦状、そして多重解決と、けっこうてんこ盛りな作品なんですよね。
でも、あんまり胃もたれしなかったのは、ライトな雰囲気とともに、タイトル通り、いろんな人物の視点で語られる構成や、誰がこの物語の探偵なのか、最後の方までわからないというプロットの巧妙さだと思うんですよね。
ミステリーマニアの人物が出てくるんですが、これがまた嫌な人物に描かれていて… 思わずミステリー好きの自分を見つめ直してしまうという、ホント ”新感覚” なミステリーでした。
若手作家さんの意欲作も続々リリースされました。
昨年、「方舟」が話題になった夕木春央さんの新作「十戒」では、よくもまあこんな人工的なクローズドサークルの設定を考えるなぁと、リアリティとか関係のない潔さに感心してしまいます。
どうやら、第3弾があるようなんで、次のタイトルの予想大会が開かれそうです!(嘘をいうなッ)
個人的には「黙示録」でエントリーします。
もう一冊、昨年、個人的ナンバー1だったのが白井智之さんの「名探偵のいけにえ」でしたが、その白井さんが今年もやってくれてます!
タイトルからして不穏な感じの「エレファントヘッド」…
面白かったですが、ちょっとグロが強めになってますので、ご注意ください!
そして、今年はベテラン作家さんたちの作品が楽しかったですね~。
恩田陸さんが10年越しで完成させた「鈍色幻視行」は1冊の本を巡る物語だったのですが、作中作として登場する本も、実際の本としてリリースする仕掛けが面白かったです。
伊坂幸太郎さんの殺し屋シリーズ「777 トリプルセブン」も相変わらず面白いし、東野圭吾さんの「あなたが誰かを殺した」は、"解決部分" があってホッとさせられました。
また、2作もリリースされた米澤穂信さんの新作は、私的にはインパクトは薄いものの、どちらも安定した面白さでした。
さらに、今年は京極夏彦さんの百鬼夜行シリーズ17年ぶりの新刊「鵼の碑」ですよね~ 新刊告知を見つけたときは手が震えました!
(総括)
ベテラン勢の力作は読みごたえがありましたし、若手作家さんの作品にも楽しませてもらいました。
ただ、今年はやっぱり、京極夏彦さんの「鵼の碑」ですね。
これはもう仕方がないです!ハイ。
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【海外編】
さて、今年読んだ海外翻訳ミステリーの新作は次の16冊です。
まずは、今年の初読み作家さんたち。
初読みだったのは、ジェイムズ・ケストレルとヴァシーム・カーン、トム・ミード、マーティン・エドワーズの4人です。
すでにトム・ミードの「死と奇術師」については記事にしていますが、残りの3人の作品もクオリティが高かったです。
その中では、ジェイムズ・ケストレルの「真珠湾の冬」を紹介します。
このタイトルと表紙ですから、最初は "戦争物" だと思って読み始めたんですが、すぐに、"警察物" か.. と、思ったのも束の間、これって ”スパイ物?”.. と思っていたら、最後は、アメリカの由緒正しき "私立探偵物" でした。
由緒正しきですから、当然、主人公はタフで女性にもてるんです!
アメリカ側から見た太平洋戦争を背景に物語が進むんですが、日本の描かれ方に違和感を覚えることはなく、そこがまた良いのです。
これなら映画化されても『トラ、トラ、トラ』のようにはならないんじゃないかと思います。
そして、今年は大好きなシリーズの続編が続々とリリースされ…
しかも、それが、また、すべて面白い!という… なんとも大満足の一年でした!
記事にしたユッシ・エーズラ・オールスンの ”特捜部Qシリーズ” をはじめ、リチャード・オスマンの ”木曜殺人クラブ” の続編も安定した面白さでした。
また、アンソニー・ホロヴィッツの ” ホーソーン・シリーズ” の第4弾「ナイフをひねれば」も、面白かったな~
というか、個人的にはシリーズで一番面白かったです。
そして、M・W・クレイヴンの ”ワシントン・ポー・シリーズ” の最新作「グレイラットの殺人」
この本も面白すぎでした!
ジェフリー・ディーヴァー作品のように二転三転するスピーディーな展開が楽しいシリーズなのですが、本作でもページをめくる手が止まらない止まらない…. ページターナーとしては屈指じゃないかと思います!
そして、中でも、一際、印象的だったシリーズものの続編が
ホリー・ジャクソンの "向かない シリーズ" 完結編「卒業生には向かない真実」です。
シリーズを読んできた者としては、中盤、
「何ぃ~、ちょ、ちょっと待って~💦」
みたいな展開で、間違いなく、衝撃度は今年のナンバー1だと思います。
また、今年は、大好きなピーター・スワンソンの新作が2冊も読めたりと、シリーズ物以外の本も充実してたのですが、特に推したいのは、ジョセフ・ノックスの「トゥルー・クライム・ストーリー」という本です。
いや~、この本は企みに満ちた一冊でした。
タイトル通り、女子学生の失踪事件に絡んで、関係者のインタビューで構成された実録ものっぽい本なんですが、なかなか読ませるんです。
帯が煽りに煽ってますが、読み終えた後の心地悪さはピカいちです!
さて、「真実の犯罪」とはどこに….
(総括)
私にとって面白い作品が多くて、ほんと充実してました。
衝撃度なら ホリー・ジャクソンの「卒業生には向かない真実」なんですが、実は、後半モヤモヤさせられて後味が悪いんですよね〜。
だから、同じモヤモヤさせられるのであれば、まさにそこが作者の仕掛けだった
ジョセフ・ノックスの「トゥルー・クライム・ストーリー」を推したいと思います!
ちょっと変わったミステリーをご所望の方にはこれがお薦めです!
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今年も、個人的読書ライフとしては "いい年" でした!
特に、海外ミステリーは充実していて、私が読んだ本だけでも逸品ぞろいなのに、今年の各種ブックランキングがどんなラインナップになってるのか楽しみで仕方ないのです!
また、京極夏彦さんの「鵼の碑」が "17年振りの続編" ということで話題になりましたが、もう一冊、海外作品の方でも17年振りの続編があったりするんですよね。
それが、ギジェルモ・マルティネスの「アリス連続殺人」なんですが、こちらは、今、積んでるので、年末にゆっくり読もうと思っています。
来年も新しい本とのいい出会いがありますように✋
(今年のミステリー関係記事)
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