今年読んだ国内作家さんたちの新作ミステリー(読書回顧2021)
11月になって、いよいよ今年も残りが少なくなってきた感じなので、今年の読書の振り返りなんぞをしていこうと思っています。
自分にとって、その年リリースされた国内作家さんのミステリーを読む場合は、好きな作家さんやシリーズの新作に限定されているので、決してたくさん読むわけではありません。
数えてみると12冊しかなかったのですが、年末の各種ランキングのことなんかも思い浮かべながら振り返ってみようと思います。
ちなみに私の国内ミステリーの読書傾向は以下の通りです。
(関係note)
特殊設定ミステリーのホープたち
+ + + + + +
【2月リリース】
「蒼海館の殺人」著:阿津川辰海
今回紹介する中では、最も若い20代の作家である阿津川辰海さんの新作で、2019年に話題になった「紅蓮館の殺人」の続編になります。
主人公や探偵役が高校生なんで、オジサンが読むにはギャップがあって、なかなか共感できない部分も多いのですが、ミステリーのロジックはほんと面白いです。
そういう意味で、阿津川さんの新作は、これからも読んじゃう気がします。
【5月リリース】
5月には、原田マハさんのアートミステリー「リボルバー」と、恩田陸さんの理瀬シリーズ17年振りの新作「薔薇の中の蛇」がリリースされました。
どちらもミステリーとしては弱いのですが、新作が読めるだけで幸せなのです!
【6月リリース】
「黒牢城」著:米澤穂信
いつも、いろんなタイプのミステリーで読者を楽しませてくれる米澤穂信さんの新作は、なんと戦国時代の武将たちを登場人物とした本作でした。
これがまた、なかなか面白いんですよね~。
先日、この作品が山田風太郎賞を受賞したとのニュースが入ってきたし、年末の”このミス”とかでも上位にランキングされる事、間違いなしなのです。
「ボーンヤードは語らない」著:市川憂人
「ジェリーフィッシュは凍らない」など、ちょっとSF的なガジェットが登場したりするもうひとつの現代を舞台とした〈マリア&漣〉シリーズの新作短編集です。
地味なんだけど、シリーズの中では一番読みやすくて、好きだったりするんですよね。
【7月リリース】
7月は、思いがけず京極夏彦さんの”巷説百物語シリーズ”の新作がリリースされて嬉しかったです。
ただ、7月には、他にも、年末のランキングに入って来そうな話題作がたくさんリリースされました。
「invert 城塚翡翠倒叙集」著:相沢沙呼
このミス2020の国内1位作品だった「medium-霊媒探偵城塚翡翠-」の続編になります。
ドラマ「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」を踏まえた倒叙形式の中編集で、犯人と、美貌の探偵:城塚翡翠との対決が楽しい本なのです。
ただ、探偵の翡翠が”あざとすぎる”キャラ設定のため、感想とか見ると、好き嫌いが明確に分かれる作品なんです。
「硝子の塔の殺人」著:知念実希人
今年一番の問題作だと思いました。
多分、これも賛否の分かれる本です。
いかにもという舞台に、いかにもという人たちが招かれて、いかにもという事件が起きるわけなのです。
作中で、コナン・ドイルやアガサ・クリスティーに言及する本は、これまでもたくさんあったのですが、この本では島田荘司さんや、綾辻行人さんらの新本格ブームにハマってた富豪が建てたという、いかにもという館が登場するので、一歩間違えばパロディになってしまいそうな感じなんですよね。
ただ、その ”いかにも” ってとこが重要だったりするのが侮れないのです。
帯に、綾辻行人さんが「あ~、びっくりした」という賛辞を寄せてるのですが、そりゃあ、びっくりしますよね!wって感じで、ほんとに秀逸な賛辞になってるので注目なのです。
「兇人邸の殺人」著:今村昌弘
「屍人荘の殺人」シリーズの第三弾!
まあ、これだけ人工的な舞台だと、辟易する人もいるでしょうが、そういうジャンルとして読めば、けっこう入り組んでいて、パズラーとして面白いです。
【8月リリース】
「機龍警察 白骨街道」著:月村了衛
私的に、今年、一番面白かったのが本書でした!
シリーズの第6長編なんで、この本だけを薦めることはできないのが残念なのですが、かつてないハイブリッドエンターテイメントであることは間違いないのです。
ロボットのような機甲兵装という兵器の登場するSFチックな面はありますが、世界情勢や警察機構などにはリアリティが溢れていて、ほんと面白いのです。
リリースされるたびに、SF、ミステリーのどちらのランキングも賑わすシリーズなのですが、この作品も間違いなく上位に位置する傑作だと思います!
「君が護りたい人は」著:石持浅海
碓氷優佳という探偵役により事件が起きないという、一風、独特なミステリーの第6弾です。
第1弾だった「扉は閉ざされたまま」が好きで、けっこう楽しみにしてるシリーズなんですが、巻を重ねる度に、薄味になってくような気がして、ちょっと寂しいんですよね。うんうん。
【9月リリース】
「透明な螺旋」著:東野圭吾
ガリレオシリーズの第10作目です。
登場人物の年齢が上がっていく分、ウェットな部分が増してくるんですが、やっぱり読みやすく面白いシリーズなのです。
シリーズの特徴である物理トリックはなく、どちらかというと、作者のもうひとつのシリーズ「加賀恭一郎」ものの雰囲気なんですが、あらすじにある ”最大の秘密” の部分は「加賀恭一郎」シリーズでは、もう使えないものなんですよね。
+ + + + + +
読みたかった海外ミステリーの新刊たちは、まだまだ積んでる本もあって、振り返りはもう少し先になりそうなんですが、国内ミステリーの新刊は、この後、読む予定がないので、一足先にまとめてみました。
新刊を読むと、その年のランキングとかで、どのポジションあたりなのか想像すのが楽しみのひとつなのです。(ミーハーですみません💦)
まあ、読んだ本の価値は、読んだ人それぞれにあればいいのですが、やっぱですね、そういうの考えると楽しいんですよね。
自分が毎年楽しみにしてる「このミステリーがすごい!」のランキングでいえば、
米澤穂信さんの「黒牢城」と、月村了衛さんの「機龍警察 白骨街道」は間違いなく上位に来ると思えるぐらい面白かったです!
また、賛否は分かれると思いますが、
知念実希人さんの「硝子の塔の殺人」なんかも、5位~10位ラインには十分入ってくるだけの面白さがあったと思います!
今年は、通勤手段がJR通から自家用車通になったこともあって、今ひとつ読書時間が確保できてないのですが、取りあえず、積んでる本たちを年内に読み上げてしまおうと思ってるのです。
📖