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今年読んだ「新作ミステリー」(読書回顧2022)


 1年が経つのは早いですね~。
 私の読書のメインであるミステリーも、年末の各種ブックランキング発表の時期になってきました。
 以前はランキングされた作品を翌年読んでいくことが多かった私ですが、年々、新作を読むことが増えて、逆に、読んだ本がどの辺りにランキングされるかが楽しみになってきてるんです。(基本、話題になった本ばかりなんですけどね…)

 と、いうことで、 

今年読んだ "新作ミステリー" の振り返り

 をしていこうと思います。


+  +  +  +  +  +


 11月末現在、今年読んだ新作ミステリーは30冊
 現在の年間読書数が94冊なんで、約3割が新作ミステリーという計算になりますね、けっこうな割合です。

 近年は、国内/海外ともに、努めて若手作家さんを読むようにしているんで、年々追いかける作家さんが増えちゃって、読みたくなる新作も増えるんです。

 ミステリー界では、年末のランキングを意識してか、夏ごろに各出版社の話題作がリリースされることが多いです。
 そのため、私の読書でも7~8月あたりから新作を読むことが増えるのですが、今年は、ほんっとに次から次へと読みたい新作がリリースされるんで… 久しぶりに積読に追われる事態となりました。(嬉しい悲鳴ですが、まだ消化しきれてません!)

※ 以下の一覧では、基本、昨年11月~今年10月にリリースされたものを新作として扱っています。また、自分が読んだ順ではなくリリース順に並べています。


【国内編】

 今年読んだのは、次の14冊です。

逢坂 冬馬「同志少女よ、敵を撃て」
中山 七里「おわかれはモーツァルト」
恩田 陸「愚かな薔薇」
有栖川 有栖「捜査線上の夕映え」
東野 圭吾「マスカレードゲーム」
呉 勝浩「爆弾」
浅倉 秋成「俺ではない炎上」
阿津川 辰海「入れ子細工の夜」
紺野 天龍「神薙虚無最後の事件」
阿津川 辰海「録音された誘拐」
荒木 あかね「此の世の果ての殺人」
夕木 春央「方舟」
白井 智之「名探偵のいけにえ:人民教会殺人事件」
相沢 沙呼「invert II 覗き窓の死角」
太字は初読み作家さんです。

(積読)
米澤 穂信「栞と嘘の季節」 11.4

 前半は、有栖川有栖さんの ”火村英生シリーズ” や東野圭吾さんの ”マスカレードシリーズ” など、ベテラン作家さんの新作が中心でした。
 お馴染みの世界観なので安定して面白いのですが、やっぱ驚きは少ないですかね…

 5月頃からは、若手作家さん(初読み作家さん含む)ばかりになっていくんですが、いや~、今年も楽しませてくれる作品が多かったです。
 昨年、知念実希人さんの「硝子の塔の殺人」を読んだ時にも感じたんですが、自分が大学生の頃の『新本格ムーブメント』を思い出させる作品が多いんですよね。
 "ひねりにひねりすぎたプロット" や、そのプロットに合わせるための "あからさまに人工的な舞台" 等々、多少の無理筋や都合の良さなど、(楽しませてさえもらえば)全然気にならないのが私なのです!(←自分で言うなよ)

 そんな作品をピックアップして紹介します。

呉 勝浩「爆弾」

 そのプロットに驚かされました!、それが初読みとなった呉勝浩さんの新作「爆弾」でした。
 なんとなく骨太な犯罪小説を書く人のイメージで、あまり関心を持ってなかった作家さんなんです。ただ、この本、クセは強めですが、かなり面白かったです! 
 何が面白いかっていうと、中心となる舞台が「取調室」だったりして、延々、被疑者と調査官の心理戦が描かれてるんです。
 「取調室」での駆け引きを読むのは、ちょい面倒(オイッ)な場面もあるんですが、この展開の終盤はページをめくる手が止まりませんでした!


浅倉 秋成「俺ではない炎上」

 これも、後半のプロットに驚かされました。
 昨年は「六人の嘘つきな大学生」で話題になった浅倉秋成さんの新作ですね。
 このタイトルですから、まあ、そういう話だよなと、ちょっと俯瞰気味に読んでると、終盤、「えぇッ?!」という展開があって、思わず2度読みしちゃいました。
 面白さだけで言ったら、間違いなく前作を越えてると思いました!


紺野 天龍「神薙虚無最後の事件」

 紺野天龍さんは、個人的にチャレンジしてみた作家さんです。
 ファンタジーやライトノベル畑の作家さんのようで、ちょっとオジサンが手に取るにはキツいカバーデザインなんですよね。でも、オジサン頑張りましたよ!(←誰に言ってる?)
 登場人物が神薙虚無かんなぎ うろむ瀬々良木白兎せせらぎ はくとなど、変換ムズッて感じの名前ばかりで、これまたオジサンが読むには辛そうなんです。ただ、往年の新本格ファンを侮るなかれ、こちとら「鴉城蒼司」や「九十九十九」など、清涼院流水氏も読んでるんで、ある程度、免疫があるのです!(←だから、誰に言ってる?)
 謎を残したままの20年前のベストセラー本『神薙虚無最後の事件』の解決編を巡る話なんですが、多重解決ものとして、なかなか楽しませてくれた一冊でした。 


夕木 春央「方舟」

 夕木春央さんも初読み作家さんです。
 でも、本屋でこんな”帯”を見かけたら、手に取らざるを得ないですよね… もはや習性みたいなもんです。

 長い話ではないので一気読みでした。
 このあざといほど人工的にクローズドされた地下施設、「方舟」で起きる連続殺人… 
 私としては、綾辻行人さんの「十角館の殺人」を初めて読んだ時を思い出しちゃいましたよ、うんうん、面白かったです。
 個人的に、相性の良いメフィスト賞作家さんということなんで、遡って以前の作品も読んでいこうと思います。


白井 智之「名探偵のいけにえ:人民教会殺人事件」

 グロミステリーの雄、白井智之さんの新作です。
 白井さんについてはグロでなさげな作品を選んで読んでるんですが、これは大丈夫な方の作品です。笑
 タイトルから、2020年の「名探偵のはらわた」の続編だと思って読み始めたんですが、全然、違ってました… (でも、最後は… みたいな感じです。)
 実話をもとにした ”カルト教団" で起きる殺人という題材も新しくはありませんが、マインドコントロール下にある特殊な状況で披露される怒涛の推理は、帯の文句の通り、圧巻!!でした。
 これも多重解決ものなんですが、その多重解決自体にも仕掛けがあるのが素晴らしい… 巧緻なミステリなのです。


(総括)
 今年も、若手作家さんたちのチャレンジが楽しかったですね。
 紹介した本以外でも、最近 "推し" の阿津川辰海さんの新作や相沢沙呼さんの ”城塚翡翠シリーズ” も面白かったし、江戸川乱歩賞作品の「此の世の果ての殺人」 も力作でした。
 話題性に加え、結末もインパクト十分だった「方舟」は、もちろん、ランキング上位に来そうな面白さだったんですが、

 個人的にもっとも楽しんだのは、白井智之さんの「名探偵のいけにえ」でした。

(カバーデザインは苦手なんですけどね…笑)


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【海外編】

 さて、今年読んだ海外翻訳ミステリーの新作は、次の16冊です。

ピーター・スワンソン「アリスが語らないことは」 
スチュアート・タートン「名探偵と海の悪魔」
エルヴェ・ル・テリエ「異常:アノマリー」
ジェフリー・ディーヴァー「フルスロットル」
ジェフリー・ディーヴァー「死亡告示」
アーナルデュル・インドリダソン「印」
ジェフリー・ディーヴァー「ファイナル・ツイスト」 
ホリー・ジャクソン「優等生は探偵に向かない」
アリス・フィーニー「彼は彼女の顔が見えない」 
クリス・ウィタカー「われら闇より天を見る」
エリー・グリフィス「窓辺の愛書家」
ジェローム・ルブリ「魔王の島」
アンソニー・ホロヴィッツ「殺しへのライン」
M・W・クレイヴン「キュレーターの殺人」
ジェフリー・ディーヴァー「真夜中の密室」
ケイティ・グティエレス「死が三人を分かつまで」 
太字は初読み作家さんです。

(積読)
周 浩暉「邪悪催眠師」
ポール・ベンジャミン「スクイズ・プレー」
リチャード・オスマン「木曜殺人クラブ 二度死んだ男」11.2

 今年の海外ミステリーも楽しかったです。
 ジェフリー・ディーヴァーの新作が4冊(ライムシリーズの新作含む)も読めたし、アーナルデュル・インドリダソンの<エーレンデュル捜査官>シリーズの久しぶりの新作も読むことが出来ました。
 また、ピーター・スワンソンアリス・フィーニージェローム・ルブリのように、プロットに凝ったスリラーにも楽しませてもらいました。

 今年挑戦してみた初読み作家さんは4人いたのですが、うち、エルヴェ・ル・テリエ「異常:アノマリー」ジェローム・ルブリ「魔王の島」ケイティ・グティエレス「死が三人を分かつまで」については、すでに別記事で紹介しています。
 なので、ここでは、クリス・ウィタカーの「われら闇より天を見る」を紹介します。


クリス・ウィタカー「われら闇より天を見る」

 早川書房の最大の隠し玉として、早い段階から告知されていた作品で、私自身、今年読むのを楽しみにしていた話題作です!
 2021年のCWA賞(英国推理作家協会賞)のゴールド・ダガーを受賞した作品で、ちょっと邦題が仰々しいのですが、前評判どおりいい本でした!
 2年前に話題となった「ザリガニが鳴くところ」もそうだったのですが、途中、ミステリーであることを忘れてしまうんですよね。
 あまりにも辛い主人公の境遇をめぐる人間ドラマに引き込まれてしまいました!
 …じっくり読み上げた後に表紙画を見ると、ちょっと泣けるんです。


 初読み作家さんたちって、作風に心構えができてない分、新鮮さを感じちゃうんですよね、どれも面白かったです。

 さて、その他の既読作家さんたちですが、近年、話題になってるシリーズの続編は、やっぱ楽しませてくれます。
 中でも、おおッ!と思わせてくれたのが、次の3冊です。


アンソニー・ホロヴィッツ「殺しへのライン」

 ここ数年、各ランキングを席巻してるアンソニー・ホロヴィッツの<ホーソーン>シリーズの第3弾です。
 元刑事のホーソーンが探偵役となって、ホロヴィッツ自身がワトスン役で登場するシリーズなんですが、はっきり言って、驚きはありません!
 なので、各ランキングで連続1位を取るのは難しそうですが、その分、安定してるんですよね~、やっぱ、ホロヴィッツは巧い!
 物語の世界観にも慣れてきて、主人公二人のやりとりも楽しくなってきて、なんかいい感じなのです。(古き良きミステリって、そんな感じでしたよね。)


M・W・クレイヴン「キュレーターの殺人」

 これまた大好きな<ワシントン・ポー>シリーズの第3弾です。
 刑事ものなんですが、謎解き部分には本格の香りがして、ほんと面白いシリーズなんです。
 ちょっと偏屈な刑事ワシントン・ポーと、コミュ障気味の分析官のティリー・ブラッドショーのコンビが素敵すぎるんです。
 ブラッドショーは、007映画に出てくる ”Q” の女性版みたいな感じなんですが、巻を重ねるごとに二人の絆も深まって、バディものとしても読み応え抜群です。
 第1弾の「ストーンサークルの殺人」はそこそこ評判になったものの、第2弾の「ブラックサマーの殺人」はリリース時期が遅いせいもあって、面白いのに昨年末のランキングでは話題にならなかったシリーズです。
 ポーの洞察力とブラッドショーの天才的な分析力で事件を解明していく様子はたまらなく魅力的で、シリーズはこの後も続くみたいなんで、早めに手に取ることをお薦めします!


ホリー・ジャクソン「優等生は探偵に向かない」

 昨年、話題となった「自由研究には向かない殺人」の続編です。
 主人公が女子高生なんで、ジュブナイルな感じでありながらも、フェイスブックやポッドキャストを使いながら情報を集め、真実を導き出していくとこは本当に ”今風” で面白過ぎなんです!
 ただ、主人公に無鉄砲なとこがあって、親目線で読むとハラハラしちゃうんです。(自分が父親としたら、かなり心配な娘です。)
 正直、私にとっては第1作以上に面白かったんですよ~。
 このシリーズ、三部作として、もう1冊続くそうです。


(総括)
 新鮮なプロットのスリラーとともに、古き良きミステリのテイストを取り入れた本格系など、好みの新作がたくさんで、とっても充実してました。
 選ぶのは難しいんですが、

 個人的に一番楽しんだのは、M・W・クレイヴンの「キュレーターの殺人」と、ホリー・ジャクソンの「優等生は探偵に向かない」でした。


 それぞれの続編もお待ちしています。


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 昨年に続き、今年も自分好みの作品が多かったです。
 なんか、国内では ”新本格ムーブメント” を思い出させるような作品が増え、海外でも間違いなく ”本格系” の作品が増えてきてる感じなんで、本格ファンの自分にとっては嬉しい限りなのです。

 ただ、今年は、新作の積読が消化しきれてないという、自分にとっては困った事態です!
 一覧にも掲載してますが、国内作品では米澤穂信さんの新刊、海外作品でもリチャード・オスマンの「木曜殺人クラブの続編などを積んでるんですが年末に向けてゆっくりと読みたいと思っています。
 もう一冊、楽しみに取っているのがポール・ベンジャミンの「スクイズ・プレー」という本です。
 初読み作家さんのようですが、実は、あのポール・オースターの幻のデビュー作なんですよね、これ。
 今年の締めはこれしかないと思ってます。(楽しみ~)



 今年もあとひと月少々となりましたが、たくさんの面白いミステリーに出会えたことに感謝あるのみなのです!


(昨年の振り返り)

(一昨年の振り返り)



● ● ● 今年のミステリー関係 note ● ● ●

    今年書いたミステリー関係の記事は6記事なんですが、ちょっと海外ミステリーに片寄ってる感じです。