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今年読んだ新作海外ミステリー(読書回顧2020)


 年末になってきて、各種ランキングが気になる時期がやってきましたね~。基本、ミーハーな私にとって各種ランキングは面白い本との出会いの場であったりします。

 自分の読書は、まだまだ、各種ランキング等で一定の評価のある作品を読むことが中心なのですが、最近では、少しずつランキング前の新作本も読むようになってきました。
 自分の読んだ本がランキングに入ってたりすると、妙に嬉しかったりするんですよね~、これがまた。
 

 それで今回は、自分が読んだ今年の新作海外ミステリーについて”note”していきたいと思います。


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 まあ、新作本を読むようになったといっても10冊程度で、まるまるランキングを予想するのはおこがましく、ランキング圏内と考える作品を紹介します。

 想定するのは、自分が毎年楽しみにしている「このミステリーがすごい!2021」の海外作品ランキングです。

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★★★ ランキング10位圏内予想作品 ★★★
 まずは、10位以内ランキングの想定作品。


①『死亡通知書 暗黒者』

  周 浩暉 著

2002年、省都A市でひとりのベテラン刑事が命を落とし、復讐の女神の名を冠す謎の人物〈エウメニデス〉による処刑の序曲は奏でられた。インターネットで死すべき人物の名を募り、遊戯のごとく予告殺人を繰り返す〈エウメニデス〉から挑戦を受けた刑事の羅飛(ルオ・フェイ)は、省都警察に結成された専従班とともに、さらなる犯行を食い止めるべく奔走する。

 まず、最初に紹介するのは、以前も"note"した『死亡通知書 暗黒者』。
 
近年、続々と翻訳されるようになった”華文ミステリー”において、陳 浩基、陸 秋槎に続く第三の刺客として紹介された”周 浩暉”の作品です。
 今年読んだ中では、抜群にエンターテイメントしてました。
 本格としては薄味ですが、名探偵対怪人の構図は、乱歩で育った自分にとっては懐かしくもあり、夢中になって読んでしまいました。

 これは10位圏内というだけでなく、ベスト3にも入ってくるんじゃないかと期待しています。



②『ストーンサークルの殺人』

 M・W・クレイヴン 著

英国カンブリア州に点在するストーンサークルで次々と焼死体が発見された。犯人は死体を損壊しており、三番目の被害者にはなぜか停職中の国家犯罪対策庁の警官ワシントン・ポーの名前と「5」と思しき字が刻み付けられていた。身に覚えのないポーは処分を解かれ、捜査に加わることに。しかし新たに発見された死体はさらなる謎を生み、事件は思いがけない展開へ…

 新鋭作家M・W・クレイヴンの英国推理作家協会賞ゴールドダガー賞受賞作。前評判にたがわず面白かったです。
 ストーンサークルで起きる連続殺人の焼死体に刻まれた刑事の名前が発端となって、捜査が動き始める序盤から引き込まれます。
 主人公の刑事も良いのですが、相棒となる分析官ティリー・ブラッドショーのキャラがとっても魅力的なんですよね。
 ティリーは、世間知らずでコミュニケーション能力に難ありの女性なんですが、”IQ 200”で、分析力はコンピューターなみというの超天才!です。この女性と 主人公のコンビが良くて、既に、続編が出てるということです。



③『その裁きは死』

 アンソニー・ホロヴィッツ 著

実直さが評判の離婚専門の弁護士が殺害された。裁判の相手方だった人気作家が口走った脅しに似た方法で。現場の壁にはペンキで乱暴に描かれた数字“182”。被害者が殺される直前に残した謎の言葉。脚本を手がけた『刑事フォイル』の撮影に立ち会っていたわたし、アンソニー・ホロヴィッツは、元刑事の探偵ホーソーンによって、奇妙な事件の捜査にふたたび引きずりこまれて──。

 なんと、このミスでは『カササギ殺人事件』、『メインテーマは殺人』と、2年連続でランキング1位だったホロヴィッツの新翻訳本です。
 『メインテーマは殺人』の第2弾が本書なのですが、やっぱり期待を裏切りません!
 ただ、3年連続がどうだろうということで、5位圏内ぐらいの予想です。


④『網内人』

 陳 浩基 著

自宅アパートの22階から飛び降り自殺した女子中学生シウマン。
彼女は通学電車の中で痴漢事件に巻き込まれ、犯人と目された男の甥からインターネット上で攻撃を受けていた。ネットの誹謗中傷が彼女を死に追いやったのか?自分の知らない世界で妹を脅かすどす黒い悪意の存在を知った姉のアイは、変わり者だがネット専門の凄腕探偵・アニエを説得し捜査を依頼した。

 華文ミステリーブームを牽引する陳 浩基の最新翻訳本です。
 傑作『13・67』と比較すると物足りない部分はたくさんあるのですが、ネット探偵アニエのキャラクターによって、10位以内にランキングされるのではないかと思っています。

 探偵アニエは凄腕のホワイトハッカーなのですが、作中にはアニエの上をいく人物も示されていて、まだ書かれてはいませんが、今後の続編も期待したいと思います。



★★★ ランキング11位~20位圏内予想作品 ★★★
 次に11位~20位以内ランキング予想作品。


⑤『時計仕掛けの歪んだ罠』

 アルネ・ダール 著

15歳の少女3人の連続失踪事件を追うベリエル。目撃の通報を受けて急行するも、3度とも現場はもぬけの殻で、彼は苛立ちを募らせていた。事を荒立てたくない上司の警告をよそに、殺人事件だと確信し捜査に執念を見せるベリエルはやがて、それぞれの現場写真に映る不審な女に目をつける。緊迫の攻防、息を呑む逆転劇、衝撃の真相……。

 あまりにもタイトルが魅力的過ぎて、手に取ってしまった一冊なのですが、本格というよりもサスペンスが中心です。
 とは言え、第1章と第2章、そして第3章と、視点がガラッと変えられるいくので、謎解きよりも、この展開が楽しかったりしました。

 20位圏内作品としていますが、魅力的なことは間違いなくて、もしかすると、10位圏内もあるかも.....



⑥『笑う死体 マンチェスター市警 エイダン・ウェイツ』

 ジョセフ・ノックス 著

休業中のホテルで深夜、死体が発見された。指紋は切除され、顔には満面の笑み、そして謎の文字の紙片が……不可解極まりない殺人の真相を追って相棒サティと捜査に乗り出したエイダンの前に立ち塞がる欲望と狂気の罠、そして過去から甦る彼自身の忌わしき記憶。

 あまり評判にならない地味なシリーズの2作目なんですが、意外と面白かったんですよね。
 少なくとも、前作より楽しく読めました。
 いろいろ背負っている主人公なんですが、コンビを組んでる、むちゃくちゃ嫌な上司が、最後の方で印象が変わるという.... 謎解きもなかなかトリッキーな感じで、もっと話題になってもいいのにって思っています。



⑦『ネヴァー・ゲーム』

  ジェフリー・ディーヴァー 著

姿を消した人間を追跡する名人、コルター・ショウ。失踪人や逃亡犯に懸賞金がかけられると、彼は現地へ赴いて調査に着手する。つねに冷静に状況を分析する明晰な頭脳と、父に叩きこまれたサバイバル術で多くの事件を解決してきた。今回ショウはシリコンヴァレーに住む男の依頼で、失踪した娘を探すことになった。

 ディーヴァーといえば、四肢麻痺の元科学捜査官リンカーン・ライムシリーズで有名ですが、そのディーヴァーの新しいシリーズ。
 まあ、どうなんだろうと思って読んだのですが、やっぱり面白かったです。

 科学捜査が中心のライムに比べて、この本の主人公コルター・ショウが武器とするのはサバイバル術、でも、頭脳の明晰さ、経験に基づく閃きはライムにも負けてなくて、とても魅力的でした。



⑧『特捜部Q―アサドの祈り―』

 ユッシ・エーズラ・オールスン 著

キプロスの浜辺に難民とおぼしき老女の遺体が打ち上げられた。偶然その写真を見たアサドは慟哭する。失った家族とのつながりを持つ人物だったからだ。彼の壮絶な過去を知った特捜部Qは、アサドの宿敵を捕らえ、また恐るべきテロ計画を阻止するために動き出す。

 北欧ミステリーの代表みたいな感じですが、シリーズ通しての謎がいくつかあって、そのうちのひとつ、主人公カールの相棒、アサドの過去が語られるのが本作です。
 シリーズ第8弾なんですが、面白さが変わらないのが、このシリーズのすごさです。



⑨『探偵コナン・ドイル』

 ブラッドリー・ハーパー著

1888年ロンドン。『緋色の研究』を発表したばかりの若き医師コナン・ドイルは、前首相から、巷を賑わす連続殺人事件を、シャーロック・ホームズの推理法を用いて解決に導いてほしいと依頼された。ドイルは、ホームズのモデルでもある恩師ベル博士と、現場の下町に詳しい男装の女流作家マーガレット・ハークネスの協力を得て、のちに切り裂きジャックと呼ばれる殺人鬼との知恵比べに挑む。

 いわゆる”切り裂きジャック”ものの作品なのですが、立ち向かう3人のチームが楽しい一作でした。
 主人公であるコナン・ドイルよりも、協力者のマーガレットが魅力的だったりするんですよね。

 インパクトは少なく、ミステリーとしては薄味ですが、シャーロック・ホームズ、いや、コナン・ドイル愛に溢れる作品です。



★★★ ダークホース予想作品 ★★★

 さて、最後は、もしかするとって作品について....

⑩『三体Ⅱ』

 劉 慈欣 著

人類よりはるかに進んだ技術力を持つ三体艦隊との対決という未曾有の危機に直面した人類は、国連惑星防衛理事会(PDC)を設立し、防衛計画の柱となる宇宙軍を創設する。絶望的な状況を打開するため、前代未聞の「面壁計画(ウォールフェイサー・プロジェクト)」が発動。人類の命運は、四人の面壁者に託される。

 ご存知、ベストセラーの華文SFですが、実は話の構図はミステリーだったりするんですよね!
 謎の「面壁計画」を巡って、三体人と4人の面壁者が知恵を絞りあうストーリーなんですが、最後、「面壁計画」の全貌が解き明かされるときなんて、ミステリーのカタストロフィが味わえるんですよね~。
 ジャンル違いではありますが、こっちでランキングされていても不思議はない本なので、ダークホース作品として追記しときます。



 毎年、楽しみにしているランキング本、読み逃してる本は、来年、じっくり読んでいきたいと思ってます。

 発売は12月4日です!



(関係note)