【small design】SOHO
SOHOという言葉をご存知だろうか
『small office/home office』の頭文字を取った言葉である
小さなオフィスや自宅を仕事場とする働き方、またはその仕事場、物件のことを指す言葉で
明確に何を意味するかは定義されていないらしい
日本では1990年代ごろから、SOHOに対応した物件や働き方が注目されるようになってきたので以前から使われていた言葉である
コロナを機にSOHOが注目されるのはもちろんであるが、要は自宅で働いたり、小さなオフィスを構える働き方の問題であるから、わざわざSOHOという言葉を使うほどのことではなくなってきているように思われる
そもそもSOHOである職住一体の暮らしは日本では一般的であった
私が生まれた岡山の家は、長屋が建ち並ぶ街並みが今も残っている
隣は美容院で、反対側の隣は以前は鉄工所だったが今は学生アパートになっている
その他紳士服屋やタバコ屋、向かいには仕出し屋と酒屋があり、今でも高齢化は進んでいるがほとんど変わらない
私の家も祖母が洋裁をしており、道路に面した部屋はミシンやアイロンがある仕事スペースであった
どの店も、店の裏は自宅で2階に各部屋があるつくりである
店は当然オープンだから普段から人の出入りがあるし、外からでも中の様子が伺える
うちは家の中を土間が通り抜けているので、見知らぬ人が入ってくることはよくあった
昔は、自分の仕事が家の顔であり玄関であったのだ
そこには人と人とのコミュニケーションの場があり、その活気が街に滲み出ることでコミュニティが形成されていた
最近はこのような形態(SOHO?)がかなり減ってしまったように感じる
昔のテレビドラマではよくこの形態の家が、家族像を象徴するもののように使われていた
古くなるが、80年代に人気を博した
『ふぞろいの林檎たち』では中井貴一の自宅は酒屋だった
その酒屋に色々な人が訪れる
(若かりし小林薫の演技が懐かしい)
ちなみに柳沢慎吾の実家もラーメン屋だ
2000年に放送された松嶋菜々子が主演の『やまとなでしこ』では、お相手の堤真一は魚屋だった
他にもたくさんあるが、いずれも職住一体の形態(SOHO?)だ
最近のドラマはあまり見ないが、ほとんどなくなっているのではないだろうか
※若い方には事例が古くて分かりにくく申し訳ない
SOHOという働き方にはインターネットを使って働くテレワーク的な考え方が前提だろう
しかし、これから事務所がどんどん都心から無くなって自宅で働く人が増えたり、自営業の人も増えていくことを考えた時に、自らの仕事がリアルなコミュニケーションの媒体になったらいいのにという気持ちがある
昔のように気軽に入れるお店のような感覚は建築を街に開く手段となる
また家族はお店から出入りする
よくドラマなどで落ち込んだ子どもが声を掛けられないようにスタスタとお店を抜けて2階に駆け上がっていく姿が描かれていたが、気配で何かあったのかな?と気付くこともできるだろう
SOHOという働き方をもっと前向きにリアルなコミュニケーションの場に繋げられたらと思う
私自身今までも美容院やパン屋、エステ、マッサージ、英会話教室、カフェなどが併設された住宅を設計してきた
小さくてもこれもある意味SOHOであると言えるだろう
このような暮らし方が街に開かれていくことでリアルな人と人とのコミュニケーションが生まれていけば、バーチャル(インターネット世界)とリアル(現実世界)をうまく楽しむことができるのではないだろうか
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?