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<12月と空>空は人の心をうつす鏡

「とても良いことがあった日にふと上を見上げると真っ青な快晴だった」

「たくさん泣きはらした1日の終わりに感動的な夕焼けを目にした」

・・・そんな経験は誰しもにあるのではないかと思う。

それはただの偶然なのかもしれないし、確率論以上の何ものでもないのかもしれない。

いつもの如く、空は真実を何も語ってくれないし、すべてはそれを見る私たちの一方的な解釈に偏っている。

でも、1つ確かなこと。

それは、2つの紛れもない「事実」――その日何か心に気持ちのさざ波を立てるような出来事が起こったということ、そしてその日の空が何か心に響く特別な表情を持っていたということ、――それが、或る一日のうちに重なって起きたということだ。


この日の夕暮れもそうだった。

私は暮れゆく空を一心に見つめながら、空が赤く染まる「その時」が来るのを待っていた。

「その時」は、期待どおりにやってきてくれて、そして、期待していた通り、力強く、自由で大きくて、感動的なのにどこか繊細で、そして、儚げな表情を浮かべて、そして消えていった。

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・・・でも、私は本当に、ただ夕空を見つめていただけ?

その時の私は、たぶんそう、思い込んでいた。

自分でも気づかない感情、思いにならない思い、言葉にならない何か。そんなものがあの時心の奥底にあって、それを空に伝えようとしていたなんて、自分自身意識もしていなかったはずだ。あの日が過ぎ去った後、あの日の空を何度も見返しながら、そこに写っている目に見えない「何か」を感じとるまでは。

空はとても大きくて遠くて、そこには目も口もなければ耳も持っていない。

でも、それにはどこか不思議な力があって、ただそれを見つめ続けているだけなのに、私の中にある何かをいつのまにか写し取ってそれを心の深いところから理解してくれる。

あの日夕暮れの空を見つめ続けていた私は、たぶんそうやって空を経由するという、とてもとても遠回しな方法に頼りながら、言葉にならない何かを、決して誰にも伝わることのない方法で、すぐ近くにいる誰かに伝えたかったのかもしれない。

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