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「老後資金」の計画を崩すのは、身内か?見栄の張りすぎか?

私は「老後の為に」というキーワードが好きではない。

こちらのベストセラー本でも言われているように、お金を稼ぐために子供との時間が減る事も嫌だし、貯金を優先して「今しかできない事」を先延ばしにする事が嫌だ。

でも、それは「私」の考え。
我が家は4人家族だけど、その上にお互いの両親がいる。
そして子供はいずれ「新しい家族」を作るかもしれない。

その時「自分の計画」は音を立てて崩れるかもしれない。


リアル過ぎて一気読み


コチラの本を読んだ。

既出の「DIE WITH ZERO」と比べると、ものすご~く現実的で「あるある!」が満載な本だった。

しっかり貯金して老後の備えは万全だったわが家に、突然金難がふりかかる! 後藤篤子は悩んでいた。娘が派手婚を予定しており、なんと600万円もかかるという。折も折、夫の父が亡くなり、葬式代と姑の生活費の負担が発生、さらには夫婦ともに職を失い、1200万円の老後資金はみるみる減ってゆく。家族の諸事情に振り回されつつもやりくりする篤子の奮闘は報われるのか?普通の主婦ががんばる傑作長編。

前半、主人公の篤子が友人女性とお茶をしながらお互いの子供の結婚式に援助した費用や、葬儀にかかった費用を話すシーンが出てくる。

ここで篤子に比べて友人が結婚資金も葬儀も物凄く少額で済ませた事にショックを受ける…という部分の描写が凄くリアルだった。

相手が自分よりリーズナブルに済ませると「うちは使い過ぎた・・」と後悔する。

逆に後半は、別の女性からホテルのアフタヌーンティーに誘われるシーンが出てきて「経済力の差」みたいなモノを感じて落ち込む。

これって誰しも年代問わず、感じる経験があるんじゃないかな?

中盤以降はミステリー?と思う位ドキドキの展開があって胸が締め付けられたけど、最後はきちんと明るく読み終える事ができた。

数百万円の意志決定を数時間で迫られる


本の中で、義父の葬儀の打ち合わせをするシーンが出てきた。

五十万円のを薦められなくて良かったと胸を撫で下ろす一方で、どうせ燃やすのにどうして十二万円もするのかと思う。
いちばん安いものでも四万円もする。そもそも原価はいくらなのだ。十二万円あれば、省エネのエアコンのいいヤツが買える。
(中略)
十二万円もあれば…香港や台湾にも旅行できるし、しかもいいホテルに泊まれる。

著書より

このシーン、物凄く分かる。
私も10年程前に祖父の葬儀の打ち合わせに同席した事がある。

生前に特に葬儀屋に相談した事もなかったので、亡くなった直後に電話番号しか知らなかった葬儀屋へ連絡して遺体を運んでもらった。

そして翌日には早速打ち合わせが開始された。

棺桶、骨壺、祭壇、花、提灯、あらゆるモノの値段が細かく設定されていて短時間にどんどん決めなくてはいけなかった。

結婚式であれば自分達の事だし、見栄もなければケチケチする事もできる。

だけど葬儀は自分ではない故人の事であり、配偶者ではなく子供や嫁の立場なら「質素にしてください」とは言いづらい事もあるだろう。

私は祖父の打ち合わせの時は「見学者」みたいなモノで一言も口を挟まず金銭的な負担もしなかった。

だけど、世の中には「子供がいない高齢夫婦」という世帯もいる。
そういう人はこの数百万の意思決定を、数時間でやらなければいけない。
哀しむ暇も、冷静な判断ができる暇も与えてくれないのだ。

今からできる事は?


篤子は老後資金として1200万円貯金してきたのに、結婚式や葬式であっというまに残高が減ってしまった。

見栄っ張りな夫が「娘が可哀想」「親が可哀想」と次々と大金を使う事を許容してしまったから。

夫は貯金の残高を知らないし、篤子は夫に「お金がないのか?」と聞かれた時に「お金はあるけど」等と言ってしまった為にお金を使うハメになった。

つまり、夫婦間で「貯金残高」を共有できていなかったのだ。
そして「お金がない」と正直に言えなかった。

これって、現代の夫婦は「あるある」ではないだろうか?
我が家は一括管理をしているけど、家庭によっては「財布が別」という夫婦も少なくない。

お互いに「相手が貯金をしているだろう」と見込んでいたら、蓋を開けてみればお互い全く貯金していなかった!とか。


どちらかにお任せしているケースでも「やりくりが下手」「やりくりに問題がある」と思われたくないので、大金を使う場面が出てきた時に「余裕がない」と言えないとか。

正直「老後資金はいくら必要なのか?」という問いに対する答えに全く正解がない。

本に出てくるように冠婚葬祭を10万円レベルで済ませる人もいれば、数百万を使う人もいる。
家族であっても価値観が違う。

イザ「老後」を迎えた時に予定が狂わないように、今からお互いの意識をすり合わせておく事は重要だな…と改めて感じた1冊だった。

<あとがき>
ここ10年位で「家族葬 15万円から」といった派手な広告をしている葬儀社が近くに沢山できました。
でも実際に利用した人に話を聞いてみたら、「家族葬なのにいきなり見積もりが150万円スタートだった」と話していました。
お坊さんも「私は50万円からしか引き受けません」とハッキリ仰ったそうです(^_^;)
本の中で主人公の友人は葬儀社を利用せず、自分達で「手作りの葬式」を決行するシーンがあり、それも大いにアリな気がしました。
でもそれも家族間の会議が必要ですよね(笑)

今日も有難うございました。


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