合理的ではない祭りに、子供の成長があるのかもしれない。
「わっしょい!わっしょい!」
気温35度。
暦の上では既に秋だけど、この夏一番?と思う程の汗をかいている。
人口密度から来るムンムンとした熱気で息苦しくなる。
陽射しが照り付けるけど、沢山の人が近くにいて日傘もさせない。
尋常じゃない。
クールじゃない。
合理的じゃない。
保育園だって小学校だって、30度を超えると外遊び禁止じゃないか。
にも関わらず、今日はこの暑い中午前10時からずーっと歩き続けている。
一体何故?
私はこの炎天下の中、お神輿の後ろに付いて練り歩いているのか。
「わっしょい!わっしょい!」
その意味が自分でもよく分らない。
でも誰よりも大きな声を出してみた。
それは、2メートル程先で神輿を担いでいる長男に届くように。
祭りを盛り上げているんじゃない。
子供を応援しているんだ。
お神輿が大好きだった長男
長男が1歳の頃、夫の実家付近で開催されたお祭りで初めてお神輿を見た。
するとすっかり気に入ってしまい、翌年の夏はお神輿の「山車」を引く形でお祭りに参加をした。
夏祭りに参加した後は、ずっと夏祭りを1人で再現していた。
小さな踏み台の上に登り、ペットボトルを2本持って拍子木に見立てて叩いてみたり。
洗濯物を干す角ハンガーを神輿に見立てて。
リビングにあったジャングルジムに宮入させていた(笑)
それ位大好きだった神輿祭りは、その翌年からコロナ禍でずっと中止になっていた。
中止になっている間に小学生となった長男は、「山車」ではなく「子供神輿」を担げる年齢になり、去年5年越しに参加をした。
町内をスタートして、2回休憩を挟み神社へ宮入。
途中で「足を踏まれた」とかブツブツと文句を言いながらもなんとか宮入まで、約2時間頑張った。
神社に宮入を終えると2時間程、神社で縁日を楽しむ「自由時間」がある。
その自由時間の2時間で時間を持て余してしまい「もう帰りたい」と言うのでリタイアして終えた。
夫は「最後まであきらめずに頑張るっていう気持ちを育てるのが神輿だ!」と、途中リタイアする事を残念そうに見ていた。
だけど子供の頃から神輿の祭りに全く縁のなかった私は「この猛暑の中やるのは思考停止では?」と懐疑的に思っていたので、「早く解放されて良かった」程度にしか感じていなかった。
だから今年の参加有無を義母に問われた時に「担ぐ!」と言った長男に驚いた。
どうせまた途中でリタイアするのではないだろうか?
この暑さだから、リタイアを責める事はできない。
でも、どの時点のリタイアなら許容できる?
頭の中でモヤモヤが続き、「その日」が正直憂鬱だった。
暑いし(笑)
担ぎたい長男
どこまで頑張るのか不安になりつつも、神輿がスタートした。
未就学児の次男は「山車(だし)」の紐を引っ張って歩く。
引っ張ると言っても殆ど、「紐を持って歩くだけ」である。
小学生の長男は子供神輿を担いでいたが、子供神輿は参加者が多く混み合っていて長男は開始早々弾き出されて神輿の後ろを「ただ歩くだけ」になった。
そしてスタートして10分も立たないうちに、早速休憩時間になった(早!)
すると長男が「もう嫌だ、帰る。」と言い出した。
理由を聞いても
「つまんないし、暑いし。涼しい所へ行きたい」と言う。
休憩所でお茶を飲み、カレーライスを配られても「カレー嫌いだし」と不機嫌。
長男が「帰りたい」と言い出したので、次男も同調し始めた。
暑い事は否定できないし、無理強いもできない…と思いつつ
何となく長男の「つまんない」は、そもそも神輿を担げていないからでは?という気がした。
正直、「少子化にも関わらずよくこんなに集まるな~」という位、子供神輿は神輿の大きさに対して子供の数が多かった。
なので夫が、集合時間になったらすぐに神輿の「弾き出されない中央辺り」へ入り込む事を教えた。
そして再出発すると、見事に神輿の担ぎ手になれた。
次の休憩所では「もう帰りたい」等と一切言わず、神輿に触れたり太鼓を叩かせてもらったり楽しそうに過ごしていた。
そして遂に神社へ宮入。
「14時半にここに集合ね!!」
神輿を仕切っている方の掛け声で解散。
休憩の度にアレコレ仕切ってくれるので、顔も覚えるし、徐々に愛着がわいてくる(笑)
宮入した時点で、去年と同じ所まで頑張った。
開始早々10分で「帰りたい」と言われた時はどうなる事かと思ったが、何とか半分まで終える事ができた。
「よく頑張った!」という気持ちもあり、家族で縁日を楽しんだ。
そして、祭りを楽しんでいるうちに神輿が神社を出る時間まで30分程となった。
「疲れた」「暑い」と、ネガティブな発言もあったものの、どうせ30分後には出発するとなれば最後まで参加すれば良いのでは?
いつの間にか、私が「最後まで頑張れば?」と促すようになっていた(笑)
という事で神社を出発する時にも、しっかり集合した。
すると未就学児の山車は、午前と比べて参加者が激減しているとの事。
そりゃそうだ。
午前10時に出発してから、宮入して、神社を出る時間が14時半。
既に4時間半も経過しているので、小さな子にはとてもキツイ。
そんな人の少なくなった山車で、次男も頑張った。
帰りも2回休憩を挟み、無事に町内に戻る所まで参加した。
10時に町内を出発して 12時頃宮入。
14時半頃に神社を出発して 16時頃解散。
うーん、中々ハードな一日だ。
「子供は町の宝」が体現されている
他の町内会?はどうなのか分からないけど。
夫の実家が所属する町内会?の子供神輿は色々と手厚かった。
午前・午後で4回休憩があり、休憩の度に色々な物が支給された。
・地元で飲食店を営む方が作った手作りカレー
(子供用と、大人用がある)
・麦茶
・アイス(パピコ)
・塩分チャージタブレット
・ミニかき氷(タリーズコーヒー)
・アイスティー(タリーズコーヒー)
・アイスコーヒー(タリーズコーヒー)
・ドーナツ(町内にあるお店の物)
これが子供だけではなく「お父さん、お母さんも付き添いお疲れさまです~!食べて下さいね~」と親にも配ってくれる。
更には、神輿が終わった後に抽選会も開催される。
なんと、商品券5千円である( ゚Д゚)!!!
10人以下しか当たらないとは言え、中々の太っ腹!
そして「お土産」として、モスバーガーのセット無料券とレトルトカレーが支給された。
この町内で育った夫も、近年の子供神輿事情は知らなかったのでこんなに「手厚いおもてなし」をされる事に驚いていた。
きっと町内の子供の中には、この「手厚いおもてなし」をモチベーションに頑張る子もいるに違いない。
そして、「手厚いおもてなし」もさることながら、神輿に参加する人の年齢層が本当に幅広い事にも驚いた。
昔ながらの「町内会の重鎮」という風貌の年配者だけではなく、二十歳前後の若者が沢山参加していた。
その若者たちは、神輿を先導したり、交通整理をしたり、休憩中に子供に食品を配ったり…と、よく仕事をしていた。
私達のような年代になると、「親」として付き添いをする。
若者と子供が巣立った世代の方が、神輿を仕切ったり、休憩所でカレーを配膳したりする。
若者を見ながら「長男が初めて神輿を見た頃は、この若者たちが子供神輿を担いでいたのかもしれない」と思った。
「参加者」だった子供達が大きくなり、運営側へ回っていく。
そして各地の休憩所を出る時に、その場で「おもてなし」をしてくれた人に対して、全員で「有難うございました!」と必ずお礼を言ってから出発する。
集団行動を乱す様な勝手な行動をすると、他人の子だろうがお構いなく年長者から注意をされる。
そういう経験は、普段中々できない。
私はまた、「町内会」「地域」と言うものの力を感じた。
まさに「地元で育つ」「地域で育てる」という事はこういう事なのだ。
「他人に怒られる」という経験が昔よりも減っている。
その中で、こういう祭りが盛んな地域で育つ事はとても貴重なのかもしれない。
私の住むマンションには町内会も神輿も、子供会もない。
子供が大きくなるにつれて、それが徐々に「残念」と感じるようになった。
親になると色々心境は変わるものだなぁと驚く。
今日も有難うございました。