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【連載小説】0n1y ~生物失格と呪われた人間~

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人間というのは随分と身勝手だ。 自己中心的で自己満足的で自己保身的で自己保存的だ。 自分が一番可愛くて、そんな自分を穢されるのが許されなくて、他人を貶して貶める。 その貶し貶めが…
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小説『生物失格』 目次。

小説『生物失格』 目次。

1章、英雄不在の吸血鬼。Future Preface 1:腹破れた失格者。
Episode 1:幼き同棲。
Episode 2:英雄不在の日常生活。
Episode 3:無彩色世界論と、彼女からのお誘い。
Episode 4:「霊前」カップルトーク。
Episode 4.5:夢も現も。
Episode 5:過剰心霊スポット。
Episode 6:シャイニング・オン・ベリー。
Episode -1:

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小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Post-Preface 4-3)

小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Post-Preface 4-3)

前話
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Post-Preface 4-3:根無の夜想。 攻河町某所、夜、マンションの一室。
 大人の姿に戻っている糸弦操は、ベッドの上で横たわっていた。部屋は恐ろしく綺麗に片付けられていて、夕食に食べた牛丼のプラスチック器も、洗ってゴミ箱に捨てられている。
 ここの住人――否、元住人は生きていない。少し前に操が殺した。遺体は既に浴槽でバラバラに解体済みで、丁寧に煮てから少しずつ廃棄している。

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小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Post-Preface 4-2)

小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Post-Preface 4-2)

前話
目次

Post-Preface 4-2:一堂会してまた一難。***

「はーい、下がった下がった!」
 規制線の前でメディア陣や野次馬を押し返す警官。
 彼らを背に事件現場に入った刑事、刑部善造は、流石に口を覆った。
 あまりに濃すぎる、血の臭い。ばらばらに破壊された死体は大分片付けられたが、それでも現場には殺人の痕跡が臭いとしてこびりついていた。
 長年刑事をやっている彼であっても、中々

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小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Post-Preface 4-1)

小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Post-Preface 4-1)

前話
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Post-Preface 4-1:後日談と前触れ。 自分達は逃げた。逃げたついでに通報した。
 鎌川鐡牢。そもそもヤツは警察なんかじゃない。それは既に、獄中の最強クラッカー、夢果が傍証してくれている。
 だから、事態の収拾は外部の勢力に任せる。
 そう、使えるモノは全て使う。
 たとえそれが警察であっても。殺人サーカスでしたのと、何ら変わりはない。
 そしてだからこそ。
 自分たちは

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小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 8)

小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 8)

前話
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Episode 8:死体遊戯、結。「……ああ。帰るぞ、って言ったけどな」
 自らの言葉に注釈を付するため、鐡牢は自分を見ながら苦笑した。どうやら落胆か暗澹かが、自分の表情に出ていたらしい。
「帰るのはお前らだけだ。俺は援軍を呼んだら、すぐさま屋上の犯人をとっちめに行くぞ。こんな事件起こしてる奴を放置しておくなんてできないからな」
 正義の警察官としてな。
 拳を握り、制服の上からでも

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小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 7)

小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 7)

前話
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Episode 7:死体遊戯、幕間。

 不気味な笑みを湛えている鎌川鐡牢は、人差し指をくい、と曲げた。
 こっちに来い、と言っているかの様に。
「じゃ――一旦彼女サン頼んだぜ」
 鐡牢はそう言った途端、カナを置き去りに駆け出す。自分も、それを認識して反射的に駆ける。
 この死地で、カナを独りにさせてはならない。
 自分は、校則を無視して廊下を走り。
 鐡牢とすれ違い。
 そして、カ

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小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 6-0.5)

小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 6-0.5)

前話
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Episode 6-0.5:盲目なる恋する少女。***

 ――あの日、えーたを殺そうとしてしまったことをまだ後悔しているし、これからもずっと後悔するだろうな。

 蒸し暑い体育倉庫の中で蹲りながら、カナはそんなことを思っていた。
 彼氏である死城影汰は、あのサーカスでの一件の後、病室で「気に病むな」と言ってくれた。カナにだけ甘々な影汰のことだ、殺されさえしなければ、大体何だって許し

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小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 6)

小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 6)

前話
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Episode 6:死体遊戯、転。 ――あれから数分経っただろうか?
 ルールを理解してしまえば、後は何とも単純だった。
 先生が襲い掛かってきても対処としては避けるだけ。更には糸にさえ触れなければゾンビは自分に気付かない。更に気付いた端から先んじて切断し、これ以上自分の探知ができないようにもしておく。
 一体何故、こんなにも簡単なのだろう。
 これで『死城』を殺す気だと言うのなら、

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小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 5)

小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 5)

前話
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Episode 5:死体遊戯、承。 全身が血に染まった教師――舎人遣使先生は、自分を見かけるなり顔を向けた。
 途端、ナイフを両手に、そのまま突進攻撃。その目に光は宿っていない。傍目からも死んでいることは明らかだった。
 ……どうする、と逡巡する暇もない。
 闘争か逃走か。すぐに決めねばならない。
 創作世界の主人公であれば、ここで戦うことを選択するのだろうが、残念ながら自分はしがな

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小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 4)

小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 4)

前話
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Episode 4:死体遊戯、起。 ――輪切りにされたマジシャン、奇季の鮮烈な殺害光景が、脳内に甦る。
 その殺害をやってのけた奴は、サーカス集団『ノービハインド』の元一員、糸弦操。忘れもしないソイツが今、校内放送で自分に呼びかけていた。
 ヤツ自身の言葉の通りなら、夜にしか大人の姿に戻れない筈だ。子供の姿のアイツは、まともに話すことができていない記憶があるから。
 故に今校内放送で

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小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 3)

小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 3)

前話
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Episode 3:閉鎖学校。「……ねえ、えーた」
「……ああ」
 校門を抜ける。その瞬間、強烈な違和感に襲われる。恐らくカナも直感で不安を察している筈で、早くも自分の服をギュッと掴んでいた。
 誰だっておかしいと思うだろう。
 普段朝練で喧しい運動部員のホイッスルや掛け声も、生徒指導の舎人遣使の煩い説教も、生徒の笑い声も。
 攻河中学校から、人間の息遣いが聞こえてこないのだ。蝉の音

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小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 2)

小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 2)

前話
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Episode 2:バックステージへの侵食。 翌朝。今日は終業式前日――明日が終われば夏休みだ。
 いつもの通り、朝の弱いカナの眠気を吹き飛ばすため、叩き起こさず抱き起こした。そのせいで今、頬に朱色の残滓を浮かべたまま朝ごはんを食べている。もう同棲してからというもの、幾度となく抱き起こしているのに全く慣れないらしい。可愛い。どうかそのままの君でいてくれ。
 朝食の内容は、トーストとジ

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小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 1)

小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Episode 1)

前話
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積み上げるのは難しい。
倒すのは簡単だ。
粉砕するのだって、きっと。

Episode 1:彼女のトラウマ。

「天凱君ね、あと1週間くらい休むとちょっと内申点的に危ないんだわ。内申点。大事だろう? そりゃ君、もう中学3年生なんだし、まさか君みたいな頭の良い子は中学出てすぐ働くとかではなく、高校に進学するのだろうからさ。……ああ、いや、別に進路を強制しようとしたのではなくてね。それは

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小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Future Preface 4)

小説『生物失格』 4章、学校人形惨劇。(Future Preface 4)

前話
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Future Preface 4:破壊の美学。 ――攻河中学校、終業式前日。
 時刻は午前8時半頃。初夏の日差しが燦々と降り注ぐ校舎前のグラウンドにて、『破壊屋』――かつて偽警察官・鎌川鐡牢と名乗った男が、スマートフォンで通話していた。
「……なあ、おい」
『何だ、『破壊屋』』
「話が違えぞ」
 『破壊屋』と呼ばれた男は舌打ちしながら、校舎を見上げる。その勢いで、顎から垂れた汗が、夏

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