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透々実生
2021年7月24日 12:01
1章、英雄不在の吸血鬼。Future Preface 1:腹破れた失格者。Episode 1:幼き同棲。Episode 2:英雄不在の日常生活。Episode 3:無彩色世界論と、彼女からのお誘い。Episode 4:「霊前」カップルトーク。Episode 4.5:夢も現も。Episode 5:過剰心霊スポット。Episode 6:シャイニング・オン・ベリー。Episode -1:
2024年4月30日 23:58
前話目次Post-Preface 4-3:根無の夜想。 攻河町某所、夜、マンションの一室。 大人の姿に戻っている糸弦操は、ベッドの上で横たわっていた。部屋は恐ろしく綺麗に片付けられていて、夕食に食べた牛丼のプラスチック器も、洗ってゴミ箱に捨てられている。 ここの住人――否、元住人は生きていない。少し前に操が殺した。遺体は既に浴槽でバラバラに解体済みで、丁寧に煮てから少しずつ廃棄している。
2024年4月27日 17:23
前話目次Post-Preface 4-2:一堂会してまた一難。***「はーい、下がった下がった!」 規制線の前でメディア陣や野次馬を押し返す警官。 彼らを背に事件現場に入った刑事、刑部善造は、流石に口を覆った。 あまりに濃すぎる、血の臭い。ばらばらに破壊された死体は大分片付けられたが、それでも現場には殺人の痕跡が臭いとしてこびりついていた。 長年刑事をやっている彼であっても、中々
2024年4月26日 08:50
前話目次Post-Preface 4-1:後日談と前触れ。 自分達は逃げた。逃げたついでに通報した。 鎌川鐡牢。そもそもヤツは警察なんかじゃない。それは既に、獄中の最強クラッカー、夢果が傍証してくれている。 だから、事態の収拾は外部の勢力に任せる。 そう、使えるモノは全て使う。 たとえそれが警察であっても。殺人サーカスでしたのと、何ら変わりはない。 そしてだからこそ。 自分たちは
2024年4月25日 09:12
前話目次Episode 8:死体遊戯、結。「……ああ。帰るぞ、って言ったけどな」 自らの言葉に注釈を付するため、鐡牢は自分を見ながら苦笑した。どうやら落胆か暗澹かが、自分の表情に出ていたらしい。「帰るのはお前らだけだ。俺は援軍を呼んだら、すぐさま屋上の犯人をとっちめに行くぞ。こんな事件起こしてる奴を放置しておくなんてできないからな」 正義の警察官としてな。 拳を握り、制服の上からでも
2024年4月24日 20:22
前話目次Episode 7:死体遊戯、幕間。 不気味な笑みを湛えている鎌川鐡牢は、人差し指をくい、と曲げた。 こっちに来い、と言っているかの様に。「じゃ――一旦彼女サン頼んだぜ」 鐡牢はそう言った途端、カナを置き去りに駆け出す。自分も、それを認識して反射的に駆ける。 この死地で、カナを独りにさせてはならない。 自分は、校則を無視して廊下を走り。 鐡牢とすれ違い。 そして、カ
2024年4月23日 08:38
前話目次Episode 6-0.5:盲目なる恋する少女。*** ――あの日、えーたを殺そうとしてしまったことをまだ後悔しているし、これからもずっと後悔するだろうな。 蒸し暑い体育倉庫の中で蹲りながら、カナはそんなことを思っていた。 彼氏である死城影汰は、あのサーカスでの一件の後、病室で「気に病むな」と言ってくれた。カナにだけ甘々な影汰のことだ、殺されさえしなければ、大体何だって許し
2024年4月21日 22:55
前話目次Episode 6:死体遊戯、転。 ――あれから数分経っただろうか? ルールを理解してしまえば、後は何とも単純だった。 先生が襲い掛かってきても対処としては避けるだけ。更には糸にさえ触れなければゾンビは自分に気付かない。更に気付いた端から先んじて切断し、これ以上自分の探知ができないようにもしておく。 一体何故、こんなにも簡単なのだろう。 これで『死城』を殺す気だと言うのなら、
2024年4月20日 21:05
前話目次Episode 5:死体遊戯、承。 全身が血に染まった教師――舎人遣使先生は、自分を見かけるなり顔を向けた。 途端、ナイフを両手に、そのまま突進攻撃。その目に光は宿っていない。傍目からも死んでいることは明らかだった。 ……どうする、と逡巡する暇もない。 闘争か逃走か。すぐに決めねばならない。 創作世界の主人公であれば、ここで戦うことを選択するのだろうが、残念ながら自分はしがな
2024年4月18日 21:39
前話目次Episode 4:死体遊戯、起。 ――輪切りにされたマジシャン、奇季の鮮烈な殺害光景が、脳内に甦る。 その殺害をやってのけた奴は、サーカス集団『ノービハインド』の元一員、糸弦操。忘れもしないソイツが今、校内放送で自分に呼びかけていた。 ヤツ自身の言葉の通りなら、夜にしか大人の姿に戻れない筈だ。子供の姿のアイツは、まともに話すことができていない記憶があるから。 故に今校内放送で
2024年4月17日 21:37
前話目次Episode 3:閉鎖学校。「……ねえ、えーた」「……ああ」 校門を抜ける。その瞬間、強烈な違和感に襲われる。恐らくカナも直感で不安を察している筈で、早くも自分の服をギュッと掴んでいた。 誰だっておかしいと思うだろう。 普段朝練で喧しい運動部員のホイッスルや掛け声も、生徒指導の舎人遣使の煩い説教も、生徒の笑い声も。 攻河中学校から、人間の息遣いが聞こえてこないのだ。蝉の音
2024年4月16日 21:42
前話目次Episode 2:バックステージへの侵食。 翌朝。今日は終業式前日――明日が終われば夏休みだ。 いつもの通り、朝の弱いカナの眠気を吹き飛ばすため、叩き起こさず抱き起こした。そのせいで今、頬に朱色の残滓を浮かべたまま朝ごはんを食べている。もう同棲してからというもの、幾度となく抱き起こしているのに全く慣れないらしい。可愛い。どうかそのままの君でいてくれ。 朝食の内容は、トーストとジ
2024年4月15日 23:28
前話目次積み上げるのは難しい。倒すのは簡単だ。粉砕するのだって、きっと。Episode 1:彼女のトラウマ。「天凱君ね、あと1週間くらい休むとちょっと内申点的に危ないんだわ。内申点。大事だろう? そりゃ君、もう中学3年生なんだし、まさか君みたいな頭の良い子は中学出てすぐ働くとかではなく、高校に進学するのだろうからさ。……ああ、いや、別に進路を強制しようとしたのではなくてね。それは
2024年4月14日 23:00
前話目次Future Preface 4:破壊の美学。 ――攻河中学校、終業式前日。 時刻は午前8時半頃。初夏の日差しが燦々と降り注ぐ校舎前のグラウンドにて、『破壊屋』――かつて偽警察官・鎌川鐡牢と名乗った男が、スマートフォンで通話していた。「……なあ、おい」『何だ、『破壊屋』』「話が違えぞ」 『破壊屋』と呼ばれた男は舌打ちしながら、校舎を見上げる。その勢いで、顎から垂れた汗が、夏