前話
目次
Post-Preface 4-3:根無の夜想。
攻河町某所、夜、マンションの一室。
大人の姿に戻っている糸弦操は、ベッドの上で横たわっていた。部屋は恐ろしく綺麗に片付けられていて、夕食に食べた牛丼のプラスチック器も、洗ってゴミ箱に捨てられている。
ここの住人――否、元住人は生きていない。少し前に操が殺した。遺体は既に浴槽でバラバラに解体済みで、丁寧に煮てから少しずつ廃棄している。よって、この部屋で起きた事件を知る者は、今の所1人もいない。
とは言え、バレるのも時間の問題だった。この国の警察は意外にも優秀だと、操は知っている。何せ、サーカス『ノービハインド』の件で、警察の手によって組織が崩壊したのを、この目で見――
「……いやァ、違うかァ〜」
操は首を横に振った。
組織が崩壊した直接の原因は、警察などではない。
その警察を手引きした死城影汰――そう、『死城』のせいだ。
「……はァ〜」
また殺し損なった。
思わぬ邪魔が入ったからだ。
溜息を吐いて頬杖をつき、テレビを眺める。凶悪なヤクザに法廷での戦いを挑んだ母親の逸話が流れていた。操はあまり面白いと思えなかった。面白さが、彼女には分からない。
もう一度溜息。
電源を消すのすら億劫になった操は、つけっぱなしテレビを見ながら、自らの過去を思い出す。
「……さてェ〜、そろそろだなァ〜!」
操は、にたりと笑みを浮かべる。
「もう、居場所は分かったしなァ〜」
テレビの明かりに照らされたその顔は、ひどく猟奇的に映った。
その時、スマートフォンが鳴る。着信だ。
画面に映る番号を確認する。恩人からだった。
操は迷わず通話ボタンを押す。
Chapter 4 "Dolls Party" is the END.
Let's take a break for a little while.