なぜ「ストレス」が免疫力低下の要因になるのか? 前編 【これからの免疫力を高める習慣23】
毎日の習慣を見直すことで、これからの免疫力を高める生き方、始めてみませんか?
前回は「免疫力アップ」は足し算ではなく「引き算」が大切であるということについて書き、
もし病気を遠ざけ、健康を維持したいのならば、毎日の生活の中で、無理をしすぎていないか、限界を超えていないか、ストレスが多すぎないか、エネルギーを消耗しすぎていないか、という視点を持つことが大切になってくると述べました。
そして、この連載【これからの免疫力を高める習慣】で特にお伝えしたいことは、長引くストレスが免疫力を低下させる要因になるということなのですが、より具体的に言うならば、「闘争か逃走か」というストレス反応が続くことによって、危機に対処しようとする生体がエネルギー不足に陥り、その分、免疫機能がうまく働かなくなっているということなのです。
そのため、免疫力をアップさせるためには、健康食品やサプリメントを摂るのではなく、生活の中の余計なストレスを減らし、免疫力の低下を防ぐことのほうが大切になってくるのです。
では、そもそも「ストレス」とは一体何なのでしょうか?
普段から私たちが何気なく口にする「ストレス」という言葉には、外側からかけられた圧力によって、ひずみやゆがみが与えられるという工学的な意味があるとされていますが、それだけではなく、「苦痛」や「苦悩」を意味する中世の言葉「ディストレス」を短くしたものであるとも言われています。
つまり、仕事のミスを上司に叱られて気持ちが「へこんだ」とも言うように、「ストレス」という言葉には、物理的な意味合いと精神的な意味合いが含まれているのです。
そして生体がストレスを感じると、自律神経系からノルアドレナリンやアセチルコリンといった神経伝達物質が放出されたり、副腎皮質や副腎髄質からアドレナリンやコルチゾールが分泌されたりして、ストレスに対処しようとします。
このことは「闘争か逃走か」という、ストレスに対する生体の適応現象です(ストレス反応)。
そして「視床下部―下垂体―副腎」の反応によってコルチゾールが分泌されるストレスシステムは「HPA系」と呼ばれています。
ちなみにこの「HPA系」について精神科医のアンデシュ・ハンセン氏は、
「HPA系というのはたった1つの器官でできているのではなく、身体と脳にある3つの部分が互いにコミュニケーションを取っているシステム」
であると述べています(1)。
危険や脅威、困難な状況に遭遇するたびに、ストレスホルモンである「コルチゾール」が副腎から分泌されますが、このコルチゾールには、筋肉中のタンパク質をアミノ酸に分解し肝臓でブドウ糖に合成したり、脳以外の場所でもエネルギー不足にならないように脂肪を分解してエネルギー供給を促したりする働きがあります。
また、このコルチゾールには、免疫機能を活発にしたり抑制したりする働きもあるとされています(2)。
たとえばコルチゾールが多すぎると、免疫機能が抑えられて風邪を引きやすくなることが考えられますし、反対にコルチゾールが少なすぎると、免疫反応が活発になることでアレルギーや湿疹、自己免疫疾患などの症状が生じる可能性が出てきます。
そのため免疫系の調整役でもある「コルチゾール」自体は悪者ではなく、問題となるのは、長期的なストレスによってコルチゾールの放出が過剰になるなど、バランスが崩れてしまうことなのです。
次回へと続きます😊
注釈
1 『ストレス脳』 アンデシュ・ハンセン 著 久山葉子 訳 新潮新書
2 『ストレスに負けない脳 心と体を癒すしくみを探る』 ブルース・マキューアン、エリザベス・ノートン・レスリー 著 桜内篤子 訳 早川書房
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