加賀見啓介

何歳でも挑戦する気持ちを持っていたいと願う。最近、物語を描く様になった中で感じる、年齢…

加賀見啓介

何歳でも挑戦する気持ちを持っていたいと願う。最近、物語を描く様になった中で感じる、年齢は関係無い!そんな中、色々な小説(ストーリー)を描いて行こうと思っております。あと数年で60歳!でも「これからが面白い!」と、そう感じています。

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  • 『鱗』〜ウロコ  加賀見啓介

    1980年代から90年代  日本を席巻する時代、翻弄されし者たち、 えぐり取られた『記憶』の断片が、30年と言う時の中で今と繋がり、 『記憶』の中に散りばめられた真実は、又魂の群と再び出会うと言のだろうか。

最近の記事

[小説] 『鱗』〜ウロコ29話〜最終話。炙りされた真実は、30年の時を経て巡り合う。

        29話  東京地検特捜部の捜査が始まるのを察知した梶浦は、先を読んでいたと言う。  佐伯が、世界的競売団体の発行する鑑定書を作ったと言って持って来たのだ。事実、佐伯も破綻した後、相当危ない所から借りていたらしく、その返済を迫られ行き着いたらしい。  佐伯の印刷に於ける技は、一級品だと改めて思い知らさせれた梶浦は、贋作と知りつつも、自ら有名な絵を集め始め、その事をヘンリー・ウォンに話すと、香港に贋作を描く天才がいる事を突き止め、ほぼ毎月のように香港に出掛け

    • [小説] 『鱗』〜ウロコ27話〜28話。奇蹟の一枚の運命。

               27話  啓介は休む事無く店に立ち続け、判りやすく5時から5時を徹底し、西麻布からの客や飛び込みやらで、連日連夜大盛況となていた。  立ち呑みと言う昔のスタイル、1960年代にはそんな店が沢山あったと聞く。時代は変われど、見事に功を奏したのである。  信用金庫での遣り取りも滞おりなく済み、114・3×147、実物は想像を遥かに超える物、ラメッシュの邸宅の匂いそのものとして、皆、常軌を逸していたと思う、恐らく信用金庫の3人は一生観る事が無いだろう。アグネ

      • [小説] 『鱗』〜ウロコ25話〜26話。錆び付いた考えの末の悲劇だった。

                25話  久しぶりに父親が、今週ゴルフに行こうと言って来た。勝手知ったるコースに、久々の親子二人のラウンドだ。  太陽も燦々さんさんと最高のゴルフ日和の中、顔見知りのキャディーさんにも恵まれ、ほのぼのとした1日を送っていた。  それでもそこは、啓介はマジになる。前半を1アンンダーで回って来たのだ。 「お前さー、やっぱり上手いよなー」 「まーねー、それ程でも無いよー」 「お父さんには感謝してるよ!」 「栃木の一ヶ所売って良いよ」 「え!、良いの?

        • [小説] 『鱗』〜23話〜24話。香港の夜を灯すワインと桔梗の花。

                  23話  翌日は早めにチェックアウトを済ませ、ポルトガルの風情(ふぜい)を体全体で感じべく、朝食は屋台でお粥を食べようと、観光客の中に紛れていた。  有名なエッグタルトも味わい、仮と言えども、リスボンの雰囲気を堪能し、お昼の船で戻ると、日航香港では騒動になっていた。  ロビー全体が騒然とする中、理由は簡単、紛まぎれもないこの日本人二人の荷物の事だ。さんざっぱら世話になった挙句に、その上、昨晩は帰って来ないと言う失態に、ほとほと困っていて、事情を知らないス

        [小説] 『鱗』〜ウロコ29話〜最終話。炙りされた真実は、30年の時を経て巡り合う。

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        • 『鱗』〜ウロコ  加賀見啓介
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        記事

          [小説] 『鱗』〜21話〜22話。突然の出来事だった。でも、其処には、未来を照らす光がさしていた。

                  21話  啓介はホッと出来る『自分だけの世界』があった。  そう秘密の場所と言っても良い。誰にも言わずにいたその場所は、日比谷線の広尾で降りると直ぐの所にあり、『有栖川公園』の山の上池に沿った、そこそこきつい坂を登った所に、昭和48年に完成した図書館が秘密の場所だ。  男子は子供の頃から、何かにつけ、秘密基地を持ちたがるのかも知れず、朝10時丁度に門が開くので、それに合わせて度々、訪れては色々な本を開いていた。  公園の中を、季節季節の風を感じて歩くの

          [小説] 『鱗』〜21話〜22話。突然の出来事だった。でも、其処には、未来を照らす光がさしていた。

          [小説] 『鱗』〜ウロコ19話〜20話。欲望が少しずつ剥がれ、過酷な現実が現れる。

                  19話  電話口の声は生成沈着(せいせいちんちゃく)でしかも的確に、揺るぎない口調で浸食を繰り返していた。  そんな羽目になる事を、全く知らないで土俵に上がってしまったのである。振り返ると、銀行マンの有るまじき姿では無かったと、そして僅かの間で1ドル150円にまで急落してしまい、取り返しのつかない状況に、陥ったと言うのだ。  もう期限がそこまで来ていた……。  借金は住宅ローン以外には無かったが、他の銀行口座すらも、持っていなかったと言う。  みっと

          [小説] 『鱗』〜ウロコ19話〜20話。欲望が少しずつ剥がれ、過酷な現実が現れる。

          [小説] 『鱗』ウロコ〜16話〜18話。計画は狂って行く速度を増した。

                  16話  「加賀見さん、MRIの結果ですが、脳はいたって綺麗でした良かったですね、ただ一番なって欲しく無い状況が、血栓が動いている状態です、血栓はかなりプルプルしています、それは今にも飛ぶかの勢いですね」 「そうですか、あれですか、飛ぶ可能性があるんですかね?」 「益々ますます危険な状況です……」 「祈りが・足らない・ですかね」  軽く笑ってみた。本当の所、後にも先にも現代医学の最高峰を持ってしても、この薬しか方法が無いと言うのだ。 『本当だろうか

          [小説] 『鱗』ウロコ〜16話〜18話。計画は狂って行く速度を増した。

          [小説] 『鱗』〜ウロコ 13話〜15話。脆(もろ)くもバブルが弾けて行く。

                  13話  1987年から梶浦は良く働いた。懸命に働く姿は会社にとっても本人にとっても、どんどん良い風が吹き、社長以下ほぼ全ての社員からも、絶大なる信用も得ていたのだろう。  恐らく、そんな姿に河村房子も、梶浦健に愛慕心が増していたに違いなく、時間ときの過ぎる速度が増してる中、企画から営業、資金調達の全てを一人でこなし、既に独壇場と化した梶浦、社長としては鼻高々だったと思う。  そんな日常でも梶浦健は冷静に判断をしていた。  外に目をやれば、足を引っ張る

          [小説] 『鱗』〜ウロコ 13話〜15話。脆(もろ)くもバブルが弾けて行く。

          [小説] 『鱗』〜ウロコ 10話〜12話。生まれ変われる事など出来ない、其れが出来るなら・・・・・。

                  10話 『加賀見さんCTの結果です』  どうだろう、1拍か2拍か、会話に少し間があったので不安にさせた。 「左右とも炎症しているのですが、左の下の方が特に悪いようです」 「この状態からですと、それなりに時間が掛かると思いますね」 「恐らく1週間は、様子を見てからの評価でしょうかね、頑張りましょう!」  1週間位で退院出来ると勝手に思い込んでいただけに、そこには、かなりの開きがあるのだ、やはりおいそれとはいかない、灸を据すえられた気分になった。  

          [小説] 『鱗』〜ウロコ 10話〜12話。生まれ変われる事など出来ない、其れが出来るなら・・・・・。

          [小説] 「鱗」ウロコ〜7話〜9話。30年前の出来事が、滝のように降り注ぐ。

                  7話  25歳の啓介は今現在、世間一般で言う所の、それなりのちゃんとした会社に入って、給料を貰う様な生活を全く考えてはいなかった。  現に電気の配電盤を作る父親の会社にも、興味が希薄でフラフラしている訳でも無い。そんな中、たまたまゴルフ同好会時代の先輩が、西麻布や青山で『BAR』を何店舗か経営する中。  その一つでアルバイトをさせて貰い、それなりに頂いていたのもあってか、中々前に進めずにいると父親からも『そろそろはっきりしろ』的な言葉が、毎日のように聞こ

          [小説] 「鱗」ウロコ〜7話〜9話。30年前の出来事が、滝のように降り注ぐ。

          [小説] 「鱗」ウロコ〜4話〜6話。病院のベッドで観た夢、其れは現実への入り口だった。

                  4話  『加賀見さん、奥様大変お待たせしました、本日救急外来担当の加藤と申します』  廊下の長椅子で待ちくたびれたカミさんも呼ばれた。 「本日、平岡クリニックの平岡先生から、頂いた資料も拝見しましたこれから、色々と検査をしないと判らないのですが、現状を精査しますと『肺炎』です。  結論から言いますとかなりの重症ですね」 「あ、はい、んー」 「肺炎にも色々なタイプがあります、どんな状況なのか詳しく、調べないといけません。  それから血液の数値も拝見

          [小説] 「鱗」ウロコ〜4話〜6話。病院のベッドで観た夢、其れは現実への入り口だった。

          [小説] 『鱗』〜ウロコ 1話〜3話。少なからず、頑張って生きて来た。

                     プロローグ  『腐った酸素でも貪る様に吸うには、理由があった』  今日もまた同じ夢を観た。正確には足掛け25年位に渡って、同じ夢を観続けていると言った方が正しいのかも知れない。  大体30歳位から見始める事になったその夢の中身は、最近ではクローゼットと言う名前に変わった。昭和の匂いが立ち込める押入れの中の出来事である。  場所や色、本当に幽(かすか)に聞こえる音も含めて、その夢は何時いつも同じシーンから始まる。押入れの壁には、ほぼ正方形に近い形の

          [小説] 『鱗』〜ウロコ 1話〜3話。少なからず、頑張って生きて来た。

          小説の中の時間と、映画の時間軸

           1年、10年、若しくは20年以上の物語の中には、数多くのストーリーが存在している。  方や、その原作の元、忠実に再現された映画は、僅か1時間半から、2時間で終わってしまう。とは言え、その限られた時間の中で、鮮やかに表現するのは大変な努力と、エネルギーが必要で、「口では何でも言えるからさ!」と、そんな言葉を聞く一方で「言葉」の難しさに、心底頭を抱え、もっと上手く描けたら、どんなに楽かと思う。  自身、今まで生きてきて、小説の世界とは、かなり離れた所にいた。有名な作家の本は

          小説の中の時間と、映画の時間軸