見出し画像

発達障害の夫のイライラの原因を知る

発達障害の特徴をもつ夫が、「イライラする原因がわかってから、だいぶ楽になった」というようになりました。

夫は自分が発達障害とわかるまで、よくイライラして気持ちがコントロールできなくなっていました。パニックを起こし、怒鳴り散らしたり物を投げて壊したり。わが家の床には、夫が椅子を投げた時にできた傷が今でもあります。

こだわり行動

夫は、自分の特徴を、発達障害の本を読むことや主治医からの話を聞くこと、私から伝え聞くことなどで知っていくようになりました。ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉症スペクトラム症)には数多くの特徴があります。

その中で、夫がイライラすることにつながる発達障害の特徴は「固執性の強さ」でした。その特徴は「こだわりの強さ」とも言われています。この場合の「こだわり」は、「私はコーヒーの淹れ方にこだわっています」という時の意味ではありません。発達障害の特徴のこだわりとは、

「自分なりのやり方を通そうとする、こだわり行動」

のことを指します。例えば、

・自分のこだわりやルール、やり方が通らないと怒りがわいてくる

・周囲の状況が変わっても、自分のやり方を変えることができず、同じやり方を通そうとする

・想定外のことが起きると、怒りがわいたり、パニックになったりする

・臨機応変の対応が苦手で、決まったやり方を繰り返すことに安心する

などの特徴があります。

夫はここに挙げたすべての特徴が当てはまるといいます。

他の記事「発達障害の夫と息子」で書いたように、夫は数か月前、いつものように15時に息子を病院へ連れて行こうしていました。しかし、息子の機嫌が悪くなり、出発時間がずれて、想定外の事態になりました。すると、怒りがわき、イライラが止まらず、パニックになり、攻撃的になり、息子に対して声が枯れるほど、暴言を吐きました。

また、夫は自分なりの決まったやり方を通そうとするので、旅行先では特に大変です。

旅行先で、急に家族が「ここに寄っていこうよ」というと、夫は自分の予定にはないスケジュールなので、戸惑います。それでも、子どもたちが「行きたい!行きたい!」というと、父親として頑張ろうと思い、立ち寄ります。けれども、そのがんばりは長続きせず、滞在時間が長引くに連れ、どんどん機嫌が悪くなります。臨機応変な対応をしたことで予定が狂い、自分が思っていた通りにならず、ストレスが高まっていくのです。
そんな時、子どもがジュースをこぼすとか、ケンカしてうるさくするとか、何らかのきっかけで夫の気持ちは爆発し、攻撃的になり、怒鳴り散らし、家族みんなが嫌な思いをすることが度々ありました。

渋滞は最悪条件

「こだわり行動」の特徴のなかで、「渋滞」は最悪な条件です。予定通りとは程遠く、いつまで続くかわからず、自分の思い通りにならない状況に、イライラは止まりません。

コロナ禍以前、私はお盆とお正月休みに、夫が休みになるよりも早く、子どもたちを連れて飛行機で実家へ帰っていました。土日の出発が多く、夫に空港まで送ってもらっていました。その度に渋滞に巻き込まれ、高速道路や下道など、変更しながら空港へ向かうのですが、夫はだいたいいつもイライラし、不機嫌になっていました。

途中、「もう車じゃ間に合わない。〇〇駅で降ろすから準備しろ」と怒鳴られ、準備していると、結局、駅を素通りして空港へ向かいます。「またか。こんなに怒鳴り散らされるなら、降ろしてもらった方がいいのに」と私は心の中で思っていました。夫は空港への道中、ずっとイライラしっぱなしです。ひどい時は、舌打ちを30分以上し続けたこともありました。そんなこんなで、空港に着く頃には怒りがマックスになり、私と子どもたちは夫に怒鳴られながら、急いで荷物を降ろし、怒りに満ちた夫の車が去る様子を、やれやれという思いで眺めることが多くありました。

この頃は、夫が発達障害とはわかっていませんでした。もし、わかっていたら、空港へは高速バスで行っていたと思います。発達とわかる以前にも、何度か高速バスで行こうとしたことがありますが、夫は

・高速バスは料金が高い

・荷物が重く、子どもが小さくてバスでの移動は大変だから、俺が送る

と言って、車を出してくれていました。今なら、その申し出をきっぱり断ることができます。

「あなたの発達のこだわりの特徴から、渋滞は強いイライラを引き起こすことがわかったので、高速バスで行きます。送ってくれると言ってくれてありがとう。」

夫のイライラ克服法

夫はこのようなイライラを繰り返してきました。きっと、イライラした後はとても疲れていたと思います。当時、私は夫の特徴を全く理解できていなかったので、とても苦しみました。

夫はいま、発達障害の特徴を学び、イライラを克服しようと努力しています。

まず、夫は、「発達の特徴からイライラしている」事実を、客観的に理解できるようになりました。
イライラは自分の発達の特徴の「思い通りにならないこと」が原因とわかったことで、これまでのような大きなパニックや攻撃的な言動が出にくくなりました。
もちろん、完璧に克服できているわけでありません。大きなパニックになりにくくなったということです。先にお伝えした、病院へ行くときのパニックは数か月前のできことです。

それでも、発達の特徴が原因でイライラしてしまうのは仕方がないと認め、イライラする度に

「イライラしているのは、自分の特徴のせいだ。自分の思いが通らないから、いま、イライラしているんだ」

と原因を確認し、受け止めるられるようになってきたことは大きな変化です。そのため、イライラの加速を抑え、次のステップの攻撃性へ発展しにくくなりました。夫はずいぶん楽になったといいます。

家族の克服法

また、家族にできる克服法もあります。

・旅行先では、急な変更をなるべくしないように、事前にたくさん調べて、細かいスケジュール表を作って共有する

・お父さんがイライラしている時は、治まるまで距離を置いて待つ

・お父さんがイライラして、暴言を吐いたり、攻撃的な行動をとったりしても、深く考えず、発達障害の特徴のせいだを割り切って、流すようにがんばる

こうすることで、お父さん(夫)のイライラの原因を知り、お父さん(夫)は悪気があってやっているわけではないと、受け止める練習ができるのです。

発達障害の特徴の「こだわり行動」について、もう一つ理解しなくてはいけないことがあります。それは、

・自分の立場からしか物事を考えづらく、相手の立場に立てない。

・自分中心の捉え方をしているため、本人は周囲の人に嫌な思いをさせていることがわからない

と、なんとも困った特徴です。これも、本人に悪気があるわけではないので仕方ないのですが、家族はなかなかしんどいです。

言葉で丁寧に気持ちを伝える

この時の克服法は、「言葉で具体的に丁寧に、気持ちを伝える」です。

例えば、旅先で細かいスケジュールを組んだにも関わらず、どうしても急な変更をしなくてはいけなくなったとします。夫は予定通りにいかず、イライラしてしまいますが、「これは自分の特徴のせいだ」と受け止め、イライラを落ち着かせようと努力します。

少し時間が経って、私が夫に話ができるようになったかなと思ったら、

「今話せる?」

と聞きます。

「いいよ。」
 
と言われたら、

「急な変更になって困ったよね。対応してくれてありがとう。ただ、子どもたちも私も、この旅行をとても楽しみにしていたの。あなたにイライラされると、みんなの楽しい空気が重くなって、せっかくの旅行気分が台なしになってしまうから、それはわかってね。」

と伝えます。伝えられた夫は、どう思うでしょうか?

「そういわれても、イライラしてしまうのは特徴だから仕方ないじゃないか。無理なことを言わないでくれ」

と怒るでしょうか?それとも、

「自分がイライラすると、家族に迷惑がかかるんだな。なるべく、イライラを早く受け止め、抑えられるようにがんばろう」

と思ってくれるでしょうか?

状況によって、どちらも起こり得る反応かなと思います。

どちらになるか、わかりませんが、もし家族が嫌な思いをすることを伝えていなかったら、どちらの選択肢もないのです。察することができない夫の特徴を理解し、こうして言葉で伝える練習をして、克服しようとしています。

イライラVSイライラ

イライラする夫に、イライラした反応を返すと、最悪な事態を招きます。
イライラしている夫は、次のパニックから攻撃性へと進展していく爆弾を抱えています。それなのに、夫にイライラされたことに私がイライラすると、どうなるでしょうか?
夫のイライラは増幅し、パニックは助長され、あっという間に攻撃性へと形を変え、大爆発まで行ってしまう可能性が高まります。

それでだけは、絶対に避けよう!と心に誓っています。

あなたの近くに同じ特徴を持つ人がいたら、イライラにイライラ返しすることだけはしないでくださいね。きっとこうなります。

「なんで楽しみにしていた旅行なのに、そんなにイライラするのよ!ちょっと寄り道してっていっただけじゃない!どうせ通り道だし、大したことないじゃない。あんなに子どもたちが楽しそうにしてるのに、どうしてそんなに不機嫌になるの?意味わかんない。あなたって本当に最低ね。」

「なんだよ、せっかく寄ってやったのに。いい加減にしろよ。運転してるのは俺だぞ。おい、お前ら、もう行くぞ。早くしろ!!」

「まだいいじゃない、もう少し遊ばせてあげなよ」

「うるさい!とにかく急げ!!置いていくぞ!!」

発達の夫(父親)を理解し受け入れるのは大変です。離婚が多いのもわかります。それでも、私は発達障害の特徴を学び、家族みんなが穏やかに暮らせるようにこれからもがんばろうと思っています。

発達障害は本人の生きづらさだけではなく、周りの人にも大きな影響があります。夫と息子が発達障害と診断され、気持ちがスッキリしました。発達障害の特徴を理解し、自分の性格を知り、感謝の気持ちを持つことで、前に進むことができています。一人でも多くの方に、私の経験が役立てますように。