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もの草子#4「悪とは、何だ。悪とは、誰だ。」

初めに

 すっかり冬に向かって助走をつけ始めた天気に振り回される今日この頃、いかがお過ごしだろうか。久しぶりの投稿にも関わらず、また天気デッキで話始める辺り上手なスピーチとかできないんだろうね、俺は。まあ今のところ民衆を扇動する予定はないのでダイジョーブダイジョーブ。ところで読者諸君は最近どんなエンタメに触れているだろうか。今回の執筆にあたって正直取り扱うネタを決めあぐねていた。ここしばらく話題は盛りだくさんだったが、逆に絞れず…ジャンプラ版『左ききのエレン』完結とか、アニメ版『ダイの大冒険』完結とか、オベロン本届いたとか、『水星の魔女』『ロマンティック・キラー』始まったねとか、エトセトラ。言い訳はこの辺にしておこう。あと、初見の読者には断っておくが、私は終始こんな感じなので悪しからず。
 さて、気を取り直して、前置きを続けよう。今回取り上げるのは『仮面ライダーBLACK SUN』だ。旬な作品なので今のうちに記事にしようと筆、もといマウスを執ることにした。こうなったのも全部ゴルゴムの仕業…

『仮面ライダーBLACK SUN』とは?

 ひとまず恒例の作品情報紹介から。『仮面ライダーBLACK SUN』は仮面ライダー生誕五〇周年を記念して作られた、“特撮”の映像作品である。仮面ライダーというと所謂「ニチアサ」で放送されている子供向けのモノといった認識が強いかもしれない。そこで、今回の『BLACK SUN』はあえて大人向けのライダーを意識して制作されたという。これは近年人気を博した『仮面ライダーアマゾンズ』の影響も大きいだろう。名前からも分かる通り、本作は『仮面ライダーBLACK』のリブート作品でもある。一部の登場人物や設定を引き継ぎつつ、よりダークに、現代版アレンジした形となった。(まあ、原作のドラマも漫画も大分ダークらしいが。私は原作未履修なので詳しくは説明できない。あくまで、『BLACK SUN』の記事と割りっきてくれ)公式サイトにあるあらすじは以下の通りである。

創世王ー怪人の頂点たる存在。
その命が尽きる時、
選出された世紀王が
力を継承する。

時は2022年。
国が怪人と人間の共存を掲げ、
半世紀が過ぎた頃。
人の姿で暮らす怪人たちは虐げられ、
人間との衝突を繰り返す日々の中、
両者の溝は深まるばかりであった。

騒乱の時代、
調和を夢見る少女は
一人の男と出会う。

『仮面ライダーBLACK SUN』 公式WEBサイト

もう少し噛み砕いて説明しよう。怪人と人間との調和を求めて活動する少女和泉葵はある日怪人に襲われたところを一人の男に助けられる。その男の名は南光太郎。またの名を怪人BLACK SUN。くたびれた中年にしか見えない彼には50年前から続く因縁があった。幼馴染である秋月信彦こと怪人SHADOW MOONと共に悲しい宿命に囚われた光太郎は、再び闘いに身を投じていく…という話だ。うん、よりわかりにくくなったかもしれない。
 本作はAmazonのサブスクリプションサービス、amazon prime videoで独占配信されている。全10話、一本あたり40〜50分という構成なので、3日ほどあれば完走できるだろう。主演を務めたのは西島秀俊(南光太郎役)と中村倫也(秋月信彦役)。実力派俳優をメインに起用したことでも話題を集めた。監督は白石和彌氏。

※ここから先は『仮面ライダーBLACK SUN』本編のネタバレを含みます。
ご注意ください。

感想

❶ストーリー

 「大人向け」を謳うだけ合ってシリアスもシリアス。描写も大分グロいし救いのない展開が終始続く。結局この物語で幸せになれたのって、望み通り怪人になっただけでなく復讐を遂げたニックと総理になった官房長官くらいでは?そして、彼らも人の世が作り出す負の連鎖の一部に過ぎないのか…最後も希望に向かって終わると思いきや、かつてのゴルゴムと同じくレジスタンス的に世界と戦おうとする葵。ピリオドを示すようなマークを光太郎に刻んだ彼女でさえ「永遠に戦い続ける」という呪縛に囚われる。でも全体的に風刺的というか、最後まで徹底して視聴者に問いかけるような作風はわりかし良かったと思う。「悪とは、何だ。」「悪とは、誰だ。」のキャッチフレーズが一貫してテーマになってるんだなぁ、と。このコピー、「悪とは」に対して「正義とは」って並べないところが個人的には好きなポイントだ。結末まで含めると、登場人物はみんな見ようによっては「悪役」だ。でも誰が本当の悪か断言することはできない。社会の仕組みを利用して甘い汁を啜る政治家も悪だが、それに対しテロで対抗しようとする葵たちも正義とは言い難い。よく「それぞれに正義があるのが戦争」なんて言い回しがあるが、この作品は逆で「それぞれが少なからず悪性を持っている」という印象を受ける。どこかの側面から見れば必ず「悪く」見える描き方をしている、というか。
 少し勿体無いなーと思ったところは光太郎の物語。そっちをもっと徹底的に掘り下げた方が観たかったかも。監督の撮りたいものとは違うだろうけど。おじさんヒーローと子供の絆と別れの物語とかじゃあ「大人向け」ではないからなぁ…でも光太郎と葵の関係性が胸アツなところだと思うんだが。光太郎が葵に教えたのって自分の身を守る術だったし、実際それが最終回のくだりに繋がる良い伏線なのに、結局葵はその「戦い方」を人を殺す手段にして子供たちに教えちゃうのが本当に悲しい。その救いのなさも含めて、「歴史は繰り返す」ってことなんだろうが…悔しいなぁ。

❷アクション

 特撮の醍醐味でもあるアクション。これについては、ちょっと微妙だったかもしれない。シリアスかつリアリティを追求する上で、あの無骨なまでのステゴロカミツキ殺法は味があって良いと思うが。昨今の仮面ライダーの派手さに慣れていたのもあって少し味気なく感じた。10話だけ思い出したようにヒーローアクションし始めたから余計気になった。昭和ライダーでももうチョット派手なアクションするかなぁ。確かに「ライダーパンチ!」とか叫ぶのは雰囲気壊しちゃうからやめた方がいいけど、なんか他にやり方なかったのか…ただ、怪人態の時が長かった分、ヒーロー感の薄い、泥臭いアクションが合っていたところもあるとは思う。別に嫌いではなかった。

❸役者・デザイン

 仮面ライダーのデザインに関しては、正直どストライク。ああいう怪人らしい異形さを残したライダーってテンション上がるよね。結局「仮面ライダーは悪の組織に改造されたけど、正義の心を持って戦う怪人」っていう1号の設定は視聴者の中で大きな意味を持つわけで。やっぱり、そういう視点から語られる仮面ライダーというのには弱いんですよねぇ…個人的にはBLACK SUNの方が好き。黒い革のライダースーツのようにも見えて渋いんだ。怪人態も捨て難い。
 俳優に関しては作品情報で述べた通り、実力派俳優である西島さんと中村さんがメインに起用されてる分、演技力は安定してる。ニチアサの新人俳優がやってるのも一年通しての成長が感じられて好きなんだけどね。西島さんは普段のイケオジって雰囲気からすっかり小汚い中年になってて驚いた。けれど、芯の強さは残っていて、光太郎がただの薄汚れたオッサンではなくヒーローであるというのが言外に感じ取れる良キャスティングだと思った。ただ、それよりも私の心を掴んで離さなかったのが信彦役の中村倫也さん。最近よく名前を見かけることはあったが、あまり知らない役者(ドラマ『アオイホノオ』で赤井さんの役やってたくらいしか演技見たことない)だった。しかし、今回の『BLACK SUN』で本格的にその演技を見て虜になってしまった。まず、顔が良い。私は純然たる大和男児だが、正直、惚れる。そして、その影のありながらも甘いマスクと緩急つけた話し方、内に秘めたる熱を感じるような芝居がSHADOW MOONのカリスマ性を120%くらい引き出している。この作品を観ての一番の収穫は彼の魅力に気づいたことかもしれない。他のキャストの中だとルー大芝さんと三浦貴大さんが印象的だった。ルー大芝さんは「ルー語の人」くらいにしか思ってなかったのだが、子憎たらしい感じの芝居が最高だった。三浦さんは、というかビルゲニアは最初「なんでコイツだけ顔出てんだよ」とか思ったが、最後の方はなんかクセになっていた。とりあえず、観た人たちから愛されキャラ認定されているのも分かる。

結論

賛否両論あるのも分かる。ぶっちゃけ、ここまで来たら好き嫌いの範疇。いや、それをいっては元も子もないのだが…ともかく、万人受けする傑作というよりは刺さる人には刺さる作品というのが妥当なところかもしれない。とりあえず、10話の前半までは結構楽しめる。ラストをどう受け取るかで良し悪し別れるよなぁ…私は観終えた直後はナシ派だったけど、しばらく経って愛着が湧いてきた。良くも悪くも感情が揺さぶられる作品ではあったのかな。

最後に

久しぶりの更新だった『もの草子』、いかがだっただろうか。今回は批判的な感想になったけど、たまには良かろう…次は読書記録か、ガンダムの話書こうかなぁ。また見かけることがあれば、是非暇つぶしに覗いでみていただければ嬉しゅうございやす。それでは、アデュー!!

#日記 #つぶやき #特撮 #仮面ライダー #ドラマ #感想

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