「もうひとつの恋」 俵万智+浅井慎平
「歌は心が揺れなければ生まれない。恋は心の揺れそのもの。恋は歌の種そのもの。」
「もうひとつの恋」 俵万智+浅井慎平
この本は短歌の俵万智さんと、写真家の浅井慎平さんとのコラボ。
僕は俵さんの短歌、浅井さんの写真が大好きです。この本は折に触れて、読み返していています。そして恋する空間を感じています。
月刊誌の連載を本にしたもので、俵さんが歌を作り、それに返歌するように浅井さんが写真を撮ったのだそうです。
歌の説明としての写真ではなく、それぞれが独立しています。それがこんなにも素敵で、両者のイメージが合うのだろうかと思いました。
幻想的で不思議な、2つの要素が融合し、
歌と写真がマリアージュしています。
本のテーマは恋。
歌も写真も、恋が心を揺らせます。
とくに好きな歌を数首、以下に。
電話にて風邪の具合を告げながら
安心させたい
心配させたい
約束の場所を決めたら
こんなにもゆっくりやってくる
木曜日
ハイヒールを
磨けばふいにこぼれくる
君と歩いた砂浜の砂
「それだけです」と
書いた手紙の余白には
それだけでない心がにじむ
もう次に会う日のことを考えている
目の前に君がいるのに
コンサートの切符を二枚
一枚は無意味という意味をもつ
その日まで
うつむけば
答えのように出る涙
泣いて流れる何もないのに
たくさんの歌。
添えられている写真。
それは
詩のような写真であり、写真のような詩でもありました。
短い言葉と、瞬間を切り取った写真って
なんと心を浄化させてくれるのでしょう。
【出典】
「もうひとつの恋」 俵万智+浅井慎平 角川書店
いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。それだけで十分ありがたいです。