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「バイバイまたね」 銀色夏生



「バイバイまたね    大好きでした」



「バイバイまたね」 銀色夏生



春です。


女優の吉高由里子さんが、小学6年生の
ときの写真に添えられた「春」


木々の緑や咲き誇る花は、瞬間に春を
感じさせ、時計の針が止まったかの
ようにモノクロームと色彩の間に入り、
少女の微笑と沈黙を横切ります。


別れを内包した「春」

「出会い」が私を呼んだ時

「別れ」も一緒に並んでた

「別れ」がいるのはわかってたけど

「出会い」はとても素敵だったので

「出会い」と楽しく遊んだ



「別れ」はぴったりくっついていて

  どんな時にも視界にはいった

「別れ」に向こうへ行ってと言っても

「別れ」は黙ってくっついている



「出会い」が去ってしまった時

「別れ」は申し分けなさそうに

  私をじっと見つめた

  だから私も見つめ返した


忘れてないよ

忘れてないよね



バイバイ

またね

大好きでした



「またね」と言って別れた。
もう会えないとわかっていたけれど


「またね」 と言わないと
自分が壊れてしまうとわかった。


「大好きでした」


時が流れてからの追伸は、
大人になって過去へと投函する。


銀色夏生さんの詩は、なつかしい人に
感謝の気持ちを持って出会えます。

何かを思い出してか

映画か本か街角か

夢でみたことだったか

覚えてないけど

なつかしい人に出会ったという

喜びの残像が

今も 胸の奥でゆれている


胸の奥で確かにゆれています。
ゆれつづけています。


微弱な振動をページをめくるたびに
感じます。


喜びの残像が、胸の奥で
ゆれつづけているかぎり

バイバイまたね

また遊ぼうね


また旅をしよう


また一緒に夢を見よう


いつかまた




【出典】

「バイバイまたね」 銀色夏生 角川書店


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