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「逃げない力」 大橋未歩


「自分が何をしたいかをはっきりと認識し、それに向かって夢中で挑戦したり、取り組んだりすれば、それはいつのまにか「私にしかできない仕事」になっていると思うのです。」



「逃げない力」 大橋未歩



「逃げない力」というタイトルに惹きつけられ、この本を手に取りました。

とても強い意志の感じるタイトルで、どんな内容が書かれているんだろうと、ページをめくってゆきました。


大橋未歩さんは、元テレビ東京のアナウンサー。


大橋さんは幼い頃、悩み深い子どもだったといいます。


中学・高校生の頃は、人前で話すのが苦手で引っ込み思案な学生だったそうです。


それに


周りの空気を気にしすぎて、友達と一緒にいる時は状況を俯瞰してみてしまうタイプだったそうです。


そんな大橋さんが、どうしてテレビのアナウンサーを志したのか?


それには


2つの理由があったんです。


1つ目は高校時代に、学級会の司会をしていたときのこと。


ある時、クラスの意見が真っ二つに割れてしまいました。


1人の女子生徒が折衷案を出しましたが、他の生徒に一蹴されてしまいます。その女子生徒は泣き出してしまいました。


そのとき

私はとっさにこう言っていました。「クラスをまとめようとしてくれた彼女の優しさに、拍手!」


すると


クラス全員が拍手してくれて、その場が収まりました。大橋さんは司会の「ひと言」の力を感じました。

「司会のひと言で、その場の流れを変えることができる。司会のひと言って大きいんだな!」


2つ目は、1992年のバルセロナオリンピックでのこと。


「いままで生きてきたなかでいちばん幸せです」


当時14歳・競泳の岩崎恭子選手が、金メダルを取った時の言葉です。この言葉を聞いて、彼女の言葉がストンと落ちてきました。大橋さんは強く心を揺さぶられました。


「どれだけ大変な努力をしてきたか」ということが、岩崎さんのその言葉から感じられ「オリンピックってすごい舞台だ!」と、大橋さんはオリンピックに強く惹かれたのでした。


しかし


スポーツの英才教育を受けてきたわけではない大橋さんは、考えます。「選手としては無理でも、他の道でオリンピックに行く方法はないだろうか?」と。


そうして、1つ目の理由とともにアナウンサーの道へと進んでいきます。


テレビ東京に入社が決まり、半年で週末のスポーツニュースの担当になったのでした。


入社3年目、夢だったオリンピック。
アテネオリンピックが近づいてきました。


当然、大橋さんはアテネに行けると思っていましたが・・・

「大橋はアテネには行けないんだよ」


理由は、大橋さんがスポーツ局内で「生意気な新人だ」だと思われていた
からです。


あまりのショックにうちひしがれ、大橋さんはしばらく悩みました。


子どもの頃からの夢。
オリンピック。
あきらめられません!


大橋さんは先輩の佐々木明子アナウンサー に相談します。

「決定は覆らないかもしれないけれど、後悔しないためにも自分の気持ちだけは伝えておいたら」


と佐々木アナウンサーは、アドバイス。


オリンピック番組のプロデューサーにダメもとで伝えます。

「私がアテネに行けないことは知っていますが、オリンピックは夢であり目標です」


すると、数週間後


他のアナウンサーのスケジュール調整がつかず、大橋さんにアテネ行きがまわってきたのです。


思い続けた願いが叶いました。


きっと、思いを行動に移して言葉として伝えたことが、良い結果につながったのでしょう。


でも


このあと、またこの言葉をプロデューサーに言われるのです。

「大橋とは一緒に仕事をしたくないスタッフもたくさんいることを覚えておけ」


大橋さんは、これまでちっぽけなプライドを握りしめていた自分の何もかもが崩れ落ちた気がしました。


しかし


この言葉で大橋さんは、変わりました。

アテネ五輪ではまず、自分のことよりも、周りのスタッフを最優先に考えて行動するように心がけました。

(中略)

すると、驚くようなことが起きたのです。

オリンピックが終わって帰国すると、社内中の人から「よく頑張ったな」と声をかけられ、私への評価が一八○度変っていたのです。


「逃げない力」とは、逆境をバネにすることで、人間的な深みを獲得して「現状を変える力」なのではないかと思いました。

スタッフへの思いやりや尊敬の念が出てくると、自然と会話も変ってきました。

自分とは異なる意見を言われた時も、「たしかにおっしゃる通りですね」とまずは相手の意見に耳を傾け、いったん受け入れてみる。

そのうえで、自分の考えを言う。相手を尊重することを覚えれば、会話がお互いにとって気持ちの良いものになることを学びました。


このあとも組織の中で仕事をしていく上で、さまざまな壁にぶつかります。


番組の発言で週刊誌におもしろおかしく書かれてしまったり、番組の企画でグラビアに挑戦させられたり、大橋さんの本意ではないこともやってきました。

つらさや悔しさをバネに次の仕事につなげていく強さを与えてくれたのも、こうした経験があったからだと思います。


いつも逃げずに、辛いこと、悔しいことからも意味を導きだし、力にしていっているのはすごいことです。


大橋さんは仕事の悔しさから勉強に打ち込み、ファイナンシャルプランナーの資格を取得したり、スポーツの可能性を次の目標にすることから、早稲田大学大学院に入学して、スポーツビジネスを学んだりしました。マイナスのことを常にプラスのエネルギーに変えたことで、自分にしかできない仕事に変化させました。

自分が何をしたいかをはっきりと認識し、それに向かって夢中で挑戦したり、取り組んだりすれば、それはいつのまにか「私にしかできない仕事」になっていると思うのです。



【出典】

「逃げない力」 大橋未歩 PHP研究所


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