【絵本】「ぶたばあちゃん」 マーガレット・ワイルド文 ロン・ブルックス絵 今村葦子訳
「ぶたばあちゃんと孫むすめは、ふたりが知っている、いちばんいいやりかたで、さよならをいいあいました。」
「ぶたばあちゃん」 マーガレット・ワイルド文 ロン・ブルックス絵 今村葦子訳
絶対に避けられなくて
100%わかっていること
それは
誰しもが必ず死を迎えるということです。
必ず別れがやってくることです。
わかってはいるし、それを考えると苦しくなります。
切なくなります。
哀しくなります。
それが愛する人なら、何倍にも、何十倍にも・・・
この絵本は
生きている人と、死にゆく人との「心の温度差」が、ジワ~ッと縮まり、変わらなかった日々の暮らしがある日突然、終わってしまうんだということをリアルに感じさせられる作品でした。
それゆえに、「生きることへの力」
「命の尊さ」がグッと心に迫ってきます。
その「生」、「死」、「命の尊さ」を
ぶたばあちゃんは、孫むすめに何も語りません。
ただ、ただ 体現しているのです。
ただ、ただ「死」に向かって準備していくのです。
そして
孫むすめも
「死」を受け入れる準備をしていきます。
二人は、家のしごとを分け合いました。
朝ごはんは孫むすめがつくり、
昼はばあちゃんがつくり、
夜はふたりでいっしょにつくる。
そうやってふたりで仲良く、寄り添い暮らしていました。
ある朝ぶたばあちゃんは、いつものようには起きてきませんでした。
孫むすめは、とまどいます。
ばあちゃんがベッドでごはんを食べるなんて、今までしたことがなかったからです。
孫むすめは、ばあちゃんのベッドまで朝ごはんを運びました。
ばあちゃんは、眠ったままです。
ばあちゃんは、昼ごはんも、晩ごはんのときも、眠りつづけたままです。
(孫むすめは、涙がこぼれそうなさみしそうな表情をしています)
次の朝
ぶたばあちゃんは、まだ治っていないのに起きてきました。
と、ばあちゃんはいいました。
と、孫むすめは聞きました。
ばあちゃんは、返事をしませんでした。
でも
孫むすめは、とっくに感じとっていました。その返事の答えを。
ぶたばあちゃんは借りていた本を
図書館に返して、次の分は借りませんでした。
銀行に行き、お金を全部引き出し、口座を閉じました。
すべての支払いも、済ませました。
家に戻ると、孫むすめの財布に引き出したお金をしまって
と、ばあちゃんは孫むすめにいいました。
孫むすめはにっこりしようと思ったのに、
口元が「がたがたふるふる」とふるえだしました。
それは
孫むすめの生まれてから、一番難しい約束でした。
そして
ぶたばあちゃんと孫むすめは、いっしょに散歩にでかけました。
ばあちゃんは
木々や、花々や、空などを全身で見て楽しみました。
池にうつっている東屋を見たり、音や、匂い、雨を味わいました。
すべてをかけて
こころゆくまで
家に帰ってから孫むすめは、ばあちゃんを寝かせてあげました。
「もちろん」 だと、
ばあちゃんはこたえました。
今夜
孫むすめは、ばあちゃんの
ベッドにもぐり込んで、
ぶたばあちゃんを抱きしめました。
ぎゅうっと
かつて、ばあちゃんが
抱きしめてくれたように。
孫むすめは、ばあちゃんがこわくないように、さみしくないように、さよならの代わりにぎゅうっと抱きしめました。
最後のページは、東屋の前で
孫むすめが空を見つめている絵で終わります。
空へ帰ってゆくぶたばあちゃんを
見送っているかのような、
やさしいまなざしがとっても印象的でした。
この本の絵が水彩画で、ほんわかしていて本当に素晴らしく、ばあちゃんと
孫むすめのあったかい関係を描写しています。
とても切ない物語ですが、
ほんわかやさしい絵を見ていると、心が安らぎました。
表紙のカバーの開けたところには
こう書いてありました。
【出典】
「ぶたばあちゃん」 マーガレット・ワイルド文 ロン・ブルックス絵 今村葦子訳 あすなろ書房
いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。それだけで十分ありがたいです。