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古書店 トンカ書店さん


毎朝起きてから顔を洗い歯を磨き、それから朝食を食べる前に新聞を開きます。


昨日も同じルーティンで新聞の見出しをザッと見ていくと、ふと目が留まりました。


まず、写真に目が留まりました。


トンカ書店さんの2Fに掛かっていた看板の青いバックに白いフォント。
(そこを通る時は、必ずその看板を見上げていました)


神戸元町トアウエストにあった「ザックバランな古本屋 トンカ書店」は、今は場所を移転して「花森書林」という名前に変わっています。その新聞記事は、花森書林さんの店内に掲示された「トンカ書店」の看板の写真でした。


久しぶりにトンカ書店さんの看板を見たとき、懐かしさとともに、「何かイベントがあるのかな?」と思いました。


その矢先に、「亡き姉」という文字が目に入ったのです。




その瞬間、体が固まりました。
新聞のその先を読むのが怖くなりました。


恐る恐る目を動かしていくと


店主の森本恵さん(43)が病気で5月にお亡くなりになったとありました。(旧姓・頓花恵さん)


その後森本さんに病気が見つかったが、周囲に心配をかけまいと笑顔で店に立ち続け、早すぎる死も本展初日まで伏せられていた。

神戸新聞 8月9日朝刊より


まさか…まさか…


「トンカ書店」にまつわるイベントを「花森書林」で行う記事なのかと思っていたら、店主の森本さんをしのぶ展覧会だとは。


僕は、約1年前noteで「女子の古本屋」の紹介をさせていただきました。大好きな本で購入当時なんども読み返しました。


それからトンカ書店さんに行き、女子の古本屋のイベントにも行きました。
妻が「トンカ書店でやってる切り絵の展示」が見たいと言ったときは、いっしょに見に行きました。


森本さんは笑顔の素敵な店主さんでした。まだ小さかった子どもを連れて行ったときのあたたかいまなざしは、今でも瞼の裏に焼きついています。


子どもが好きだったんでしょうね。子どもにやさしい声を掛けていただき、本をレジに持って行った時に森本さん(当時は頓花さん)と少しお話もできました。


トンカ書店さんはそんなに大きくない本屋でしたが、いつも本がたくさん積まれていました。レトロな雑貨もありました。そして、店主の魅力が反映された素敵な本屋でした。時間が許せばずっとそこに居たいと思う本屋でした。たくさんのお客さんに愛されているのが伝わってくる古書店でした。


花森書林さんにも2回ほど行きましたが、その後はコロナウイルスが流行し、しばらく元町方面には行けていませんでした。


コロナ禍も明け、また近いうちに花森書林さんへ行こうと考えていた矢先の新聞記事。


昨日は一日、ふっとしたときに「トンカ書店」と店主の森本さんのことが頭を過りました。


新聞記事にはこう書いてありました。


頓花さん(弟さん)は来店客から連日励まされているといい、「とにかく人が好きな姉だったから、皆さんにも支えてもらえたと思う。

商売はいつも二の次で、自分が一番楽しんでいた。これからも人が集い、つながる場を守っていきたい」と誓う。

神戸新聞 8月9日朝刊より


よかった。森本さんが18年間、古書店を楽しんでいたと知って。


そして


弟さんが、この古書店を守ってくださると知って。


この新聞記事の前日、僕はシンクロするようにある本屋の物語(小説)を読んでいました。それはちょうど、病気の店主の代わりに本屋を引き継ごうと決意した本好きの青年の言葉でした。


「誰かの大切な居場所は、守らないといけないんだ。守れるときにはね」

「桜風堂ものがたり」村山早紀 PHP研究所より


ある古書店の歩みを振り返る展覧会「トンカ書店×花森書林ーはじまりは2005年」が花森書林さんで2023年8月21日まで開かれています。


ザックバランな青い看板を見るのが、こんなに悲しい日になるなんて…


でも


暗い階段を上がった先にパッと明るく広がる、たくさんの本が積まれたあの日のザックバランな「トンカ書店」に、もういちど逢いに行きたいと思います。



【出典】 

 神戸新聞 8月9日朝刊


いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。それだけで十分ありがたいです。