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新人ライターや編集者に教えている「その企画の根本に熱量はあるか?」
今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。
先日、私の数少ない友人に、とある映画プロデューサーがいるのですが、彼と久々に飲みに行きました。
「最近の映画市場ってどうなの? 配信の影響とか受けてない?」と聞いたところ、それほど変化はないとのこと。
映画というのは、いつの時代も若者が友達に会うきっかけだったり、デートに誘うきっかけだったりするので、変わらず若者が劇場に足を運んでいるのだとか。
なるほど、劇場に行くのは、映画のコンテンツだけがきっかけではないわけですね。出版人としては羨ましい限り。読書は基本ひとりの体験なので、友人とのイベントにはなりづらいし、きっかけとしての間口は狭いのかもしれません。
ただ、映画は若者中心のコンテンツだけに、同世代(おじさん)のプロデューサーで、現在も自分で企画を動かしている人は少ないそうです(皆、劇場や映画館の責任者として悠々自適に暮らしているのだとか)。
大手の日本映画はもちろん、世界的ヒットを上げている韓国の人気作のプロデューサーも30代が多いそうで、若者に受けるものは、若者が考えるというのが必然なわけですね。
ただ、大手にいる若いプロデューサーたちは映画づくりのノウハウが不足しているため、彼のような外部のベテランがサポートにつく体制が組まれることが多いのだとか。
なるほど……ノウハウがないところに、外部の熟練者がサポートに入るというのは、私自身も同じようなことをしているので出版界も似ているな〜と感じたのでした。
映画とは逆に出版のターゲットは高齢化が進む
さて、出版の場合は映画と違って、どんどんメインターゲットの高齢化が進んでいます。というのも「若者ターゲットだと本が売れない」というのが数十年前から言われ始め、制作側の企画として、そもそも若者向けの企画が立てづらくなったというのがあります。
「売れないから敬遠」みたいなことをしていたツケが、今の読者層の高齢化を招いたのかもしれません。
先ほどの映画プロデューサーの話とは逆に、ターゲットが高齢化してくるにつれ、書籍編集者の年齢もどんどん上がってきているのは事実(私も含め……)。
以前の記事でも書きましたが、出版点数自体が減少しているので、若い編集者たちのチャンスが減り、もっといえば書籍編集を生業とする若い世代の編集者自体が少なくなっている気がします(その分、デジタル媒体などに人材が流出)。
最近は出版点数を減らし、売れる本だけを大々的に売り伸ばすようなセールスで、売り上げを拡大する出版社も増えています。
それは、目先の利益を考えるなら正しい手法なのかもしれません。
ただ、一方で朝読のような活動を通して、10代読者の獲得に力を入れるなどしていますが、若者に本を読ませて次世代の読者数を増やしたいと考えるなら、もっと若い編集者を積極的に育てる環境も必要なのではないでしょうか?
若い世代の企画書を見たときの印象について
そういう背景もあり、本をつくりたいけれど、自社で取り扱いが少ないジャンルの制作ノウハウがないという版元も増加。私は、そういうところに入っていき、企画開発から外部編集としてサポートする機会も増えてきています。
そういう流れで、編プロに所属していた頃から、社内外の若い編集者たちの企画を添削する機会が多かったのですが、そのなかで気になる傾向のようなものがあります。
それは「よくできました狙い」の企画書です。なんとなくですが、熟練編集者の真似事をしているような「小慣れた切り口」の企画書を見かけることが多かったのです。
「よくまとまっているけれど、面白くはない」という類のもの。編集経験者であれば、あるあるだと思うのですが、いかがでしょうか?
若い編集者&ライターの皆さんへ
そういう熟練者視点を模倣したような、ただ上長から及第点をもらうために立てたような企画。そこで勝負したところで、経験豊富な熟練編集者の思考を上回れるはずがありません。
そこで「この本、出したいですか?」と聞くと、「いや、売れそうだから……」と。
ちが〜う!!!!!
おじさんの私が欲しているのは、若者である「あなたにしかわからない」企画。おじさんの私には持ち得ない「視点」です。
そもそも、編集者自身がそれほどつくりたくもない本をつくって、他人が感動するとでも思っているのでしょうか?
そんなわけがない!!!!
企画書の完成度なんて、年をとれば自然に上がっていきます。荒削りで全然構わないので、若いうちの現在しか持ち得ない視点を武器に戦ってほしいのです。
年上のベテランなんて、「これ売れるの?」と高い確率で皆さんの企画を否定してきますが、恐れるなかれ。なにも知らないだけです。
若い編集者の皆さんが「本当につくりたい」と思っている企画で、しつこく戦ってみてください(面倒くさいなんて言わないでください)。
それほどの熱意があれば、上長は「じゃあ、やってみれば」と根負けして、制作ノウハウのない皆さんをサポートしてくれるはずです。
そういう本は、外れることも多いかもしれませんが、超ベストセラーになる可能性を秘めています。燻っている中年編集者(もちろん私を含む)なんてごぼう抜きの実績をつくれます。
そうして大きな話題になれば、普段は本を読まない若者たちだって本を買ってくれるかもしれません。
それは、若き編集者の皆さんが「この本を絶対、世に出したい!」と強く願った「熱量」があったから、同世代の心を動かすことができたのです。
少々取り乱しましたが、これから世に向けて発信していくであろう若い編集者やライターの皆さんへのエールでした(余計なお世話?)。
冒頭の展開から、かなりの急展開で読みづらかったかもしれないですが、中年編集者の荒削りな文章をどうかお許しください。
老いも若きも力をあわせ、出版界を一緒に盛り上げていきましょう(笑)。
文/編プロのケーハク
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