下町に生まれたシェア書店 西日暮里BOOK APARTMENT
こんにちは、塚Bです。
JR西日暮里(にしにっぽり)駅の改札を出ると、飲食店などと隣接したスペースに本棚があります。
これは、ひと棚ごとに違う「棚主」が本を出品しているブックアパート。
今回は、そんな「西日暮里BOOK APARTMENT」をご紹介したいと思います。
改札を抜けると、そこは本屋であった
「西日暮里BOOK APARTMENT」は2019年12月、東京都荒川区にオープンしました。
31㎝四方の棚が80スペースあり、それぞれに別の「棚主」が本を出品する、シェア本屋となっています。
手掛けたのは、建築家の田坂創一さん。
ジェイアール東日本都市開発が所有していたこの場所が空いており、「地域を含めて盛り上げたい」と、JR東日本東京感動線プロジェクトから田坂さんが所属する建築士事務所HAGI STUDIOに声をかけたことから、このプロジェクトは始まります。
田坂さんはまず、「駅前に何があったらうれしいか」を、地域の人たちを中心にヒアリング。
そこで多く上がったのが、「本屋」でした。
建築、設計にとどまらず……
最初はJRが、既存の書店チェーンにテナント募集をかけますが、「店舗面積が小さい」、となかなか決まらない。
そこで田坂さんは、シェア本屋としてすでに成功していた吉祥寺のブックマンションに声をかけます。
あわよくば、吉祥寺のブックマンションにテナントとして入ってもらおうと思っていたそうなのですが(笑)、結局、設計した田坂さん自らがその運営・管理まで行うこととなりました。
ブックアパートメントの住人たち
「棚主」は、最初は知人やネットなどで募集。
現在は70の棚主が「入居」中です。
どんな人が入居しているのかというと……個人出版社、図書館員や、大手出版社に勤める若手のグループ、出版取次勤務の人、ほかに翻訳家や著者、自費出版で本を出している人といった、本の関係者が3割ほど。
あとは、「本好きの一般人」だそうです。
出会いは広がって
こうして、本好き、出版関係者が集まってできたブックアパート。
やがて棚主たちの間に、さまざまな交流が生まれます。
ブクアパ女子会やオフ会イベントが行われたこともある。
さらには、本屋として独立した人、西日暮里に知り合いができ、引っ越してきた人まで。
こうした交流やイベントは、運営側である田坂さんが促したものではなく、棚主たちによる任意のもの。イベントや交流とは距離を置きながら、ただ静かに本を売ることもできる場となっています。
下町に連なる書店
ブックアパートメントは入居者にとってだけはなく、もちろん訪れるお客さんにとっても貴重な場です。
棚主は男女比が半数か、やや女性が多いくらいなのに対し、来店客は、圧倒的に女性が多い。
年齢層は幅広く、地元の人が中心ではありつつも、姫路、仙台といった遠方から、わざわざ訪れる方も。
多くの人に、本を通じた出会いの場を提供しながら、「谷根千(やねせん)※の不忍ブックストリートとともに、街に本屋が残り続けることに寄与したい」と、田坂さんは語ってくれました。
※谷根千とは、台東区の谷中(やなか)、文京区の根津(ねづ)、千駄木(せんだぎ)を合わせた略称。東京23区の中心地に近く、いわゆる「山の手」の一角でありながら、今なお東京の下町としての風情を残す地域として、愛されている(http://www.yanesen.net/info.html)。西日暮里は荒川区だが、この谷根千エリアと隣接している。
(文◎塚B)
本づくりの舞台裏、コチラでも発信しています!
Twitterシュッパン前夜
Youtubeシュッパン前夜ch
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?