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アカデミー国際長編映画賞 個人的ランキング②【66位~57位】

みなさんこんばんは。今回はアカデミー外国語映画賞受賞作を全部みたということで個人的ランキングをつけていきたいと思います。


66位 『エーゲ海の天使』(第64回/イタリア)

戦時中が舞台でありながら戦闘シーンはほとんどなく、ギリシャの孤島での暮らしと人々との交流を中心に描きます。
まあ気が抜けた作品、と言えなくもないのだが、なかなか楽しめました。尺も96分とちょうどよく、これ以上長かったらキツかったですね。
海の青さや夕暮れの赤が印象的な撮影、叙情的な音楽は素晴らしく、イタリア映画ながらギリシャという異国を叙情的に描き出しています。
イタリア兵8人もそれぞれキャラがたっていて面白いですし、展開も地味ながら独特のユーモアを交えているのがなかなか好感が持てます。
この年はこれといったライバルもなく(あえて言えばチャン・イーモウの『紅夢』か)、戦争ものに弱いアカデミー賞らしい選出とは言えるかもしれないですね。

65位 『ヒトラーの贋札』(第80回/ドイツ)

なんていうか、すごい気持ち悪い映画でした。シーンごとにトーンが違うんですよね。それ故に一本筋が通ってなくて、ふわふわしたまま話の概要だけなぞったみたいな印象を受けました。
音楽のつけ方も変だったですし、そもそも主人公のキャラが定まらないのが問題です。
ユダヤ人によってやらせるという姑息な手段を使ったナチスはクソですし、こういう事実があったということは分かったがそれだけです。
本作はベルリンのコンペ作品ではありますが、この監督作品をみてみても作家的な評価が高いタイプではないようです。
前哨戦でもナショナル・ボード・オブ・レビューを受賞しているのみで目立ってはいませんでした。アカデミー会員の好物であるホロコーストものであるという点で票が集まったのでしょうか。
嫌いとかってより捉えどころがなくてつまらなかったです。

64位 『ハンカチのご用意を』(第51回/フランス)

面白くないわけではない。奇妙な人間模様が繰り広げられるのはいいんだけど終盤なぁなぁになんとなく収束していってしまうのが勿体ない。
レビュー書こうとしてもあまり思い出せないくらい印象に残らない作品。結末としてはなかなか衝撃的なものがあるものの、演出含め全てが普通すぎて何も言えない。
ベルトラン・ブリエのやりたいことは分かるが、それが単に「倫理観への挑戦」というだけで終わっている感は否めない。それが作劇的工夫とかに及んでいかない。
いや、面白くはある。でもなんか物足りない。少なくとも外国語映画賞とるほどではない気がする。まぁこの年の他の候補も弱いので常連フランスにいったのは仕方ないのかな。

63位 『太陽に灼かれて』(第67回/ロシア)

驚くほど何も印象がない。本当に観たか疑いたくなるくらい何も覚えていない。
ロシア革命の英雄と、彼を秘かに狙う男のサスペンス。ではあるが、英雄であるコトフ大佐の日常を美しくコミカルに描いてる。
平和な日常の中で、不穏なサスペンスが展開していくという話であるはずだが、そのサスペンスが薄味。終盤急にバイオレンスな展開が続くため、着いていくのが大変だった。
それならもう少し日常生活の部分から緊張感を貫くべきだったのでは。
もちろん映画としては端正で、コトフ大佐の周囲の人々も個性豊かで面白い。破綻しているわけではないのだが、なんとなく薄味に感じてしまった。

62位 『ライフ・イズ・ビューティフル』(第71回/イタリア)

驚くほど何も感じなかった。そんなに感動するかねこれ。
ただつまらなかった訳ではなく、そうくるか、と興味は持って観ることはできたかな。
ミラマックスの力がなければここまで評価されることはなかったんじゃないだろうか。

61位 『ニュー・シネマ・パラダイス』(第62回/イタリア)

名作中の名作として名高い作品。エンリオ・モリコーネの音楽を世界に知らしめた一作でもある。
モリコーネの音楽が最高。軽快ながらノスタルジーを刺激される詩的な音楽。
叙情的な演出がとてもよく、人間の温かみを描きながらも戦争が落とす暗い影も垣間見える。
トトの可愛らしさ、エレナの美しさ、アルフレードの温かみが見事に調和し大きなうねりとなって感動が押し寄せてくる。名作と呼ばれるだけある。
ただ、大人になったサルヴァトーレが帰ってきてからの一時間はとにかく長い。言っちゃ悪いけどやってることはストーカーと不倫だし、叙情的な演出もここまで続くと甘ったるく冗長に感じる。
ただ、最後にカットされたキスシーンだけを繋げたものを映写するのはよかった。モリコーネの音樂も相まって再びノスタルジックな感動が押し寄せる。
映画館に詰まった夢と愛をこれでもかと描いた名作であることは間違いない。

60位 『未来を生きる君たちへ』(第83回/デンマーク)

スサンネ・ビアはやっぱり苦手。上手いのは分かるけどキレイにまとめすぎる。あとグラグラやたらと揺れるカメラワークも好みじゃない。
途中まではすごくいいだけに尻すぼみ。あんな大惨事起こしといてあれでいいの?と思う。なによりあの車の持ち主が怒鳴り込んでくるくらいの展開はあると思ったらそれもない。
「許し」がテーマなのは分かるがアフリカパートも浅い気がする。なんとなく「深い話」っぽくしちゃう感じが鼻につくんだよな〜

59位 『アナザーラウンド』(第93回/デンマーク)

初トマス・ヴィンターベア作品。マッツもグリンデルバルドの代役っていうくらいの印象ぐらいで思い入れも特にあるわけでもない。とりあえず今の評価としてはこのくらい。
もちろんトマス・ヴィンターベアの演出手腕や常に困り顔のマッツの抑えた演技は素晴らしいが、まだ若い自分としては特別響くわけではなかった。たぶんもっと歳を重ねれば味わい深い作品になるだろう。
ただやはりアイデアを出し出演予定だった監督の娘さんの死を乗り越えこの映画を完成させたトマス・ヴィンターベアの「それでも生きていかなければならない」という予想外に爽やかなクライマックスには度肝を抜かれた。
また研究職につくか、つけるか、それとも就職するか迷っている今の自分には切実に感じる部分もあった。自分の人生これでよかったのか?と後悔しないように生きたい。

58位 『La diagonale du fou』(第57回/スイス)

ミシェル・ピコリ、リヴ・ウルマンというスターが出演したチェス映画。ソビエトの老選手とハンガリーの若手選手がチェスのチャンピオンの名をかけてデッドヒートを演じるという内容。
そこにソビエト、ハンガリーの政治的背景、さらに選手個人の内情などを入れ込みコンパクトにまとめているという印象。
チェスという日本人にはあまり馴染みがないテーマな故に日本公開はされなかったのだろう。割とよく出来てはいるが、地味といえば地味。チェスのルールが分からなくても一定の面白さは担保されている。
演出や脚本も安定した語り口をみせており退屈しない。繰り返されるチェスのシーンもテンポ良くまとめている。
この年は大してライバル作品もなかったので外国語映画賞を受賞できたのであろう。ある意味ラッキーな受賞だったのだと思う。

57位 『モスクワは涙を信じない』(第53回/ソ連)

ロシアの代表作品、長いけど退屈せず見られた。重すぎず軽すぎずモスクワに生きる女性たちを描いた作品。
正直あまり覚えていない。つまらなくはないが外国語映画賞にしてはインパクトがないなと感じた。

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