ネットフリックスが12年間海外進出を「封印」していた理由
『不可能を可能にせよ!NETFLIX 成功の流儀』という本を読んでいます。ネトフリの共同創業者のマーク・ランドルフ氏の著作で、同社の創業ストーリーが赤裸々に語られています。
同書の中で「カナダ原則」が紹介されています。ヒトコトで言えば「特定の領域に経営資源を集中させる」というものです。スタートアップ企業のみならず、あらゆるビジネスに応用できる原則でしたので、簡単に紹介します。
12年間にわたって海外進出を封印?
ネットフリックスは最初の12年間、アメリカ国内だけにサービスを限定していた。創業当初は国際市場に対応するインフラも資金もなかったからだ。
いまや世界で1億9千万人以上のユーザーを抱えるネットフリックスですが、実は最初の12年間は海外進出を封印していました。アメリカ国内にサービスを絞っていたのです。リソースの限られる創業直後なら当然の判断と言えるかもしれません。
しかし、カナダ進出はしょっちゅう検討にのばった。カナダは近いし規制がゆるく、郵便料金と輸送コストも安かった。計算すると、売上の約10%増がすぐに見込めそうだとわかった。
海外進出を封印する中でも、カナダだけは違いました。地理的にも近く時差がない上に、配送コストも安かったのです。カナダに進出するだけで売上の10%アップがすぐに見込めることが分かりました。
カナダ進出の見送りと「カナダ原則」
カナダ進出は見送った。カナダ進出に必要な労力、人的資源、知的資源を事業の別の面に充てれば、いずれリターンは10%よりもはるかに高くなるはずだったからだ。カナダ進出は短期的な利益をもたらす短期的な施策になっただろう。それは私たちの集中力を薄めてしまっただろう。
しかし、ネトフリはカナダ進出を見送りました。それは、カナダに進出するよりもアメリカ国内にリソースを集中させることが、長い目で見た時にリターンが大きくなると考えたからです。
これは、後に「カナダ原則」と呼ばれるようになりネットフリックスの企業文化になりました。
集中こそ起業家の秘密兵器
集中こそ起業家の秘密兵器だ。ネットフリックスの歩みの中で、DVD販売の廃止、個別課金型レンタルの廃止、そしてやがてはネットフリックス創業チームメンバーの多数の離脱と、私たちは何度となく将来のために過去の一部をみずから捨てなければならなかった。このような徹底した集中は時として冷酷にも見える。確かに、多少はそのとおりだ。だがたんなる冷酷さとして片づけられるものではない。それは勇気に似た何かである。
ネトフリの共同創業者のマーク・ランドルフ氏は「カナダ原則」、つまり集中することの重要性を繰り返し説いています。経営資源を一ヶ所に集中させることこそが、長期的な成功につながると考えているからです。
いまや世界190ヶ国以上にサービスを展開するネトフリですが、実は2010年にカナダに進出するまでは完全なドメスティックビジネスだったわけです。
かつてGEを率いた名経営者ジャック・ウェルチは「選択と集中」を経営方針に掲げていたと言われます。ネトフリのカナダ原則は、選択と集中の典型的なケースの一つと言えるのではないでしょうか。
今回は以上です。
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