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聞こえる無音

聞こえる無音

喫茶店でコーヒーを飲んでいたとき、ふと店内で流れていた音楽の存在に気づき、ずっと聞いていたはずの音楽が更に聴こえ始めるという不思議な聴覚体験をした。

意識して聴いていない音は聴こえていないようなものなのだが、無音というわけでもない。

私はこの聞こえているが同時に聴こえてもいない状態の音を、「聞こえる無音」と名付けることにした。


「聞こえる無音」は、今この文章を読んでいるあなたの側でも流れている。

気づいていただろうか。この文章を読んでいる間、ずっと聞こえていたはずの自分の息遣いや、周囲で鳴っていた様々な環境音の存在に。

おそらく上記のことに触れられるまで、それらの音はあなたの意識には上っていなかったはずだ。

このように、意識して脳で「聴く」音と、意識せずに耳だけで「聞く」音とでは、同じ音でも受け取り方が全く異なる。


さて、実はこの「聞こえる無音」のような現象は、聴覚だけでなく私たちの身体全体で起きている。

皮膚は常に着ている服や触っているものの質感を知覚しており、舌も常に歯や歯茎といった口の中の内側の味を知覚している。しかし、それらの感覚を四六時中意識することはない。

実はこの世界は私たちが思っている以上に多種多様な感覚に満ち溢れているのだが、それら全てをいちいち意識していたら脳が暴走してフリーズしてしまうだろう。

だから私たちは、穏やかな生活を送るために、不必要な感覚情報を無効化する能力を手に入れたのかもしれない。

しかし、今この瞬間も「知覚しているが意識には上っていない様々な感覚」があるのかもしれないと思うと、なんだかとてもワクワクしてはこないだろうか。


ミヤタ-------
プランナーをしながら、日々新しい気づきや固定観念が壊れる瞬間の事例を収集しています。

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