見出し画像

「OLD ROOKIEs」第8話 -受託制作の限界-

「最近の森くん、常に忙しそうだね」

仕事の合間を縫って会う友人たちからは、いつも労いの言葉がかけられる。

実際、大手の取引先であるシスコシステムズをはじめとし、企業からの受注はうなぎ登り。株式会社フューチャーワークスは、赤坂のオフィスを借り増しするほどにも成長していた。

大きな仕事も抱えるようになっていた森は、製品や企業の魅力がより伝わるよう、効果的なセールスプロモーションを考え続けた。

「素晴らしい製品ですが、このままでは誰にも伝わりません。ストーリーのある動画にしてみるのはいかがでしょうか?」

単なる販促ツールの制作だけでは面白くない。

森は相手の要望に合わせ、製品の世界観や企業理念をより効果的に伝えるための動画制作を請け負うなど、積極的に提案を行っていた。

「今回の動画も良かったよ。森さんの提案に乗っかって正解だった」

「ありがとうございます。喜んでいただけて、私も嬉しいです」

シスコシステムズのような世界を土俵にする企業との仕事は、やりがいだけでなく森に経験と知識も与えてくれる。

金沢大学の工学部 機械工学専攻を卒業した森は、早くからコンピュータに出会い、リクルート時代にはインターネットビジネスにも携わってきた。だが、技術的な知見に関しては自分自身、まだまだ満足していなかった。

そのため、シスコシステムズとの仕事を通じて技術的な裏づけを学べることは、森にとって大きな対価だった。

「車、家電、ガス、水道…今後、あらゆるものがネットを介して人につながっていく。世界は劇的に変わっていくぞ」

シスコシステムズが掲げるインターネットの未来を頭の中で描きながら、森はワクワクが止まらなかった。

しかし、同時に大きな壁にもぶつかっていた。

仕事に充実感は感じるものの、下請け型・受注型のビジネスの限界を感じていたのだ。

どんなに良い仕事をしても、制作物や開発物の著作権はすべてクライアント側に帰属する。自社にはストックされないのだ。

このまま受注を増やし続けても、今後ビジネスとして爆発的にスケールするのは難しい…。

「だったら、自社オリジナルなものをやりたい」

森は、より効果的な結果を提示できる自社独自の販売促進支援サービスを創り出したいと思った。

だが、そのためには人も技術力も足りない。

さて、どうしようか。

思いだけは大きく膨らみながらも、森はまた目の前の仕事に取り掛かるのだった。

つづく。

第9話 -ひとり旅のはじまり- https://note.mu/showcase/n/nc9a4700f699f

株式会社ショーケースの「これまで」と「これから」を描くノンフィクション小説『OLD ROOKIEs』は、毎週1話ずつ公開中!

第1話 -卒業- https://note.mu/showcase/n/nd305564958cc
第2話 -挑戦- https://note.mu/showcase/n/n2b1a8afc07fc
第3話 -犬のウン- https://note.mu/showcase/n/nfb96f0b7d7ee/edit
第4話 -予感- https://note.mu/showcase/n/nb2813ef9f60d
第5話 -スタートライン- https://note.mu/showcase/n/nebefa72c6269
第6話 -スタイル- https://note.mu/showcase/n/n4b6d5391be52
第7話 -ヒットの方程式- https://note.mu/showcase/n/ndae846cd3747


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?