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短編集

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短編集です。
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161日目。【短編】姿見。

161日目。【短編】姿見。

私、家に鏡が一枚もないのよ。たったの一枚も。鏡を見るのは外でだけ。

へえ…どうやって自分の格好を確認してるの?

嫌な言い方だけど、私って不細工じゃないから、最低限、自分が不潔だなって思うことを避ければどうにかなるのよ。あんまり興味がないの。何とかなっちゃうのよ。

羨ましいね。僕は不安になって見ちゃうな。鏡。

鏡を見たって自分の顔は変わらないわ。

でも、服装とか気にならない?変じゃないかな

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159日目。【短編】脆い骨について。

159日目。【短編】脆い骨について。

私、骨が弱いのよ。

…どういうこと?

すぐに折れたりヒビが入ったりするの。子供の頃は跳び箱を跳ぶのに失敗してヒビが入ったこともあるわ。貧相よね。大人になってからは無理しないようにしているけど。

そりゃあ、折れるのは心配だもんね。無理しちゃいけない。

それでも思うのよ。ああ、私は身体の芯の部分が人より弱いんだって。身体の中が弱くて脆いんだって。一本、入っているものがすぐに折れてしまうんだって

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158日目。【短編】君の好きなとこ。

158日目。【短編】君の好きなとこ。

あなたって、舌が長いのね。今気づいた。

そう?普通だと思うけど。そんなに長いかな。初めて言われたよ。ありがとう。

そうね。私でないと見ないところだものね。私はそんなところには自信があるの。人が見ないところを見るとこ。

本当に。自分でも気付かなかったよ。というか意識すらしていなかった。僕の舌は長いのか。

そうそう。あなたの舌って長いの。あとはまつ毛が長いとか、色が白いとか、色々あるけど。どう

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157日目。【短編】髪。

157日目。【短編】髪。

髪を切ろうと思うの。

どうして。似合ってると思うけど。

だって飽きたんだもの。それに長いと手入れが大変で。すぐにきしんでくるの。知らないでしょう。

そうなの?知らなかったなァ。ううん、それなら切るか。

だって知られないようにしていたものね。知っていたら恥ずかしいわ。あら。切るのに賛成になったの?どうして?

いやだって君が切りたいというなら。

私の意見に逃げないで。あなたの意見は?それが

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156日目。【短編】たおやかな。

156日目。【短編】たおやかな。

私、右手の薬指が誰よりも美しいの。この世界の誰よりも。この指だけは一等自信を持っているの。誰にも負けないって。

へえ。それなら見せてくださいや。どんなもんか。

良いですよ。ほら。見て。私の右手の薬指。この曲線と長さがとても美しいでしょう。ああ綺麗。見惚れてしまう。

そこまで違いが判りませんね。左手の薬指だって同じようなもんじゃないですか。どっちも綺麗だとは思いますがね。

失礼な。何を言うん

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155日目。【短編】視線と目。

155日目。【短編】視線と目。

なんですか?私の方をずっと見て。

いいえ、あなたを見ているのではありませんよ。そもそもあなたは誰です?知らない人をじっと見続けるような質の悪い性格ではありません。

あら。嘘ね。私のことをずっと見てらしたじゃない。だから私は気になってあなたの方に視線を向けたの。私からあなたを見ることはないわ。

知りません知りません。よしてください。本当に見ていないんです。もしかしたらあなたの周辺をぼんやり見て

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154日目。【短編】肌。

154日目。【短編】肌。

ねえ先生。私、肌が白過ぎるんです。気持ち悪いでしょう。夏場、水に入ったら白過ぎて幽霊かと思っちゃうんです。聞いてます?

いや、聞いていますよ。そうですね。でも私も白いのでなかなか言い出せなくて。良いじゃないですか。色の白いは七難隠す、と言いますからね。僕は困ったことはありませんよ。強いて言えば…夏に日焼けするととても痛いことでしょうか。

あら先生も困ってらっしゃるんじゃないですか。おっしゃって

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