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154日目。【短編】肌。

ねえ先生。私、肌が白過ぎるんです。気持ち悪いでしょう。夏場、水に入ったら白過ぎて幽霊かと思っちゃうんです。聞いてます?

いや、聞いていますよ。そうですね。でも私も白いのでなかなか言い出せなくて。良いじゃないですか。色の白いは七難隠す、と言いますからね。僕は困ったことはありませんよ。強いて言えば…夏に日焼けするととても痛いことでしょうか。

あら先生も困ってらっしゃるんじゃないですか。おっしゃっていただければ良いのに。私もそうです。お肌は黒くなりにくいんですけど、赤くなってしまいます。痛くて痛くて。

でもやっぱり私は女性の肌が白いことに対してあまりデメリットを感じませんが…。

先生、それはわかっていらっしゃらないんです。肌があまりに白過ぎると生気が感じられないんです。私も、何度も「色が白いことは得じゃないか」「何を言っているんだ」時には「贅沢な」とも言われました。でも違うんです。私は生気が欲しい。

そうですか。ならこうしましょう。お化粧などすればどうですか?お肌に赤みを乗せれば。

先生、お化粧をすればどうですか、なんて言わないでください。私はこのお肌が好きなんです。でも少し気持ちが悪い。透けるようで。青い血管が見えているのがとても。

そうは言ってもお肌の色は体質ですからね。なかなか変わりはしません。むしろ急に焼け始めるということは、肌が弱ったことを意味します。

わかってはいるんです。それでも、私は生気がないのが気持ち悪くって。もっと健康的でみずみずしい肌に生まれたかったんです。夏になれば立派に日焼けをして、冬には白くなる、そんな四季のままのお肌が良かった。どうにかなりませんか。先生。

ふふふ。どうにもなりませんよ。あなたは実はご自身のことが大好きだ。否定されたくて仕方ないのも、ご自身の肌の白さを自慢したいんでしょう。否定するとそれとなく自慢できますからね。違いますか。

何ですか、失礼な。違います。もういいです。わかってくださらないのなら、もういい。


女はそう言って上気して部屋を出た。

それでも、肌の色は白かった。

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