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小学生に教えてもらった「伝え方」のヒント

大学時代の専攻は教育で、卒論のテーマは「幼稚園の研究」でした。今でも教えることにとても興味があります。

ところで、文部科学省が雇用対策の一環として、企業向けに学校の求人を紹介する専用サイトを開設したそうです。

他にも、民間企業でも、小中高の学校教育に特化した人材仲介サービス「複業先生」というものがあるとか。

今後、学校の授業で普通のビジネスパーソンが「会社員先生」として教壇に立つということが増えてくるのかもしれません。

そういえば、私も数年前に、小学校で「会社員先生」をやったことがあるなーと思い出しました。

その時の話は、ここに書いたり・・

この本でも詳しく紹介させてもらいました。

簡単に言うと、小学4年生に俳句についての広告を作ってもらったのですが、プロのコピーライターも「直すところはございません」状態の、特待生級の素晴らしい作品が完成。

子どもの感性の鋭さに、こちらがびっくりした!という体験でした。

授業の内容については上記で既に紹介したので、今日は、私がその時に小学校で学んで、その後仕事で取り入れていることについて書いてみたいと思います。

実は、学校の先生こそ、コミュニケーションのプロ。飽きっぽい子ども達の興味をひくために、様々なスキルを持っています。今日は、特に印象に残っている3つをご紹介します。

ポイント1:「間違い探し」で興味を引く!

先ほどの記事でも書いたのですが、私がお邪魔した4年2組は国語の先生が担任で、「俳句」を授業で扱っていました。

その教え方がとっても面白いのです。

例えば、子ども達にこんな2つの俳句を並べてみせます。

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そして、先生が子ども達に尋ねます。

「どちらの俳句が良いと思う?」

当然、子ども達は「岡田芭蕉って怪しい!」「松尾芭蕉の方がいいよ!」と大盛り上がり。

そこで、さらに先生は問いかけるのです。

「なんで、岡田芭蕉より松尾芭蕉の俳句の方がいいと思ったの?」

すると、子ども達は、夢中になって考え始めます。

誰かが、「静かだって言わなくても、静かだってわかる方が良い」と言い出すなど、俳句が持つ風景描写の魅力に自ら気づいていくのです。

このように、「間違い探し」のような対比構造を作り子ども達の興味を引いていく方法をみて、「これは仕事でも使える!」と思いました。

例えば、上司や同僚にアイデアを提案する時も、自分のアイデアを1つだけ出すのではなく、あえてお勧めではない案も含めて2つ比較して提示します。

そして「AとBを考えたんですけど、今回はAがいいと思うんですよね」と伝えると、相手もA案に賛同してくれる可能性が高まります。

なぜなら、対比構造の方がA案の良いところが理解しやすくなるからです。

このような形で、学校での学びは、仕事でもすごく活かせるのです。

ポイント2:タイムキープは「立たせる」!

再び、場面は4年2組の教室に戻ります。

先生が子ども達に対して、隣の人と話してみましょう、と指示する時があります。そのやり方もまた、私にとっては新鮮でした。

まず、全員を立たせます。

そして、決められた時間がすぎたら(1人1分程度)話して、終わったペアから座っていくのです。

そうすると、先生が「もう時間です!」などと大きな声をださなくても、周りの子ども達がすわっていく様子をみて、勝手にタイムキープされているのです。

つまり、「座る」という行為を通じて、物理的にタイムキープをしているわけです。

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ビジネスでも、例えば、ワークショップの自己紹介など、決められた時間を超えて話してしまう人、いますよね。

そこで私は、さすがに社会人を立たせるわけにはいかないので、「グループでの自己紹介が終わったら『拍手』してください」と指示するようにしました。

すると、他のグループから「拍手」が聞こえてきたら、勝手に「早めにおわらなくては」と、自分たちで時間調整をしてくれるようになりました。

熱が入ってついつい時間を忘れてしまうのはしかたありません。そんな時は「座る」「拍手」のように、視覚や聴覚を使ったタイムキープが有効です。

ポイント3:ヒントは「50個」だそう!

小学生の頃、毎日の日記を書く宿題があった人もいるのではないでしょうか。

私の娘も「書くことが無いよ・・」と苦労しながら毎日書いています。

さて、4年2組の教室の後ろの壁には、こんな貼り紙がありました(記憶がやや曖昧ですが…)。

「作文の書き方 50パターン」

1.会話から始める 
   例:「しまった!」私は思わず叫んだ…
2.物語風に書く  
   例:「むかしむかしあるところに…」
3.夢の世界を書く 
   例:「私は空を飛んでいた…」
4.ごはんを書く  
   例:「今日の朝ごはんは」
5.手紙風に書く  
   例:「前略 お母さんは…」
・・・

紙にはこんな調子で、作文の書き方が具体的に50個も並んでいました。

作文に悩む子どもたちが、藁(わら)をもすがる思いでこの紙を参考にする様子が目に浮かびます。

ここから私が学んだのは、困っている人には具体的なヒントをたくさんあげるということです。

例えば、企画書の書き方に悩んでいる後輩には、まずは自分が過去作成した似たようなテーマの企画書を5本ぐらい、どさっと渡すようにしています。

50個はさすがに無理ですが、複数のヒントがある方が、役立つヒントを見つけられる可能性が高まります。

実践できずに悩んでいる人には、概念で伝えるよりも、大量のヒントを渡した方がいいということを、私はその貼り紙から学びました。

このように、学校の先生が日々工夫している方法には、私たちビジネスパーソンが学ぶ点があるということを、わずか数日間の会社員先生の経験を通じてたくさん気づきました。

会社員先生が学校で教えるときに注意すべきこととは?

たしかに、会社員先生には、学校の先生には無い経験や知識があります。

しかし、子ども達に「伝える」という点においては、会社員先生は、最初は素人だと考えた方が良いと思います。

相手は、ちゃんと話を聞いてくれる部下や、お金を払って講演会に参加している社会人ではなく、飽きたらすぐに気が離れてしまう子ども達。

せっかくの良い話も、伝え方がイマイチだったら台無しです。

ですので、伝えたい内容には自信をもって良いですが、伝え方については現場の先生にたくさん教わって、万全の準備をする必要があります。

先生とのやり取りの中で、きっと仕事でも活かせる「人を動かすコツ」がたくさん見つかると思います。

会社員先生の取り組みが、学校現場にとっても、ビジネスパーソンにとっても良い経験になるといいな、と思います。

※Twitterでも、気になる記事の感想をつぶやいています


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