すぎや・まさるの湘南ブランチ

エーディープラント株式会社 代表の杉山信一です。 日常生活で出会ったこと、思うことを綴…

すぎや・まさるの湘南ブランチ

エーディープラント株式会社 代表の杉山信一です。 日常生活で出会ったこと、思うことを綴っていきます。 フリーマガジン「メディア・スパイス!」に連載された「すぎや・まさるの湘南ブランチ」から抜粋した過去の作品も含まれています。

最近の記事

#17 AIは、アイって読むんだっけ?

このところ本屋さんの店頭を眺めていると、AIについて解説した本や、その発達によって近未来がどのように変わっていくのかを予測した本が増えている。僕も何冊か目を通してみたが、その多くがこれから先、僕たちの住むリアルな世界にAIが「第4次産業革命」と呼ばれる大変革をもたらす、と明言している。 AIが、これまでの機械と違う最大の特徴は、人に命令されることなく情報空間にある膨大な文字や画像や音声データの中から最適なパターンを認識し、さらに深い階層へ……を繰り返しながらより深く学習し

    • #16 次は、インドが来る

      先日、日本で技術系の外国人の派遣会社を立ち上げて成功した、あるインド人の経営者と話しをする機会があった。彫りの深い端正な顔立ちに、笑みを浮かべた話しぶりは穏やかだが、その内容はとてもシリアスで、考えさせられるものがあった。彼によると、現在、日本では慢性的にエンジニアが不足していて、特にITの分野でインド人技術者の需要が高まっているのだそうだ。 「杉山さん、日本人はもともと器用な民族で、精密機械などは得意だったはずなのに、どうしてスマホの端末では、世界的に成功した企業がない

      • #15 危うさのなかで思うこと

        2022年3月24日。ロシアがウクライナに侵攻して、ちょうど1ヵ月が過ぎた。世界は戦争の終結を求め、国際秩序をとり戻す方向で必死に調整しようとしている。 この国にいると、一方的にロシアが悪者で、プーチン大統領は独裁者であり戦争犯罪人であるといった論調のメディアが多い。ネットの情報や、SNSの投稿を見ていると、さまざまな人たちが、それぞれの主観で、いろいろなことを言っている。飛び交う情報のなかで、ロシアとウクライナの歴史や内情をよくわかっていない僕が評論家めいたことを言ってみ

        • #14 2021年、宇宙の旅へ

          何年か前に、北海道の高校に通う学生がYouTubeにアップした「スペースバルーン」の動画が話題になった。スペースバルーンとは、無人の風船に小型カメラをつけて空に放ち、高度3万〜4万メートルの成層圏から地球や宇宙を撮影する、「小さな宇宙開発」ともいえるチャレンジだ。自分の足元を映していたカメラが地表を離れ、ゆっくりと舞い上がっていくと、平野や山々が見え始め、やがて北海道の海岸線が見えてくる。さらに高度が上がっていくと、ついには大きく弧を描いた地球の輪郭が映し出される。気圧の差に

        #17 AIは、アイって読むんだっけ?

          #13 夢と欲望のあいだで

          以前、このエッセイで「時代のスピードがどんどん速くなっていき、これから先に僕たちはどこへ行こうとしているのか……」といったことを書いたところ、何人かの方々から感想をいただいた。その多くは「加速していく未来に対して危機感を抱いている」というものだった。 しかしながら、これからも人類は、ITやバイオやエネルギーをはじめあらゆる産業分野で先へ先へと突き進んでいくだろうし、こうしてパソコンの前でキーボードを打っている僕自身、いまさら鉛筆を削り原稿用紙に向かうスタイルに戻ろうとは思わ

          #13 夢と欲望のあいだで

          #12 熊が気づかせてくれたこと

          「熊を食べに行かない?」 仕事関係の、ある人に誘われて、人生で2度目の熊を食べることになった。1度目は、フィンランドに取材で出かけた際、現地のジビエ料理店で食べたのだが、この時はかなり臭いが強くて閉口した。それ以来、熊肉は敬遠していたのだが、ある人が言うには「その店の熊を食べたら他の熊は食べられない」とか……。僕は、半信半疑ながらお誘いにのって「食べる目的のため」だけに京都行き新幹線のチケットを買った。 待ち合わせ場所は、祇園の八坂神社前。そこからタクシーで北に向かう。大原

          #12 熊が気づかせてくれたこと

          #11 富士山麓でパワーをもらう

          ある休日のこと。僕は午前4時にセットした目覚ましに起こされ、眠気をふり払うようにシャワーを浴びた。窓を開けると真新しい夏の匂いのする風が部屋に入ってきて僕に話しかけた。「きょうはきっと、いい日になりそうだね」。 ゆっくりと支度をして外に出ると、クルマに乗りこみエンジンに火を入れた。きのう聴いていたブライアン・イーノが、夜と朝をつなぐようなあいまいな音を奏ではじめた。僕は、秦野中井インターから東名高速に乗って西へ向かった。目的地は山中湖だった。日の出にはまだかなり時間があった

          #11 富士山麓でパワーをもらう

          #10 毎日おいしく、ありがたく

          レストランやカフェで食事をするとき、「いただきます」と言いながら両手を合わせる人が増えているような気がする。テレビの料理番組やドラマの影響だろうか。最初のうちは違和感を覚えたが、いまではあまり気にならなくなった。というより、同じテーブルの人がやっていると、僕自身も無意識に手を合わせていることが多くなった。 あるお寺で精進料理をいただいたとき、お膳にこんな言葉が添えられていたのを思い出した。 五観の偈(ごかんのげ)●一つには功の多少を計り、彼(か)の来処(らいしょ)を量る(

          #10 毎日おいしく、ありがたく

          #9 世紀のテレビショーを見ながら

          この原稿を書きはじめた2018年6月12日、シンガポールでは歴史的な会談が行われ、世界はかたずを呑んでその行方を見つめていた。トランプ大統領と金委員長という、かつて描かれたどんな映画やテレビドラマの登場人物をも凌ぐ二人の役者が、核戦争のカードをポケットにしまい、初めて対面したのだ。 僕は、しばらくのあいだ手を止めて、テレビの中継に釘付けになっていた。二人は笑顔で握手を交わし、世界中から集まったプレスの前で「朝鮮半島の完全非核化」を約束する文書に署名した。大よそのシナリオは事

          #9 世紀のテレビショーを見ながら

          #8 キミの目には、どんな世界が映ってるの?

          ある週末。大学時代からの友だちで、現在は台湾で会社を営んでいるSくんが出張で日本に来ることになったので、久しぶりに地元の居酒屋で会った。 彼とは高校も大学も違ったのだけれど、たまたま地元、平塚の学生たちの集まりで知り合い、一緒に飲んだり遊んだりした仲である。卒業した彼は、ある商社に就職して数年ほど国内で仕事をした後、イラクのバグダッド支社に転勤になった。旅立つ前の壮行会で、「生きていたら、また会おう」などと笑えない冗談で見送った日のことを30年以上経ったいまも覚えている。

          #8 キミの目には、どんな世界が映ってるの?

          #7 シャンパンか、ビールか

          ずいぶん前になるけれど、ブラジルのある飲料メーカーから広告の仕事を依頼され、打ち合わせでリオに行ったことがある。現地は、ちょうどカーニバルの真っ最中。開催される2月は、地球の裏側では真夏に当たる。会議が終わってホテルに帰る支度をしていると、クライアントが「今夜、カーニバルを観にきませんか?」と誘ってくれた。その会社は、8万人以上入るメイン会場の観覧席に、招待客専用のVIPルームを確保していた。 夜8時。担当者に招かれてVIPルームの中に入っていくと、エアコンの効いた室内は、

          #7 シャンパンか、ビールか

          #6 短編冒険小説 『そうだ、富士山へいこう』 part2

          ご注意 ※この作品はノンフィクションではありますが、ウケを狙って少し誇張した表現があります。また、新型コロナウイルスによる感染症拡大が起こる前に書かれたものですので、衛生管理に関わる記述に関しても現状とは大きく異なります。 ※弾丸登山はたいへん危険ですので、絶対に行わないようにしてください。 「助かったぁ…」 僕は心の中で安堵の叫びを発し、山小屋の主人に感謝しながら ストーブの前で暖をとっていました。 アルバイトと思われる男性が宿泊者名簿をもってきて、 「お食事は付けますか

          #6 短編冒険小説 『そうだ、富士山へいこう』 part2

          #5 短編冒険小説 『そうだ、富士山へいこう』 part1

          ご注意 ※この作品はノンフィクションではありますが、ウケを狙って少し誇張した表現があります。また、新型コロナウイルスによる感染症拡大が起こる前に書かれたものですので、衛生管理に関わる記述に関しても現状とは大きく異なります。 ※弾丸登山はたいへん危険ですので、絶対に行わないようにしてください。 8月も終わりに近づいたある週末に、富士山にいってきました。 元はといえば、夏の初めに地元平塚にあるレストランの若い人たちが 「今年は富士山に登るんですよ」 と楽しそうに喋っていたのがき

          #5 短編冒険小説 『そうだ、富士山へいこう』 part1

          #4 アナログ写真が好きなのに

          学生時代、僕は写真クラブに入っていた。学園祭のシーズンが近づくと、展覧会の準 備のために仲間たちと暗室にこもり、フィルムを現像し、毎日遅くまで作品づくりに没頭していた。現像液に浸けられた印画紙の表面にうっすらと画像が浮かび、しだいに濃度を増していく。シャッターを切った瞬間には見えていなかった「微かなもの」が、目を凝らしているうちに見えてくる。そうして僕は、どこまでも奥深い写真の世界に引き込まれていった。 社会人になって、僕は広告の道に進んだ。プロのカメラマンたちと一緒に仕事

          #4 アナログ写真が好きなのに

          #3 「イモ」でいいじゃないですか

          毎年、この季節になると、地元で農家をやっている友人から掘ったばかりのサツマイモを譲ってもらう。サツマイモというと、関東では千葉や埼玉などが有名だが、ここ神奈川でもおいしい芋が作られている。 兼業農家である僕の友人の家では、地元の特産品になっている「クリマサリ」や、甘みの強い「紅あずま」という品種を育てている。以前、友人から分けてもらった芋を長野の親戚に送ったところ、「今まで食べたどのお芋よりおいしかった!」という礼状と一緒に真っ赤なリンゴが届けられた。それ以来、平塚産のサツ

          #3 「イモ」でいいじゃないですか

          #2 猿に聞いたほうがいいかもです

          映画史に残るSFの傑作、猿の惑星。久しぶりにオリジナルのシリーズを見直してみたいと思い、最近契約したPrime Videoを利用しソファに寝ころびながら鑑賞をはじめた。 オリジナルの映像作品としては、1968年に公開された第1作の「猿の惑星/Planet of the apes」があまりに有名だ。そのヒットから製作者たちが気をよくしたのか続編が次々と作られ、1973年公開の「最後の猿の惑星」まで、わずか5年のうちに5つの作品が誕生した。 CG全盛の現代の映画を見慣れた目に

          #2 猿に聞いたほうがいいかもです