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#3 「イモ」でいいじゃないですか

毎年、この季節になると、地元で農家をやっている友人から掘ったばかりのサツマイモを譲ってもらう。サツマイモというと、関東では千葉や埼玉などが有名だが、ここ神奈川でもおいしい芋が作られている。

兼業農家である僕の友人の家では、地元の特産品になっている「クリマサリ」や、甘みの強い「紅あずま」という品種を育てている。以前、友人から分けてもらった芋を長野の親戚に送ったところ、「今まで食べたどのお芋よりおいしかった!」という礼状と一緒に真っ赤なリンゴが届けられた。それ以来、平塚産のサツマイモと諏訪産のリンゴの物々交換は、秋の恒例行事になっている。

そういえば、僕が卒業した中学校は「イモ中」なんていうニックネームで呼ばれていた。「サツマイモの葉っぱ」が校章のモチーフに使われていたからだが、おそらく、今のように宅地化が進む前、学校のまわりには芋畑がいっぱいあったのだろう。何となく「田舎者」と言われているような響きがあって、しかもそれは当たっていただけに、あまり好きにはなれなかった。

サツマイモは、痩せた土地でもよく育ち収穫量も多いという。比較的安く、簡単に手に入る食材なので、僕たちはついサツマイモの価値を軽く見がちだ。でも、江戸時代には「干ばつによる飢饉」から多くの人びとの命を救ってきたし、戦争直後には食料不足で苦しむ日本人のカラダと心を支えてきた。栄養豊富な、ありがたい食べものである。ダサくてカッコ悪いことを「イモ」なんて言ってはいけない。

そんなサツマイモだが、素材本来のおいしさを味わうために、お奨めしたい食べ方は、やっぱり焼き芋。家で焼くときはオーブンを使う。温度は低目に設定し、じっくりと火を入れると甘くなる(160℃で90分くらいか)。焼き上がったら両手で割って、熱々のホクホクを、フーフーしながら食べる。

この焼き芋を使って「ポタージュ」を作ってもおいしい。玉ネギを半分くらいスライスし厚底の鍋で炒めたら、カップ2杯のお湯とブイヨンを加えて煮込む。少し冷ましたら、皮を半分残した焼き芋1、2本とともにミキサーにかける。クリーミィな状態になったところで鍋に戻す。牛乳2カップと好みで生クリームを加えて火にかけ、塩で味を整えればできあがる。口に含むと香ばしさが広がって、まさに「焼き芋を飲んでいる」楽しさだ。

ほんわかと甘いだけじゃない。中身があって、いざというとき頼りになる。サツマイモって、なかなかステキだ。

ソウイウモノニ ワタシハナリタイ。


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